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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第一章
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第58話 契約

 朝起きると、マリーとミリアが起きて話をしていた。


「ん……ミリア、マリーおはよう」

「あ。タカシさん、おはようございます!」

「おはようございます、タカシ様!」


 アバンの時も思ったけど、様を付けられるとむず痒いな……。


「マリー、サマは付けなくて良いよ。普通にしてくれ」

「いいえ! タカシ様は、ご主人様で勇者様ですから!」

「いや、だから、ちがっ……はぁ、もう好きにしてくれ……」

「はい!」


 ファラを起こし、着替えさせた後、朝食の為食堂に向かう。

 食事は既に準備されていたようで、すぐに食べることができた。


「さて、出掛けるとするか」

「はい!」


 協会は昨日一度行ったので、すぐに到着する。

 中に入るとカウンターがあったので、そこで話を聞く。


「おはようございます。えっと、協会に登録を行いたいんですが、何処に行けば良いですか?」

「おはようございます。登録はここでも承っております。本日はどの方が登録されますか?」

「この子です」


 手続きが出来るようミリアを前に出し、ミリアと協会員が話を進めるだろうと思い、変な事を言わないで眺めておく。


「えっと、登録はカードを出せば良いですか?」

「はい、そうですが……あの、その前に皆さんとはどのようなご関係なのでしょうか?」

「パーティーメンバーです!」

「はぁ……そうですか。皆さんお若いですが……主従関係などでは、ない……ですよね?」


 何か良くない空気だな。主従だと何かまずいのか……?


