第26話 勉強会3
お茶を飲みながら、食後の一時をまったり過ごす。
時間は12時過ぎたあたりだ。ユニーク狩りにはまだまだ時間がある。
「えへへ……美味しかったです!」
「俺もだよ。じゃあ、落ち着くまで少し勉強会でもしようか。主に俺のだけど」
「そうですね! 何でも聞いてください」
出た。ミリア先生。
「そういえば、こないだジョブの話をしたけどさ、上位ジョブになるための条件とかって知ってる?」
「えっと、魔術士の上位はいくつか知ってますよ」
「流石だな。じゃあ、それってどんな条件なの?」
「皆が必ずしもそうだとは言えないんですが、沢山の実戦を経験して、一人で数十匹のモンスターを狩れる程度の実力があれば、上位に就くことが出来ると言われています」
一人で数十匹か。ミリアの火力は既にその域に達しているはずだ。それなのに、まだ就けないということは、やはり一定以上のレベルが必要なのだろう。
沢山のモンスターが狩れるということは、それだけ火力やMPがあるということなのだから、当然レベルが関係してくるだろう。
「今まで上位になった人のレベルってどのくらいだったか、記録とか残ってないの?」
「あることにはあります。私が魔法の練習をしている頃に聞いた話では、魔術士は36レベルで魔導士になった人が最短だそうです」
「36か……」
「すごいですよね! それも、魔族らしいです! 私も成れたらなぁ……」
36ということは、30か35が条件である可能性がある。まだまだ先だが、その頃にもう一度確認してみよう。
「剣士とか戦士はどうなの?」
「今剣聖と呼ばれている人が、当時24歳という若さで、騎士に成れたそうです。確か33レベルだったと思います」
「へぇ。最年少騎士か。俺も目指してみようかな」
「あはは、剣聖ですよ? 魔法を使うタカシさんが成れるわけないじゃないですか」
なにこれ、俺ナメられてるの? それとも、魔法使いは剣の道には進めないの? だったらジョブの概念が崩れるぞ?
まぁ、いいか……どうせ俺は既に28歳だし、成れないからな。でも、これでレベル35という説が無くなったわけだ。恐らく上位の条件はレベル30なのだろう。案外早く上位になれそうだな。
「ミリアは、最速で魔導士になれるように頑張ろう!」
「わ、私は、その、素質がなかったので……」
「大丈夫。俺が付いてるから!」
「憧れているので、頑張りはしますけど、才能が無いので自信が……」
つい最近魔術士になったばかりだからな。そう自分を卑下するのも分かる。でも、30で上位になれるだろう。俺がそうするし。
「俺に任せなさい!」
「えぇー……不安です」
「俺が今まで、ミリアに嘘吐いたことある?」
「ありますよ! 彼氏だとか!」
あぁ、あったな。ごめん。折角ドヤったのに。
「じゃあ、嘘じゃなくなるように、付き合えば良いんだよ! そうだ! そうしよう!」
「ま、まま、まだ! 早いです!」
「そうかな? もうお互い裸も見てる仲なんだし、別に早くもない気がするけど?」
「あれは! タカシさんが勝手に見ただけじゃないですか! 私は許可してないです!」
そうだった。確かにミリアに意識はなかったな。そう考えると、何かいけない事をした気がして……こう……興奮するな!
「キスもしたし?」
「あ、あれも! タカシさんが勝手に……もういいです。恥ずかしい……」
ミリアからもしてくれたのは間違いないんだがな。それを思い出したのだろうか、恥ずかしがっている。
からかうのはここらへんにしておくか……。
「分かった。じゃあ、彼氏(仮)ってことで」
「はぁ……もう、何でも良いです」
よし、仮でも十分だ。後はゆっくり仲良くなっていこう。ひとまずジョブの話はこれで終わりだ。
「ミリア」
「な、何ですか。いきなり真面目になって……」
「また、大事な話をする。驚かないでね?」
「わ、わかりました」
「秘密の話だから、こっちに来て。くれぐれも静かにね?」
テーブルの向かいに座っていたミリアを俺の隣に呼ぶ。
これで小声で話せば店内には聞こえないだろう。
「さっきも言ったように、俺の中でミリアはもう特別な存在になってるんだよ。裸の付き合いもしたし、キスもしたし」
「ぜんぶ……私の意志は関係なく勝手にされたことですけど……」
「それでもだよ。そんなことになっているのに、ミリアはまだ俺の傍に居てくれているでしょ?」
「それは……その」
普通なら意識を失っている間に全身余すことろなく勝手に洗われたり、何度もキスされたりしたら、嫌われるだろう。
俺は欲を満たす為に、それ覚悟でやってたのはあるけど。
「ミリアを多分、魔導士にしてあげることができそうなんだ」
「ええええ!?」
はい、きた。いただきます。
「んぅ! んんんぅっ!」
約束を破った罰です。
ミリアからは、さっき食べた食事のソースの味がしました。
ごちそうさまです。
「ちょっとー? ミリアちゃーん。他にお客さんが居ないからって店内でそういうことはしないでねー?」
「ご、ごめんなさい。うぅ……もうやだ……」
「静かにって言ったでしょ?」
人前でキスはされるし、お姉さんにも俺にも怒られるし、ミリアが赤ミリアならぬ、黒ミリアになりそうだ。
