第71話 全力
エストルに戻ると、相変わらずカッシュが門を守っていた。
「おう、お前達か。昨日はお疲れさん」
「色々とありがとうございました」
「なに、あれも俺達の仕事だ。気にするな。それよりも、また何かあればすぐに相談するのだぞ?」
「はい、頼りにしています」
相変わらず兄貴しているな。頼りになるかは分からないが、兄が居るとこんな感じなのだろうか。
「あ、そうだ。お前達。先に宿屋に行っておいてくれ。俺は少し、カッシュさんと話があるからさ。代金はこれから払っておいて」
「え、はい。分かりました!」
「わかった」
「承知しましたです」
ミリアに1金渡して、先にミーアのところに向かわせる。
「ん!? おい、あの子! 喋ってたぞ!? 治ったのか!?」
あぁ……しまった。そうだった……。
そういう設定なんだった……。馬鹿だ俺は。
「あぁ、あの子はですね、実は、その、呪いが……」
「の、のろ、い、なのか……それは、さぞ、辛いだろうな……」
俺の呪いのようなものだ。間違ったことは言っていない。
カッシュは、また都合よく騙されてくれたようで、同情するような目で、先を歩くマリーを見ている。
マリーには悪いが、次からカッシュに会う時は、何かしら呪いようなものをマリーに施しておこう。
そんな切なそうな目をしているカッシュに、話題を変える為、本来の目的であった事を話し掛ける。
「えっと、カッシュさん」
「ん? 何だ? 俺に話があるということだが。相談か?」
「いえ、そういうわけでは。昨日、この街を守っているから、嫁を作る時間なんか無いって言ってたじゃないですか」
「あ、あぁ。そう、だな……それがどうかしたか?」
「俺達はこれから旅に出るので、色んな人に出会うと思うんですよ。それで、カッシュさんを好きになりそうな人でも探せたらな、と」
「そそ、そんなことはしなくても良い!」
動揺しているのか? 好みだけでも聞ければ、行く先々でカッシュを売り込んでも良いんだけどな。
「とりあえず、女性の好みだけでも教えてくださいよ」
「し、しらん! 女性の好みなど、な、ない!」
「じゃあ、人族と獣人族だったらどっちが好みですか?」
「知らんと言っただろう!」
これを聞く為に三人を先に行かせたのにな。これじゃあ意味がないな。
別に無理やりくっつけようというわけではない。ただ、こんな正義感の強い男が居ますよ、と宣伝するだけなのに。
「ふむ。まさか、女性に興味がないという……?」
「そんなわけあるかっ! 好……はっ!?」
「興味はあるんですね。良かった。危うく逃げるところでした」
「そんなことされたら、普通に傷付くぞ」
そういえば、ミリアやファラを見る目と、マリーを見る目が少し違ったんだよな。
昨日の発言を聞いた限りでは、幼女好きというわけではなく、ただ自分の子どもが欲しいと思っていただけなのかも……?
そうなると、ただのロリコンかと思っていたのは間違いだな。
「そういえば、ウチのマリーを見る時だけ少し目が違いましたね」
「なんのことだ!?」
「カッシュさん、エルフ好き……?」
「なっ! ちがっ! そんなわけではっ!」
「じゃあ、人族とエルフ族ではどっちが好み?」
「エル……俺は女性を自分の好みだけで選んだりはしない!」
なるほど、エルフ好きなのか。エルフの国に行った際には、カッシュを宣伝しておこう。
勝手なイメージだけど、エルフは高潔で正義感強そうだしな。
マリーは全然そんな感じしないが。
「分かりました。機会があれば宣伝しておきますね」
「何が分かったのだ!?」
「あ、いえ、もう大丈夫です。大体わかったので。それじゃあ、あの子達を待たせているので、俺は行きますね」
「お、おい! 何が分かったのだ! それより、こんなこと他の連中に言うんじゃないぞ!?」
「分かってますよ。だから二人きりで話したんですから。それでは、また明日です」
まだ何か言いたげだったけど、今日は堪えてくれたらしい。
聞きたい事は聞けたので、カッシュと別れて、宿屋に向かう。
「こんばんは」
「おや、タカシ。久し振りだね。さっきミリア達が来たよ」
「お久し振りです。それで、あの子達は?」
「あぁ、部屋に行ったよ。それで、ミリアが大金持ってたんだが、どういうことだい……?」
ミーアが掌の上に金貨を弄んでいる。
しまったな。奴隷は50銀程度しか持てないんだっけ……。
でも、インベントリに入れずに、手に持つ分は大丈夫なはずだ。ミリアはそこのところ、うまく誤魔化しただろうか……心配だ。
「あぁ、宿代ですよ。宿代」
「へぇ。こんな大金を?」
「ちょっと臨時収入があったので」
「そうかいそうかい。じゃあ、これは貰っておいて良いんだね?」
このババア……じゃないミーア、お釣り渡さないつもりだな?
