仮想編第2話Act1-5
Act1-5
~この手のお約束~
「スーパーヒーローさん、初めましてかな。私はメイガンよ」
「私はフルフルだ」
助けた彼女からようやく名前を聞くことができた。
「廃墟から戻ってきたの!!」
「いろいろ代償は払ったけどね」
「先超されっちまったな」
「?」
「攻略系BBSを見てみな。今、攻略系ユニオンが必死になって廃墟へのルートを探してるんだ」
「このスラムは強敵揃いな割には実入りが少ないから、稼ぐのには不人気なエリアだ。だから穴場だと思ったんだけどね」
「まあ、”人助け”なんて聞こえがいいことを宣伝しているが、やってること醜いは一番槍争いだな」
「ちょっと!皮肉が過ぎるよ!」
「みんなが思っていることの代弁だぜ・・・例え本当に一番槍争いだったとしても見捨てるわけにはいかねえがな」
「取り繕いー?」
「悪いっていう奴はいなねえだろ?」
・・・身の上話だった。だからいい。2ヶ月一人だった。エリー姉やアスラムは呼べば答えてくれたが、私の目の前に現れたりはしなかった。脱出直前にノッキムと話すまで、島で人の顔を見て話すことは無かった。寂しかったんだ。傍に誰もいないなんて不安で仕方がなかった。・・・現実ではほとんど煩わしいと思っていたけど。今は全く逆だ。一人じゃないっていいな。
「!」
通路が瓦礫で埋まっていた。
「行き止まり?」
「いや、通路のはずだ」
「イベント?」
「楽しい楽しいショーの始まりだ!」
メイガンのつぶやきに上から答えが返ってきた!
「!散れ!」
上から連続発砲音!地面から土煙がマイクロサイズの間欠泉の如く無数に吹き出した!
「さあ問題だ。32000対120とかけて機関砲対剣ととく・・・その心は?」
機関砲が20門以上はある。そして射手はそれ以上・・・私たちを囲んでいた。40人はいるのだろうか?全員が同じ格好をしていた。髪は真黒のオールバック、目元にはサングラス。服は喪服らしき黒いスーツと真黒なネクタイ。そしてアクションには向きそうもない黒い革靴を身に着けていた。口元だけでしか判断できないが、大半が下品な笑い顔をしていた。
「ムサイナンパはお断りよ!土の中に埋められないうちに帰りな!」
「受け答えがなってねえな!」
「!」
ノッキムが撃たれた!10mほど吹き飛ばされてテンプルウールみたいに転がっていった!
「言い忘れたが、不正解には相応の罰ゲームを用意してるぜ?答えには気をつけな」
屋根の上にいる黒服の一人が叫んだ。どこまでも人を見下し、バカにしたような話し方だ。私の大嫌いな人物・・・いや、人とは呼びたくないケダモノそっくりだ。
「・・・さて、そこの女!答えな!」
「・・・」
答える必要なんてない。無視を決めこむ。この連中のようなケダモノヒトモドキに交わす言葉は存在しない。
「タイム・イズ・オーバー」
「・・・なんで俺が・・・?」
返事代わりの発砲が来た!だが、私には命中しない・・・代わりに赤黒ツートンカラーのフルフェイス男・・・ヘンリーに命中した!フルフェイスが頭部と一緒に砕けた・・・首から上を破壊されたヘンリーだった肉体はポリゴン片を吹き出しながら消滅した。残されたのはメイガンの絶叫と発狂寸前の顔だけだった・・・なぜ私を狙わない?