「それで、ミリアに恩恵を与えることができそうだから、どんな風に成長していきたいか、一度聞いておこうと思ってね」
「もう! そういうのは人前でしないでください!」
「人前じゃなければ良いんだ?」
「いえ……そういうわけでは……」
よし、今日寝る時にでもおやすみのキスをお願いしてみよう。どうせ同じベッドで寝るんだし。
「まぁ、それは夜考えるとして、やっぱり魔力特化で色々な魔法を使いたい?」
「夜!? え、あぁ、はい。そうですね。沢山の魔法を使ってみたいです」
「そっか。それじゃあ、ミリアに力を分ける時にそうなるように、俺も祈っておくよ」
「は、はい。そんな簡単なものじゃないと思いますが、ありがとうございます」
ミリアは魔力か。俺はどうするかなぁ。
今まで色々なジョブを付けたり外したりして計算した結果、MPを上げるには、INTとDEXを上げる必要があるみたいなんだよな。
あと、全てのステータスにCHAが関係しているのは分かった。しかも加算じゃなくて乗算のようだ。
それで計算すると、何の能力を上げるにしてもCHAにポイントを全部振るのが正解になる。
そんなに簡単な話なのか? それだと他のステータスの存在価値が無くなってしまう。
でも、現状でCHAにポイントを使うだけで、全てのステータスが上昇するのは確実だ。
折角神眼を覚えたんだ。試しにやってみよう。
「ミリア。今から力を分けてみるから、ちょっと目を瞑って」
「え!? 今ですか!? 夜にしましょうよ? 見られてますし」
ちっ! 俺とミリアがキスしそうなくらい顔を近づけて小声で喋っているのをお姉さんが興味津々に見ている。邪魔だな。
「分かったよ。夜なら良いってことだね。ミリアから誘ってくれたんだ、楽しみにしているよ」
「何をですか!?」
「そりゃあもう……小声で、夜にしましょう? なんて言うくらいなんだから、あんなことやこんなことでしょ?」
「だ、ダメ! 無し! 今の無しです! そういう意味じゃないです!」
わたわたしているミリアを置いて、お姉さんにお会計をお願いする。
「あら? もう愛の囁きは良いの? えっと、31銀お願いね」
「はい。ミリアが色気のある声で、続きは夜にしましょう? って誘ってくれたので」
「あらあら、ミリアちゃんも、そういうお年頃になったのねぇー。まだ早過ぎる気はしないこともないけど」
「ちょ、ちが! しないです! そういうことしないです! そういう意味じゃないですから!」
「そういうことってどういうことかしらー?」
お姉さんもイケるクチだな。ミリアのイジめ方が分かってる。ただ単にミリアが分かり易いだけっていうのもあるが。
ミリアもそろそろ限界のようだ。ショートする前に回収しておこう。
「そりゃあもう、男と女が夜、ベッドの上でする事と言えば分かるでしょ? そういうわけで、俺等はそろそろ用意があるので行きますね」
「きゃああ! 何言ってるんですか! しないです!」
「ごちそうさまでした! とても美味しかったです。またミリアと来ますね」
「いえいえ、こちらこそ。ラブラブ成分ごちそうさまでした。また来てねー?」
軽い挨拶をして、外に出る時後ろから、あらあら。これは皆にお知らせしておかなきゃ……という不吉な言葉が聞こえてきた。
テンパっているミリアには聞こえていなかったようなので、そっとしておいてあげよう。
「ラブラブ、夜、男、女、ベッド、あぅあぁ、ベッド、あぅあ」
ミリアは完全に一人の世界に入っている。ショート寸前だな。
「おーい。そろそろ狩りを再開するよ? ミーリーアー!」
「ベッドで再開!? 何をですか!」
「ミリアの頭の中で、俺とミリアがセックスしているのは分かったから、次のモンスターは何処に居るの?」
「せっせせえ、せっせせっせっ!」
だめだこれは。完全にショートしかかってる。
「ほら、おいで!」
「だめですだめです!」
おんぶしようとしたけど、拒否られた。
仕方ない。お姫様抱っこだな。
「はわわ、ベベベ、ベッドだめです!」
抱っこされたまま、まだベッドベッド言ってる。
そのまま門まで行き、カッシュに出会う。
「何をしているんだ? お前たちは」
「えっと、ちょっとこの子考え事してて、一人の世界に入ってしまっているので、運んでいるんです」
「ふむ。往来であまり不埒なマネはするんじゃないぞ?」
「それはもちろんですよ」
ミリアが突然目を見開いて、不埒!? とか反応したので、カッシュが一瞬ビクっとしたが、放置しておこう。
ミリアの瞼をそっと閉じてあげる。
「えっと、ごめんなさい。この子は放置してください。それで、ハーピーってどこら辺に居るんですか?」
「あ、あぁ。ハーピーか。ここを真っ直ぐ行って、川の反対側の森辺りに居るが、そろそろ巣も大きくなる頃だ。危険だから駆け出しであるお前は狩ろうなんて思うなよ?」
「はい。ちょっと見るだけなので、大丈夫です」
「その子にも、あまり無理をさせるんじゃないぞ?」
相変わらず心配ばかりしてくれる良い人だな。ジョークはつまらないけど。
心配してくれた事と、道を教えてくれた事にお礼を言い、そのままハーピーの居るらしき森へと向かう。




