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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第一章
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第60話 苦戦

 朝は一番に目が覚めた。

 続いてマリーも起きたので、二人で食事の用意をする。


「タカシ様、この程度私がやります。ゆっくりされてください」

「いや、こういうのは平等にやらないと。それに、折角ゆっくり話が出来る時間でもあるし」

「あぅ、流石タカシ様です!」


 仲間と話したいだけなのに、何が流石なのか分からない。

 でも、こういう時くらいしか言えないからな。釘刺しておくか。


「あ、そうそう。俺等四人以外の人が居るところで、俺のことを勇者とか言ったらお仕置きするからね?」

「おし、お、しおき……は、はい! 言い付けは守ります!」


 お仕置きと聞いて目が一瞬輝いたように見えたが、まさかな……。


「よし、こんなもんかな。後の盛り付けとかお願いできるか?」

「もちろんです」


 マリーに後を任せ、ファラとミリアを起こしに行く。

 そういえば、ファラを後から起こすのって初めてかもしれない。


「ミリア、ファラ、そろそろ朝飯だぞー」

「はい……」

「んぅ……」


 ミリアは既に起きていたようで、着替え始めていたので、ファラを起こしてから服を着せる。


「ほら、今日は街だろ? 早く食べてさっさと出掛けよう」

「はい!」

「ん……」


 ファラはまだ半分寝ているようだったが、今日の予定などを話していたら、皆同じタイミングで食べ終わった。


「さて、皆準備したらすぐに出かけるぞ」

「はい!」


 昨日のテンションが嘘のようにミリアは元気だ。

 そんなミリアを先頭に昨日と同じく、道なりに進む。


 数時間程、魔法の練習をしながら進み、スキルやステータスについて考え事をしていたら、ファラから声が掛かる。


「タカシ、煙」

「うん? どこから?」

「街」


 街から煙……? 何か焼いているのか? こんな昼間から? 何か嫌な予感がするな……。


「ミリア、ちょっと少し特殊な魔法を掛けるから、見てきてくれるか? それと、これは内緒だからな?」

「はい!」

「ミリアの目が遠くまで見えるようになる」


 ミリアに耳打ちした後、小声で詠唱して、街の様子を見てもらう為に空へ飛ばす。

 その間、マリーが「すごい!」や「さすが勇者様!」などと褒めてきた。

 人が居ないとはいえ、そんなにお仕置きされたいのか? とりあえず放置しておこう……。


「どうだった?」

「何かが暴れているようです。姿は見えませんでしたが……モンスター、だと思われます」

「そうか……。どうしようかね……違う街を探すか……」


 俺等だったら討伐できるだろうけど、面倒事になりそうだし……。別に協会なら他の街にもあるしな。


「行きましょう、タカシ様! 勇者の力を見せる時です!」

「マリー……あのな? 勇者だからってさ、自分や仲間の為ならまだしも、赤の他人の為に進んで危険に飛び込むっていう奴は、ただ頭がおかしいだけで、勇者でも何でもないだろ」

「そんな……」

「俺は勇者じゃないけど、勇者だって人間なんだ。人の道具じゃない。それくらい分かるだろう?」

「でも……勇者は……」

「もう一度言うぞ? 俺はたまたま勇者と同じ事が出来ただけの、ただの魔術士だ。勇者ではない」

「うぅ……」


 あぁもう、泣きそうじゃないか……。強く言い過ぎたか?

