むじゅん
「おい盾公、とうとうこの日が来たな」
「おう矛公、待ちくたびれたぜ」
「まずはルール確認、お決まりのやつだ」
「例によって、勝った方がサヨさんに求婚する」
「選ばれし村一番の娘、何度聞いてもご大層な話だ」
「はずすわけにゃいかねえ、観客も集まっちまった」
「がってん、始めるぞ、段取りどおりに」
「構わんぞ、いつでも来い」
「肩慣らしだ。沈んでくれるなよぉ!」
「手加減はするが、受けきって見栄えがしないかもな、先に謝っとくよっ」
「手応えねえぞ!」
「なんの!こんなもん!」
「よし、気合十分、本気だぜ」
「いーい槍捌きだ。ほれぼれする」
「…………」
「…………」
「すこし休もうぜ、息が上がった」
「ああ、ありがてえ、喉カラカラだ」
「きょうは雲ひとつねえ、いい天気だな」
「いい畑日和だ、戦ってる場合じゃねえかもな」
「なあ、サヨさん見物に来てるらしいぞ」
「知ってるよ。やっぱ気になんだろ」
「望まれてんだな、俺たち二人」
「てか、観客どんどん増えてねえか」
「はっきり言って、もう嫌だよ俺」
「ルールなんぞ、誰が決めたんだこれ」
「みんな俺たちを英雄扱いしてるがな」
「みっともねえ茶番だよ、実際は」
「なんで続いてんだろうな、これ」
「なりゆきだ、もう止められねえ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「おい。祭りの夜、笑いかけられたのは俺だ」
「落ち着け、あれは俺の方を見てたんだよ」
「間違いねえ。目が合ったんだ、あのとき」
「冷静に思い出せ。名前呼ばれたのは俺だ」
「えっ、俺の思い違いじゃあねえぞ」
「はあ?空耳はそっちだろうが」
「逃げんなよ矛公、横取りは許さん」
「聞こえたんだよ、はっきりこの耳に残ってる」
「許さねえ! 先に好きになったの俺だ」
「偉そうに言うな、俺は半年前からだ」
「ずっと想ってきた。おれは半年どころじゃねえ」
「るせえんだよ! 諦めるのはお前の方だ」
「ルールなんざ知ったこっちゃねえ! ミナ、見ててくれよ!」
「よし、ミナに勝利を捧げる! こっからが始まりだぁ!!」




