4-3.ソルの一族
・ ディー
「オレもリンゴが食べたい。」俺=ディー の隣にいた猪人が言った。コイツは数日前から行動を共にしている。町中では手首に縄を付けて俺に連れられている。
護衛の仕事で数日空いた、近くに猪人と人間が仲良く暮らす村があると聞いて見に行った。その帰りに一緒に連れて行って欲しいと頼んできた猪人がいた、それがコイツ"ウェイブ"だ。
猪人が人間と一緒に暮らしている様子を見ていなければ断っていた。この村の猪人なら一緒にやってみようと思えた。実戦経験はないそうだが、模擬戦でメンバー各員とわたりあえるだけの剣の腕がある。
次に訪れた町中の屋台で売られていた果物をメンバーの一人、リナが食べたいと言い出したのがさっきだ。
他のメンバーがいらないようなので、「2つくれ。」10銅貨を1枚渡した。
「まいど。」店のオヤジ渡してきたリンゴを受け取って立ち去ろうとした。
「釣りをもらわないのか?」ウェイブが聞いてきた。
「釣りがあるのか?」
ウェイブが店先の札を指した。「リンゴ1つ銅貨4だろ、2つで銅貨8だ。」
「そうなのか?」店のオヤジに聞いた。
「あぁ、そうだ。」苦い顔したオヤジが銅貨2枚を渡してきた。
「お前、ソルだな?」店のオヤジがウェイブに言った。
ウェイブが驚いたように言った。「あぁ、オレはウェイブ・ウォタ・ソルだ。どうして知ってるんだ?」
「お前、苗字があったのかよ?」俺は意外に思ってウェイブに聞いた。名前しか聞いてない。
「ソルだと何なの?」リナがオヤジに聞いた。
「そのへんの人間より頭が良いんだよ。猪人でも字が読めて計算もできる一族だ。」
メンバー全員がウェイブを見た。ウェイブは慌てたようだった。「オレは食べ物と旅関係の単語しかわからないし、一桁の計算しかできないぞ。オマエらの方が頭良いだろ?」
全員が頭を振った。「いや、お前の方が頭が良い。」俺が答えた。
ウェイブが信じられないというように絶句した。
「今後はお前をソルと呼ぶからな。」全員が頷いた。
「ソルは一族の名前でたくさんいるんだぞ!」
「俺達のチームではお前だけだ。何の問題もない。」
「それはそうだけど・・・。」ウェイブは納得いかないようだったが、それ以上は言わなかった。
コイツの言動が時々、幼く感じるので歳を聞いたら8歳で大人になったばかりだと言う。村の外へ旅をする機会を伺っていたらしい。年下の青年と思う事にした。
この後、宿を探す際にソルが店の看板の字を読める事が判明した。俺達がフォークとナイフの絵とかベッドの形の看板で店を判別するのを、ソルは書いてある文字だけでも判る。
俺達より頭が良い猪人がいるなんて思わなかった。剣の腕も確かだし、いろいろと頼る事になっていった。
ソルの旅の目的が嫁探しだと判った時が一番の驚きだった!
第四章はここまで。
つたない文章ですが、ひき続きお願いします。