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ステータスマイスター  作者: なめこ汁
第二章
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第12話 酒

 俺とミリアとサラで肩を寄せ合い、何かしていることに対して、ヤキモチを妬いたのかもしれない。

 ファラが俺に寄り掛かってきて、体重を掛けてきた。


「タカシ、ご、はん」

「お、意外に早かったな。それじゃあ行くか」


 少し言葉に元気が無かったので、そのままファラを肩車する。

 これで機嫌を直してくれると良いが……。


「おい、練習は終わりだ。飯の時間だぞ」

「「はい」」

「後は、時間のある時にでもやっておけ。但し、精神力が切れたら危険なので、絶対に一人ではやらないこと」

「「わかりました」」


 四人で家まで戻ると、マリーが出迎えてくれる。


「あ、皆さんおかえりなさいです」

「おう、もう飯が出来たんだって?」

「はい。皆さんお待ちですよ」

「そっか。皆、待たせたな。それじゃあ食べようか」


 本当に皆、席に座って俺達を待っているだけの状態だったので、早々に“いただきます”をして食べ始める。

 皆が食べ始めたところで、アバンが話し掛けてきた。


「タカシ様。今日、皆さんが戦っている姿を見て思ったのですが、どうやら私は何のお役にも立てていないようです……」

「十分助けられていますよ。どうしたんですか、いきなり?」

「ミュウさん等は、こんなにも体が小さいのに、コボルトを一撃で屠っていたではないですか」

「え、えぇ。まぁ、確かにそうですね」

「昨日、私も何度かコボルトと相対したのですが、どうやっても、一撃で倒す事ができませんでした」

「そ、そうです、か……」

「それで、確信したのです。私は、このパーティーの中で最弱なのではないかと……」


 確かにステータス的には最弱だ。

 でも、長い年月鍛錬をしてきただけあり、今までノーダメージで戦っている。それはすごいと思うのだが……。

 いや、最近戦闘を経験したばかりの幼女――ミュウにすら実力が劣ると分かったら落ち込むな。

 そこは流石アバンというところなのだろうか。ショックを受けているのは間違いないようなのだが、卑屈にはなっていない。俺なら間違いなく、卑屈な態度を取ってしまうだろう。

 少し励ましてあげるかな……全て俺のせいだし。


「あ、そうそう。アバンさん。俺、酒を持ってきているんですよ。飯が終わったら一緒に飲みましょう」

「へ? いや、あの、私は姫様の護衛も兼ねておりますので……」

「あいつらは放置で良いです。たまには男同士で飲みましょう」

「最近のお兄ちゃんは、ランの扱いが雑だと思うんだけど!?」

「そうよ、タカシさん? ランはともかく、私までランと同じ扱いというのは納得できないわ」

「ひどいっ!?」


 二人が言い合いを始めたので、神心を使い、サラに話しておく。


――サラ。


「なにかしら?」

「へ? 何かしらってランのセリフなんだけど」

「あ、いや、えっと、違うの。ごめんなさい」

「何さー。あ、ひょっとして……」


 サラのせいで、ランが含み笑いをしながら、俺の方を向く。

 それにつられて、皆がこちらを向く。


――お前のせいで、バレバレじゃねーか……。

――――そ、その、ごごめ、んなさい……。わざとじゃないの! だって、いきなりだったから……。

――はぁ……もう良いよ。それでさ、アバンさんが落ち込んでいるみたいだから、酒飲んで励ましたい。だから、協力してくれ。

――――は、はい……。何をすれば良いかしら?