「罰ゲームってのは本人が受けるとは限らねえぜ?」
危険で凶暴過ぎる相手だ。人間を殺すのに何のためらいもない連中・・・理性のタガがここまで外れるものなのか。
「これが答えだ」
パンクスーツを着たビジュアル系っぽいアーチーが発狂寸前の悲鳴をあげた。地面には小山の如くガラクタが積まれていた。メイガンの目の前にも、アーチーと同じ格好のビジュアル系その2、チップの前にも・・・。
「離れAah!」
再び発砲!胸にに0.1秒おきくらいに数十回の衝撃を受けた。
「やめて!」
メイガンたちの顔はとてもではないが、平常時に見ていいような表情ではなかった
「・・・お前らに張り付いてるもんは皮膚じゃねえだろ?」
・・・こいつ!この場で服を脱げって言ってきている?もはや考える余裕すらなさそうなメイガンたちは何とか服を脱ごうとしているが、どうやっても脱げないようだ。3人は何かに気付いたようで、互いの服を引っ張り始めた。屋根の上から下品な笑い声ばかりが聞こえた。
「顔を合わせないで」
戻ってきたノッキムが私にささやいた。
「連中は大体Lv20くらいよ。今の私たちならどうってことはない相手よ。遠慮なく鏖にできるわ・・・モンスターと同じようにね」
「殺す?」
「乱戦に持ち込めば飛び道具より剣の方が有利よ。それに報復はメイガンたちが喜んで引き受けてくれるわ」
「!3人を見捨てるのか?」
「私たちを生かすためにね」
「非情な!」
「違う!よく聞きなさい。助けられないのよ。メイガンたちは服を脱ぎ終えたら、すぐ殺される。連中は少年少女のストリップよりもそっちで感じるみたいよ。彼女たちが死んだら、もう逆転のチャンスは訪れない。そうなれば私たちは機関砲の的と同じよ。ヘンリーに追いつくのに1分かからないでしょうね」
・・・助けられないなんて。
「どのみち、機関砲だけを相手にしていいわけじゃない」
攻撃してきているのは機関砲だけだが、連中は他にも私たちを傷つける手段を持っているはずだ。
「・・・私は屋根の上の奴らを殺す。フルフルは正面を頼むわ」
やるしかないのか・・・答えはYESしかないだろう。連中はヘンリーを殺した。野生動物を狩るように!奴らの快楽の為だけに・・・今は、メイガン、アーチー、チップも殺そうとしている。次は私たちだ。傍観するなんて悪手だろう。
「目潰しを仕掛けて散開しよう」
「グッドアイデア!」
拾い物の発煙手榴弾と閃光手榴弾を取り出す・・・。2つのファイアリングピンを音がしないように引き抜く!
「Three・・・Two・・・One・・・今!」
手榴弾を落とす!メイガンたちの服が破れると同時に轟音、閃光と大量の煙!同時にノッキムをつかみ・・・投げ飛ばす!
「何しやがる!俺らのストリップショーが台無しだ!」
正面からフルオートの発砲音!だが命中しない!止まることなく頭に刻み込んだ機関砲の位置に向けて走る!
「お前のストリップショーを見せてやれ!」
走りながら光線剣を取り出し、突きのアーツを放つ!手ごたえあり!正面の機銃手の喉と貫通したようだ。下卑た笑いが瞬時に引きつり・・・そいつの首だけが地面に落ちた。機銃手の胴体は跪き、ポリゴン片を吹き出しながら消滅した・・・
(殺した・・・私が)
現実なら決して許されない行為だった・・・緊急避難を認めてくれなければ。
「あっちの世界へ送ってやるぜ!送料なんていらねえ!遠慮するなよ!とっとけ!」
近くにいた黒服が後退しながら自動小銃らしきライフルを乱射してきた!こいつの能力が足りないのだろうか?撃つたびに銃口が上を向いてしまうようだ。当然ながら、隙だらけだった。
「その玩具ごとあっちの世界へ行け!」
追いかけて袈裟切りを放つ!首と右肩がそいつの躰から離れた!右肩がくっついた首の方を3人目の黒服に蹴り飛ばす!
「・・・ブッ!オアァァァ・・・!」
仲間の一撃死を目の当たりにしたからだろうか。奴は私に背中を向けて逃げ出した。
「愚か!」
そいつを屠所の家畜の如く速やか正中線に沿って解体した!目の前には決して逃がしてはならない快楽殺人鬼、そして私にはそいつを打ち払う力があり、無力化する手段はない。結果はわかりきっていると思うが。
(あと一人・・・)
「いい殺しっぷりだ!楽しんだかい?スーパーヒロインは大好物でね・・・そいつをぼろ屑に変えるのが特にね!」
正面の集団にいた最後の一人が耳元で話しかけてきた。
「気色悪い!反吐が出るレベルだ!」
振り向いて払う!・・・外れた!敵は距離をとろうと後退した!逃がすわけにはいかない!前進し、間合いを詰め、袈裟切りを放つ!
「やっぱスーパーヒロインだよ!あんた!非力な点が特にね!」
光線剣の振りが止まった。奴の右手にはいつの間にかまき割りにでも使うかのような片手斧が握られていた。片手斧の柄で受けられた?鍔迫り合いになっているが、私が全力を込めても黒服の右腕は動かない・・・Lv差で埋められないSkill構成の差か!
(こっちのSkillが少なすぎる・・・)
「!」
右胸に衝撃?奴の左手が開いてた・・・苦し紛れではないパンチだろう!HPが10%ほど減少している。こっちが本命か!
「もっと耐えてくれよ!」
2度目のパンチを受けた!またしても右胸!
「何だ!その猫パンチモドキは?」
黒服の3発目のパンチに合わせて左前に動く!予想通り光線剣が敵の右手の指に向かって滑って行った!
