最終回:偽黒のタンゴ
それから。
色々なことがあった。
生きるってこと自体が色々なことの詰め合わせで、色々なことのない人生なんてないとも言えるのかも知れないが、ともかく色々なことがあったのだ。
タンゴはそれからも使い魔として、魔女猫として成長し続けた。
主であり母であり姉でもある、ユーワともう一度会って幸せに暮らすことを願って一生懸命に。
いつしか魔女猫のタンゴは魔女界では知らぬものはいない存在となっていった。
タンゴはやがて使い魔を超えた才覚を示し、異界にある真理の扉へと到達する機会を得る。
悪魔の誘いに惑わされずに魔力を獲得することに成功したタンゴ。
ユーワの無罪を証明するためにアンチユダの組織と接触し、その中枢に至ったが。
そこで知ったのは、ユーワが本当に殺人を犯したという事実。
ユーワの目的は秘薬のレシピなどではなかった。
不死の呪いに縛られ、イカサマの命を与えられ、延々と生きながらえさせ続けていた老魔女を憐れみ、その運命から解き放ったのだった。
生きた魔導書。
死んだ魔女の代わりに、ユーワにはその罰を科せられた。
一切の自由などない。
邪魔な自我を薬で抑えられた。
道具といっていい存在。
「そうか」
「あなたは優しさのあまりに、罪を犯したんだね」
タンゴは友との協力を得て、ついにユーワをその罪から解放した。
そしてもう二度とそんな悲劇が繰り返されぬよう、生きた魔導書、というその概念そのものを破壊した。
そして、月日は巡り。
最後の魔女。
そう呼ばれる人物は今も静かに暮らしている。
なまじ、ネコには九つの命があるものだから。
ひっそりと、最愛の人との幸せな思い出を胸に。
「ねえ、ユーワ」
人の気持ちは難しくて、ネコにはわからん。
それは人の姿になった今でもそんなに変わらないけれど。
でも。
「あなたの愛したものが、いつまでも大好きだよ」
『この連載小説は未完結のまま約10年以上の間、更新されていません。
今後、次話投稿されない可能性が極めて高いです。予めご了承下さい。』
更新されてないとこんなメッセージが表示されるんですね。
13年ぶりに続きを書きました。
13年前とは気持ちも考え方も変わってしまっているけれど。
そういう意味では13年前に書くはずだった物語の続きを書いたとは言えないのかもしれないけれど。
とにもかくにも、これにて完結です。