「ミリアには世話になってますからね。そのお礼ってことで」
「ありがとうよ」
金貨をミーアに奪われて、ワタワタしていたであろうミリアの姿が想像できるが、ミーア相手なら仕方ない。でも、お仕置きだな。
「用事があるので、すぐ出ますけど、俺も一度部屋に行きますね」
「はいよ。飯はいつでも良いよ。食べる時は声掛けてくれ」
「はい」
ミーアに部屋の場所を聞いて、ミリア達の元に向かう。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「おかえり」
「おかえりなさいです」
三人は既に部屋着に着替えていた。
「さっそくだけど、時間がないから、先に用事を済ませるぞ」
「どこに行かれるんですか?」
「武具屋だ。色々と頼みたい物があるからな」
「また何か思い付いたんですか?」
「まぁ、そんなところだ。すぐ出るぞ」
三人と同じく服を着替えてから、部屋を出て、ミーアに鍵を渡し、宿屋からそのまま武具屋に向かう。
「おぉ、これはこれはタカシ様。お久し振りですね。本日はどのような? もしや、また何かアイデアが!?」
「どうも、お久し振りです。えっと、まずは服をお願いに来ました。あと、機械を一つ作っていただけないかな、と」
「服ですね、承知しました。それと、機械というのは……?」
「うーん、鉄を使うので、鍛冶屋さんが一番向いてるかな」
「では、すぐに仕立て屋と鍛冶屋を連れてまいりますね!」
先日も居た男の子が、仕立て屋と鍛冶屋を迎えに行ったので、それまで服のデザインなどを紙に書いていく。
「これはまた、先日のとは違ってヒラヒラとした服ですね」
「そうですね。俺の国の服、というより、正装ですね」
「正装……ですか。どのような時に使われるのです?」
「用途のある服というわけではなくて、この国でいうところの神官服みたいなものですね」
「あぁ、なるほど。そういうことなのですね。それで、その神官希望というのが、そこのエルフの方ですか?」
「確かに、この子は神官を目指していましたけど、これは私の好みで、ただこの子達に着せてみたいだけです。趣味ですよ、趣味」
そんな話をしていると、仕立て屋と鍛冶屋が店内に入ってきた。
「おお、タカシ殿お久し振りじゃな」
「タカシさん、久し振りですわね」
「お久し振りです。またお願いしたいことがあって来ました」
「ほほう……」
まずは仕立て屋に服の説明をする。
デザインは既に絵にしていたので、生地や色などの指定をするだけだったので、すぐに終わる。
「また……面白い服ですわね。履物はどうしますの?」
そうだった。靴を考えていなかった……。
「こんな感じのソックスとサンダルのような物を作れますか? あ、出来ればこんなブーツと靴も欲しいですね」
何種類か絵を描いて説明する。
「そうですわね……これはすぐに作れそうですわ。これは、少し時間が掛かりそうですわね……」
「どのくらい掛かりそうですか?」
「明日いっぱいは」
「相変わらず早いですね……」
「えぇ、弟子も居ますし、手伝いも居ますので。それで、これだけですの? だったら、私は早速戻って作業いたしますわよ?」
「はい。お願いします。明後日伺いますね」
そのまま仕立て屋は帰っていく。相変わらず仕事が早いな……。
頼む方としては、すごく助かる。
「次は儂の番かの?」
「えぇ。機械を一つ作って欲しいんですよ」
「して? その機械とは何じゃ?」
「氷を削る機械です。全体としてはこんな感じです。サイズはこのくらいで、構造はここが、こんな感じになっています。それで、ここに氷を入れて、このハンドルを回すと、ここと氷がこうなって、結果的に、こうなります」
絵を書きながら説明する。単純な構造なので、簡単だ。
簡単なだけに、この世界にないのが疑問だな。氷自体がそんなに普及していないから、なのかな。
「ふむ。なるほどな。簡単じゃが、これだけなのか……?」
「え、はい。これだけです」
「これは何のために必要な道具なのじゃ?」
「氷を削る為に必要なんです」
「氷を削ってどうするのじゃ?」
「食べるんです」
「は?」
何を言っているんだこいつ、みたいな顔をされた。この顔を見るのは、何度目だろうか。
この顔を見る度に、この世界では普通ではないんだなと思う。
でも、俺の世界では普通なんだよ。
「あ、でも、氷は出来るだけ薄くなるようにお願いしますね」
「ふむ。それは刃の角度を変えれば大丈夫じゃが……」
「まぁ、今は変な物だと思っても仕方ないです。完成したらご馳走しますよ。それで判断してみてください」