 でも、今後勇者勇者言われても困るしな。仕方がない。


 マリーに良いところを見せたいのはある……だが、それが面倒事になるかもしれないのであれば、話は別だ。


「タカシさん、言い過ぎです……」


 確かに、言い過ぎたのは分かっている。でもまさか、ミリアまでマリーの味方に付くとは……。

 でも、マリーに強く言い過ぎたことを言及しているだけであって、マリーの意見を指示するとは言っていない。

 今ここで強く言っても意味は無さそうだし、ここは全員の意見を一度まとめて、まとまったところに後で強く言うかな。


「はぁ、分かったよ。じゃあ、多数決を取ろう。俺は参加しないから、三人だけでな。いくぞ? はい、目を瞑ってー」

「わかりました」

「ん」

「はい」


 一瞬、こいつは何を言っているんだ? という顔をされたが、皆が目を瞑ったのを確認したので、一応は理解してくれたようだ。

 そのまま多数決のため、話を進める。


「じゃあ、あの街は放置して、次の街に行っても良いよ? と思ってる人、手を挙げて」


・・・。


「あの街に行くべきだ、と思う人手挙げて」


サササ。


 まぁ、予想通りだな。


「はい、目を開けて良いよ」

「ど、どうですか?」

「三人とも同じ意見だよ。分かったよ……行けばいいんだろ……」

「はい!」


 結果は分かっていたけど、後で強く言い聞かせる時に、私はそんなつもりは無かったとか言い訳させない為にも、一度意見をまとめておく必要がある。

 まぁ、俺がダメだ! と言えば、反対はしても逆らえないだろうけど。

 とりあえずは、今後の方針を固めておくことも大事だし、今回はこれで良しとしよう。


「街にはギルドがあるだろ? ということは、冒険者も居るわけだ。それでも、まだ火の手が上がっているということは、相当強いモンスターだぞ? 覚悟は出来ているか?」

「大丈夫です! 少しでも被害を抑えられるのなら!」

「だいじょうぶ」

「タカシ様の力を信じます!」


 ミリアとマリーは予想通りの返答だ。

 でも、ファラは何が大丈夫なのか分からない。やっぱり故郷だから、守りたいっていう気持ちはあるのかもしれないな。


「ファラ、お前は何で行きたいと思ったんだ?」

「親が居るから」

「お前、どうでも良いって言ってなかったか?」

「ファラを捨てたパパはどうでも良い。でも、ママのお墓がある」

「そっか。お墓は守らないとな……」


 なるほどな。それならば、何とかしないとな。


 街には走って向かう。

 その道中、俺を主軸に、ミリア、ファラ、マリーの順で敵に相対するという作戦を立てた。

 マリーはまだステータスが乏しいので、ファラに守らせるスタイルだ。


「ミリア、ファラ。二人は必ず障壁を張ること。マリーは絶対に近づかないこと。マリーにモンスターが近付きそうになったら、ファラは必ず守ること」

「わかった」

「あと、本当に強くて俺達では勝てそうにないと判断したら、迷わず逃げるからな? 俺の指示には絶対に従ってくれよ?」

「分かりました!」

「はい!」


 作戦を伝え終わる頃には、街の入口に到着した。

 街からは、住民が走って門を抜けて逃げ出しているのが邪魔で、うまく中に入ることができない。


 住民の波をかき分け、何とか街の中に入るも、そこら中に冒険者や住民達が倒れているのが目に入る。


「これ、やばくない? もう帰ろうぜ……」

「ちょっと、タカシさん! ここまで来て、それはないですよ!」

「ん」

「そうです!」


 何だよこいつらのやる気は……ドコから来るんだ……。

 総ツッコミを貰ったところで、仕方なく町中を進んでいると、叫んでいる冒険者らしき集団が居た。


「おい、何してる! こっちだ!」

「逃げろ!」

「この先はもうダメだ! 救援を待とう!」


 あれだけの集団でも太刀打ちできないってどんだけだよ……。


「あの先に居るらしいね、モンスター?」

「みたいですね。急ぎましょう!」


 ミリアがノリノリだな……。


 俺が先頭で盾になるって話したばかりなのに、ミリアが先行してしまっている。お仕置きポイント1だな。


「おい、ミリア。先行し過ぎだ。俺の後ろに居ろ」


 声を掛けて、ミリアが後ろを向いた途端、建物の影から物凄い速度で何かが飛んでくる。


「え、あ、はい。ごめんな……ざっ」


 その物体がミリアに掠り、ミリアが吹っ飛ぶところは見えたが、早すぎてボールのような何か、ということしか分からない。


「ミリア!」


 ミリアに駆け寄りつつ、HPの確認をすると三分の一程減っている。


 まずい。まずいまずい。