「え……? そっちの男性が私の主人ですが……」

「やはりそうですか……。残念ですが、奴隷は登録ができません」

「えっ……」


 ミリアがフラっとなったので支えて、会話に割り込む。


「すみません、奴隷が登録できないってどういうことですか?」

「最近変わったのです。申し訳ないですが、登録は行えませんのでご容赦ください」

「そんな……冒険者ギルドは奴隷でも登録できるじゃないですか」

「当協会は魔法を研究するところです。いつ戻るか分からない、いつ死ぬか分からないような冒険者とは、根本的なところから違うのです」


 何か冒険者を見下した様な言い方だな。

 研究が出来るかどうかも分からない奴に、研究費用は出せないってわけか。別に登録だけしてくれてもいいじゃないか。


「どうにかならないですか? この子、魔導士なんですが」

「え!? ま、魔導士!? この子が……ですか?」

「えぇ、そうです。最年少魔導士ですよ? 協会の宣伝になると思うんですよ。だから、何とかならないですか?」

「うーん。それはそうですが……しかし、規則は規則です。確かに宣伝にはなるかもしれないですが、どうしようもないですね……」

「……」


 奴隷はダメだとして、冒険者もネックになっていたんだ……。

 ミリアの夢の為、ここで冒険者を辞める……のは厳しい……。かと言って、ミリアのみ此処に残すのもできない……。


「登録だけでも良いんです。何か方法はないですか?」

「そう言われましても……。協会の為になるとはいえ、他に登録のできない奴隷の魔導士も居ます。その子だけ、例外として認めるわけには参りません」

「最年少という記録だけでも残りませんかね……」

「申し訳ないですが、協会員のみ記録を残すことになっておりますので、それも叶いません」


 ダメだ。記録だけでもと思ったが、それすら無理なのか……。


「他の協会だと奴隷でも登録出来たりしませんかね……?」

「国や街によって管轄が変わりますが、奴隷が登録出来なくなったのは、どこも同じです」

「そうですか……ありがとうございました……」

「いえ、ご期待に添えず申し訳ない」


 この人に文句を言っても仕方ないだろう。今は、ショックを受けているであろうミリアをどうにかするのが先だ。

 四人で協会を出て道を歩くが、行先がない。今日はこの後、狩りに行く予定ではあったが、この状態では狩りにはならないだろうし、かといって宿は出てしまったので戻れない。

 ひとまず街の外に出ることにする。


「ミリア、ほら。行くよ」

「はい……」


 しばらく歩いて、森の近くまできて小屋を建てる。


「マリー、精霊を召喚してくれ。ファラ、戦えそうな奴を召喚してくれ」

「分かりました」

「ん」

「ここで少しの間、ミリアと話をするから、そこの森で魔法の練習も兼ねて狩りをしてきてくれ」


 二人が召喚を終えた後に、狩りの指示をする。


「ん」

「え……私達、二人だけで、ですか!?」

「大丈夫だ。ファラ、ちゃんとマリーを守ってくれよ? あと、奥には行かないこと。マリーは精霊に戦い方を相談して、色々試してくれ」

「わかった」


 ファラがマリーの手を引いて外に出る。見た目逆だよな……。

 二人が森の方へ歩いて行ったのを見届けて、小屋の中で椅子に座っているミリアの下に戻る。


「さて、ミリア。さっきはごめんな。まさか奴隷だと登録出来ないとは知らなくてさ」

「いえ……」

「それで、ミリアが協会員になるには、俺が遺言を残して死ぬしかないわけだけど……すまないが、それはできない」

「はい……」


 どうしたもんかな。まさか奴隷では登録できないということを、ミリアが知らないとは思っていなかったし。

 そういえば最近変わったって言ってたな……だから知らなかったのか。

 それもショックなのだろう。今朝までのニコニコしていたミリアが嘘みたいだ。


「もう良いです……魔導士は諦めて、奴隷として生きていきます……」

「夢だったんじゃないの?」

「だって、どうしようもないじゃないですか……」

「……そうだな。でも、最近変わったって言ってたし、それを決めた偉い人にでも直接進言すれば……」

「無理ですよ。私、ただの奴隷ですし……」


 ダメだ、卑屈になってる。

 俺が、その制度を決めた奴に力を見せつけて言う事を聞かせ……るのはダメか。何か手はないだろうか。

 ジョブの奴隷を消せば……いや、奴隷紋が残ってるし、俺の登録されている情報は消えない。

 俺が死んでミリアを解放したとしたら、奴隷紋はどうなるんだ? 自然に消えるのだろうか。


「俺が死んでミリアを解放したら、奴隷紋ってどうなるんだ?」

「え……消えますけど……ダメですよ。私の為に死ぬなんて……」

「消えるのか……」


 なるほど。奴隷でなくなれば奴隷紋は消えるのか。


「奴隷を解放する手段は、主人が死ぬ以外に何かないのか?」

「ない……と思います」


所有奴隷:ミリア・ウェール ファラ・オスロ マリー・カレーズ


 要するに、このリストからミリアの名前が消えれば、ミリアのお腹にある奴隷紋も一緒に消えるのか。

 何かないだろうか……。


「過去に奴隷が、主人の死以外で解放された例ってないの?」

「……分かりません。教皇様なら……あるいは――いえ、やっぱり無理だと思います」

「でも、この奴隷契約って魔法みたいなモノだよね? 無効化出来たりするんじゃない?」

「そんな解除魔法なんて聞いたことないです……」


 解除魔法……となると聖職者あたりが使えるようになるのか?


「聖職者を極めたら解除できそうじゃないか?」

「いえ、神官系統の魔法は異常を回復するもので、契約を破棄させるものではないので……」


 これもダメか。神口で試してみるか? ミリア・ウェールの奴隷を解除! という感じで。

 ただ、どれだけMP使うか分からないな。解除の条件は主人の死だから、使った途端に死ぬとか勘弁だぞ。

 あぁ……神系シリーズの取扱説明書が欲しい……。


 それより、奴隷じゃなくなれば使徒でもなくなるんだよな。まぁ、ステータスで強化できるからあまり問題ではないが……。


「もう良いですよ……」

「今、何かないか考えてる」

「いいですって。二人も心配ですし、もう諦めて行きましょう?」


 諦めきれてないだろう。今も泣いているくせに。


「ミリア。正直な話、俺の事どう思ってる?」

「え……何ですか突然……」

「いいから。正直に答えてくれ」

「うぅ、へ、変……な人です。……初めは嫌いでした。でも、今は何故か嫌いにはなれません……。でも、好き……変な人です」


 そっか……変な人か。


「じゃあ、奴隷でなくなったら、俺の前から居なくなる?」

「それはないです。今更お母さんの所には戻れないですし、ファラ達も心配だし、タカシさんを放っておけないです」

「俺を放っておけない? でも、俺と一緒に居たら、これから先はもっと危険な事があると思うよ?」

「危険は、大丈夫です。一度お母さんの前でタカシさんと一緒に行くって決めたんです。それは覚悟の上ですから。それに、私が止めなければ、ファラ達にもっとエッチな事するでしょう? だから、タカシさんからは離れませんよ」


 ミーアさんのことは良いとして、俺のことじゃなく、ファラ達の心配かよ。


「じゃあ、これからはミリアがあいつらの代わりに、俺の事を満たしてくれよ」

「……はい、分かりました。もう奴隷として生きていくって決めたし、もう何も言いません。好きにしてくだ、さい……」


 ダメだこれ。

 ミリアの事を好きに出来るのは良いけど、そんなんじゃ、何も嬉しくないし、楽しくない。


「なぁ、そんなんで良いのか? もう、最年少魔導士は諦めるのか?」

「だって! どうしようも、ない、じゃない……ですか!」

「何か方法があるかもしれないじゃないか。何でそんな簡単に諦めるんだよ! いつもの前向きなミリアは何処行ったんだよ!」

「もう、もういいんです。仕方ないんです! ちゃんと調べていなかった私が悪いんです!」


 ちょっとした言い合いになってしまい、ミリアが泣きながらテーブルに突っ伏したのでお互い黙る。

 俺も椅子に座り、しばらくミリアを眺める。


 何とかしてあげたい。


 神口は強制的に相手に効果を与えることができた。

 契約さえ何とかなれば良いんだ――試してみるか。


「なぁ、ミリア。かつて魔法行使の代償で死んだ人って居る?」

「いえ、特には……」

「そうか。なら、大丈夫だな。ミリア、俺に何かあれば、ファラとマリーの事をよろしくな」

「え……な、なに、何ですか突然、何をするんですか!? そんなこと、ダメですよ!?」


 ミリアが立ち上がり、泣き顔のままこちらを向く。


 魔法行使で死んだ人は居ない、と魔法について詳しいミリアが言うんだ、ここはミリアを信じよう。


 失敗しても、MPが尽きるだけで死にはしないだろう。

 そう判断し、ミリアを信じて使える魔力を全て口に集め、神口を使う。


「タカシ・ワタナベとミリア・ウェールの奴隷契約を解除!」

「えぇ!?」


――パアァァァ


 ミリアのお腹が光っている。成功したのだろうか。


「な、なに、これ……」


 ミリアが戸惑い、服を捲ってお腹を見ている。


 やがて光が収まり、そこには奴隷紋がなくなっていた。

 あぁ、良かった。成功か……。


 良かったな、ミリア……。


「た、タカシさん!?」


 ミリアの呼びかけを最後に意識を失う……。

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