「うむ。分かったぞい。依頼は依頼じゃ。すぐに取り掛かろう」
「では、仕立て屋さんと同じ日で良いですか? 可能なら、使い方など教えたいので、明後日ここに持ってきてもらうと助かります」
「このくらいなら大丈夫じゃろう。任せなさい」
頼もしいな。明後日にはかき氷が食べられるのか。氷を生成する練習と、食べる為のシロップを用意しておかないとな。
「タカシ様、あれはそんなに良い物なのですか……? 失礼ですが、とてもそうは思えないのですが……」
「この国に無いようなので、商品化出来ると思いますよ。楽しみにしておいてください」
「はぁ……タカシ様がそう仰るのでしたら……」
「それで、合わせていくらくらいですかね? あ、先日作ってもらった二種類の服をこの子にもください」
ゴスロリと制服も一緒にお願いする。
マリーがゴスロリ着たらギャップがすごいだろうな。楽しみだ。
「ええと、そうですね。先日ご提供いただいたアイデアの品も順調に売れておりますので、今回は3、3、5、5、5、4。全部で、25金でいかがでしょうか」
「毎回割引していただいて、ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそアイデアを頂戴しておりますので」
25金支払う。
「それでは、明後日また来ますね」
「はい、楽しみにお待ちしております」
明後日が楽しみだ。
そのまま武具屋を出て、宿屋に戻る。
ミーアに声を掛けて、そのまま晩飯を摂ることにした。
「あ、そうだ。ミリア、折角ミーアさんに再会したんだ。話したいこともあるだろうし、久し振りに二人で寝たらどうだ?」
「え、でも……。悪いですよ」
「気にしなくても良いぞ。どうせ、同じ宿屋内に居るんだから」
「はい!」
「あ、でも余計な事は言うんじゃないぞ?」
「うぅ……分かってますよぅ」
本当だろうか、心配だ。
タカシさんは勇者なので奴隷じゃなくなりました! とか……マリーじゃないから、そこは大丈夫か。
前みたいに、冒険者なんだから仲間と一緒に居ろとか言われたら仕方ないが、たまには親子水入らずで楽しい会話でもしてくれ。
クドラングに行く予定などの話をしていると、いつの間にか皆食べ終わっていた。
「よし、それじゃあ部屋に戻るか。今日は風呂に入る時間が無かったな。仕方ない、明日入ろう」
「分かりました。それじゃあ、私はお母さんの所に行ってきますね」
「あぁ、追い返されるかもしれないが、しばらく会えないかもだから、俺に行ってこいって言われたと伝えろよ」
「そうですね。ありがとうございます!」
食堂を出て、ミリアと別れる。
明日はクドラングだから、別に疲れないだろう。
今日はまったりがっつり、楽しむとしようかな。
「今日はミリアが魔法の練習できないだろうから、俺達も休憩しよう」
「はい、わかりましたです」
「わかった。じゃあ、タカシ昨日の教えて」
「昨日の?」
「夜、マリーがしてたの」
あぁ、あれか。
ファラにはまだ早いと思うんだよな……。
「あれはもうちょっと後な。とりあえず、いつでも寝られるように服脱いでおくか」
「わかった」
「はい」
三人服を脱いで、ベッドに座ると、ファラが当然のように上に座ってくる。
それにしても、一人居ないだけで、全然空気が違うな。
ちょっと寂しい。
ファラを抱っこして、顎を引き寄せてキスをした後、体の色々なところを撫でつつ、一部分を執拗に弄る。
「あ、あの……私はどうすれば良いですか?」
「あぁ、すまん。俺が見えるところ、そうだな……そこに座って、今俺がファラにやっていることを、全て自分でやってくれ」
「えぇ!? そ、その、自分で、ですか……?」
「おう。俺の両手の動きを真似して、俺とファラに見せてくれ」
マリーを向かい側に座らせ、ぎこちないが、真似をさせる。
「ふぁ……んん……」
「うぅぅ……んっ……」
二人ともビクンビクンなっているが、構わず続ける。
「た、タカシ……もう……」
「まだ、だぞ」
「あぅあ……」
マリーは真似をする為、初めはこちらを見ていたが、今では目を瞑って作業に没頭している。
ファラは今まで経験したことのない長時間の攻めに耐えられず、くたっとなってしまったが、マリーはまだ作業を続けていたので、ファラへの作業も続けることにする。
かなり長い時間続けたせいもあり、腕が疲れた。
ファラも疲れ果てたようで、今ではもう完全に意識がない。
マリーは周りが見えておらず、息を切らしながら作業を没頭していたので、先にファラを布団の中に入れてあげる。
おやすみ……。