「ファラ、障壁張れ! あとミリアに回復! マリーはファラの真後ろから離れるな!」

「うん!」


 三人の前に盾を持って構え、後方から攻撃されないよう土魔法で頑丈な壁を作って守る。


「あいつ、何処行きやがった。ファラ、ミリアは大丈夫か!?」

「問題ない。意識がないだけ」

「マリー絶対に離れるなよ」

「は、はい……」


 掠っただけで、あれだけのダメージだ。俺もミリアとそんなに防御力は変わらないぞ? 直撃したら死ぬかもな……。

 マリーが喰らったら即死だろうし……。これは非常にまずい。


――ガガッガガッ


 飛んでいった方向から音が近付いてくる……。とりあえず障壁を張って、更に神口で能力を向上させる。


「アレは何だ? モンスターか?」

「しらない」

「何でしょうか……精霊さん? に似ているようでしたが」

「精霊? あれでよく見えたな……」

「エルフは精霊と会話する為、そういう物が見え易いんです」


 俺には見えなくてマリーには見えた、ということは精霊に近い存在なのか? こういう時、すぐに教えてくれるミリアの意識がないのが惜しい。


 近付いてくる音の方を注視していると、そいつの姿が現れる……。

 何だこいつ……。茶色の土の塊みたいな、エレメントに似てるが、それともまた少し違う……。見たことない形だな。


「やっぱり精霊さん……いえ、精霊さんとは何か違います……姿形は似ていますが……」

「マリー、会話できないか?」

「……やってみます……」


 マリーが目を瞑って何やらブツブツ言っているが、精霊モドキは何の反応もせず、こちらにゆっくり近付いてくる。


「ダメです。会話になりません……」

「何か言ってないか?」

「殺す殺すって言ってます。こんなの精霊さんじゃないです……」


 初対面でいきなり殺すって物騒だな……。

 やられる前にやるか……。


「止まれ! うらぁ!」


 神口で動きを止め、魔力を込められるだけ込めた炎をぶつけてみる。


――ゴオオウ!


 ……全く効いている気がしない。

 そのまま、最大に圧縮した水を発射する。


――ブシュウウ!


 ……これも全く効いている感じがない。

 エレメントなら大穴を作る威力なのに、何だこいつ……。


「タカシ様! ダメです! 精霊には魔法は効きません!」

「まじか!?」


 ちょっと……そういうのは先に言ってくれよ……。

 回転している石なら物理ダメージとして傷を負わすことができるだろうと考え、土玉のバレットを撃ってみる。


――ガガガガガ!


 ダメだ……。少し欠けた程度だ。どうするんだよこれ。

 あ、神口の効果が切れた……。


 ピクっと動いた後、また飛んできそうになったので、再度神口を使う。


「地面に張り付け!」


――ビタンッ!


 神口は効くのに、他の魔法が効かないってどういうことだよ……。


「ファラ、マリーとミリアを頼む!」

「え」


 珍しくファラが戸惑っていたが、神口の効果時間が惜しいので、特攻してメイスで殴る。

 何度も殴る。何度も。


――ガッ、ゴガ、ゴッ!


「くそっ! 硬いなこいつ!


 殴っていると、いつの間にか神口の効果が切れていたようで、腹に向かって飛んでくる。


「ぐあっ!」


 そのまま、吹っ飛ばされてゴロゴロと転がり三人のところまで戻される。

 あぶねぇ……勢いが付いていたら、やばかったかもしれない。


「氷漬けになれ!」


――バキンッ!


 神口で行動を封じた後、三人をまとめて抱き寄せ、神脚で今朝まで使っていた小屋に飛ぶ。


「はぁ……はぁ……ごほっ……はぁ……む、無理だ、あいつ」

「タカシ、大丈夫!?」

「タカシ様、お怪我は!?」

「ちょ、ちょっと、休憩」


 腹に、勢いのある一撃を貰ったので、苦しい……。


「なん、何なんだよ、あいつ。本当に魔法きか、効かないし……」

「確かに見た目は土の精霊でしたけど、精霊とは違う何かでした」

「はぁ……どうやって戦えば良いんだよ……ふぅ……」

「精霊さんと戦った事がないので……分からないです……」


 あれは反則だろう。魔法が効かないとか……。魔法使いしかいないパーティーで、どうやって戦えっていうんだよ……。

 幸いなことに、ミリアに外傷は無いようだ……良かった……。

 ミリアが傷物にされたわけではないし、このままスルーしても良いだろう。これで三人とも文句は言わないはずだ。


 ミリアの意識が戻ったら、どこの街に行くか相談しよう。

 とりあえずは休憩だ……。疲れた……。

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