「!」
片手斧を落とした!その脇には白いソーセージのような細長い肉片が4本・・・すぐに消滅した!
「利き腕は左か?」
胴体めがけて突きを放つ!斧を落として驚いた黒服の右脇腹に命中した!多分腎臓の位置であろう場所に突き刺さった!一撃で黒服のHPが3分の1以下になった!
「・・・!」
尻餅をついて後ずさりする黒服!
「俺は誰も殺してないんだから・・・見逃してくれよ!尋問されればなんでも答えるからさ・・・仲間だぁぁぁぁぁぁ」
発狂寸前の黒服の命乞いは途中で終わった。別の黒服が槍投げの槍の如く顔面に突き刺さったからだ。飛んできた黒服は、仲間を裏切ろうとした奴の首を瞬時にポリゴン片へ圧縮加工し、壁に激突した。奴の首から上が壁に突き刺さった・・・
「特攻?・・・いや、人間砲弾?!」
黒服が次々と私の方に向かって飛んできてる・・・ミサイルのようではなく砲丸投げの砲弾のような飛び方だ・・・私を襲おうと飛び降りたのではなく、投げ飛ばされたような感じだ。次々と地面へ、壁へ頭から突き刺さる黒服たち。こんな連中にモテても困るのだが・・・
⋮
もう黒服は飛んでこないだろう・・・周りは首から上が地面や壁に埋まってもがいている不格好なオブジェが10個ほど・・・
「愛と愛情のダーイブ!!」
「Hiaa!」
聞きなれた絶叫と共に体当たりを受けた。
「やっぱ声だけじゃなくて体もなきゃね!」
アスラムだった。立ち上がりながら言わなければならないことを呟く。
「・・・ただいま!」
「お帰り!フルフル姉!」
・・・帰ってこれたんだ・・・本当に
「アラモ砦のレディース!騎兵隊の到着だ!」
初めて聞く声だった。恐ろしく低い、絶叫でもないのに大音量・・・180db位はありそうな大きさだ。
「不逞な輩は全て滅した!安心してくれ!」
間違いなく侍、それも素浪人の類だと答えるような外見の人物だった。アバター年齢が今まで見てきた中でも最高齢だ。30は軽く超えているのであろう。上が赤の着流し、下が黒の袴・・・そして帯刀、なぜか髷は結っていない。髪は銀髪のベリーショート、歴史の教科書に載っていたようなザンギリ頭という外観だった。
「それじゃあ、瓦礫の撤去開始だ!強盗殺人犯共の確保も忘れるな!」
そいつが飛び降りてきた。
(!)
反対側から5人ほど飛び降りてきた。
「・・・一人、逃げられたわ・・・もう少しで斬り捨てられたのに!」
ノッキムも飛び降りてきた。なぜか右腕の肘から先が存在しなかった。無くなった右手の代わりに左手に金属剣を持っていた。
「・・・あいつ!私の鑑定Skillを欺いてた!・・・偽情報を表示させるようにしてたみたいね!」
「まあ生きているだけありがたいのさ・・・奴は必ず俺が捕らえる!だからゆっくり休んでくれ」
「ちょっと見ない間に随分身なりがよくなったわね・・・あと、私はそういう卑しい捕虜はいらないからね」
ノッキムと着流しの素浪人は知り合いなのか・・・?
「アルビオン、フルフルとは初対面でしょ?」
なぜか鋭いノッキムの突っ込み。
「・・・と、お嬢ちゃんに自己紹介がまだだったな、俺がアルビオンだ。開拓ユニオン”リバレータズ”のユニオンリーダーを務めてる」
「私はフルフル・・・ユニオン、だったか?には所属していない。フリーだ、迷子をやってた」
「初めまして・・・なんだが、よく知ってるぜ。毎日アスラムが10時間以上たっぷりと魅力を話してくれたからな」
・・・アスラム、しゃべり過ぎだ・・・
「声は聞こえど実態はない・・・なんて寂しすぎるじゃない!!ユーレイじゃないんだから!」
「わかったわかった!もう金輪際テレポートは踏まないよ!」
「・・・感動の再開のところ悪いんだが、もう一人フルフルに会いたがってる奴がいるんだ・・・ちょっと十字路の方へな・・・」
誰なのかはよくわかっている。十字路の方で戦ってたのかな?
「・・・いいぞ!爆破!」
爆発?瓦礫の方から煙が!全力疾走並のスピードで飛んできた!続いて瓦礫だったと思われる大量の木片と石礫が・・・!
「お帰り!」
煙の向こう側から聞き覚えのある声!これを面と向かって聞きたかった!
「ただいま!エリー姉!!!」
まだ煙が晴れていないが、瓦礫があった方へ向って走った!