――二人で飲みたいから、食後、皆と一緒に風呂に入ってスキルの練習をするよう誘導してくれ。

――――分かったわ。


 俺は飯を食べながら、ポーカーフェイスを装って喋っていたが、サラは固まったまま返答をしていたので、バレバレだ。


「ねぇねぇ、お姉ちゃんと何を喋ってたの?」

「うるさい。黙れ。毛を毟るぞ?」

「ひどいっ!?」


 それでも、皆は俺の次の発言を待っているのか、食事を中断してこちらを見たままだ。ファラ以外。


「ま、まぁ、そんなわけで、アバンさん、今日は飲みましょう」

「いえ、ですから……」

「たまには良いじゃない、アバン。このパーティーで、タカシさんの言うことは絶対なのよ」

「姫様……」

「ちょ、お姉ちゃんが裏切った!?」

「うるさいわね、ラン。毛を毟るわよ?」

「お姉ちゃんまで!?」


 ミリアは何かを悟ったのだろう。溜息を吐いて食事を再開した。

 それにつられて、皆も食事を再開する。


「よし、そうと決まれば、マルカ。俺達はあっちの家で飲むから、後でツマミになる物を持ってきてくれないか?」

「ひゃいっ!」

「タカシさん、私達はどうすれば良いですか?」

「たまには俺以外の皆で風呂に入って、後はいつも通り魔法の練習をしておいてくれ。あ、サラも今日はミリアと一緒に居てくれ」

「分かりました」

「えぇ、分かったわ」


 既に察してくれたミリアは、それ以外には何も聞いてこない。

 ミリアは流石だな。惚れる。いや、もう惚れているか。


「私が一人で護衛するよりも、ミリアさん達と一緒に居た方が安全でしょうし、お任せいたします……」

「タカシさんから襲われないよう、しっかり護衛しますね」

「俺はモンスターか!」

「モンスターの方がまだマシです」

「ミリアも言うようになったな。お仕置き、期待しておいてくれ」

「しませんっ!」


 ミリアではなく、サラに話し掛けた事に怒っているのだろうか。それはそれで、嬉しいな。今度たっぷり可愛がってあげよう。


「それじゃあ、食べ終わったら、あっちに行きましょうか」

「えぇ、分かりました」


 何とか説得できたので、早々に飯を終わらせる。

 アバンも食べ終わったようなので、食器を重ねて準備する。


――グイッ!


 そのまま隣の家に移動するために椅子から立ち上がると、何かに服を引っ張られた。

 振り返ると、俺の服を掴んでファラがこちらを見ていた。


「どうしたんだ、ファラ?」

「いく」

「ファラは皆と風呂に入って、魔法の練習をしておいてくれ」

「いく」

「どうしたんだ? 今日のファラは甘えん坊だな」

「そう。甘えん坊だから、いく」

「はぁ……分かったよ。邪魔はするなよ?」

「うん」


 後の事をミリアに任せて、アバンとファラ、三人で移動するが、飲めるような部屋などなかったので、家を少しだけ改造し、飲めるスペースを確保する。


「やはり、タカシ様はすごいですね」

「そう、タカシはすごい」

「おいおい、お前が胸を張ってどうするんだよ」

「あはは、ファラさんはタカシ様が大好きですね」

「そう。大好き。ファラの旦那様だから」


 そういえば、確かに嫁とは言ったが、ミリアもファラも年齢的に結婚などできるのだろうか……まぁ、良いか。

 気持ち良ければ全て良し。ということで、気持ちの良いプニプニを膝の上に乗せておく。


「よし、準備完了。俺が持ってきた酒は、いくつかあるんですが、どれが美味しいですかね」


 酒樽をいくつか出して、アバンに選んでもらう。酒樽と言っても小型の樽で、中身は5リットルまでいかない程度だろう。


「そうですね、私はこの中ではこれが好みですかね」

「じゃあ、これにしましょう」


 コップを三つ用意し、それぞれに氷を入れて、酒を注ぐ。


「アバンさんは、薄めますか?」

「いえ、そのままでお願いします」

「ファラはこれな」

「ん」


 ファラには、氷にシロップを少量入れ、水で薄めて渡しておく。


「それにしても、酒に氷とは……贅沢ですね!」

「クドラングでは、冷やして飲まないんですか?」

「えぇ、基本はそのまま飲みます。氷入りなんて初めてですよ!」

「おお、初体験ですか。それは良かった!」


 氷入りの酒にテンションが上がっているようで、良かった。


「それじゃあ、乾杯!」

「乾杯!」

「ん」


 この世界に来て初めての酒だが、雰囲気に押されてぐっと飲む。


「ぐあぁぁっ! つえぇっ!」

「あはは、これは、そんなに一気に飲む酒ではないですよ」


 少し濁っていたので大丈夫だろうと思ったが、想像以上に強く、度数の高い酒で驚いた。

 味はウイスキーに近いだろうか。匂いが、ウイスキーのそれとは違っていたので、警戒していなかった……。


「これは効きますね」

「えぇ、獣人は強い酒を好みますから」

「俺が持ってきた他の酒も強い感じですか?」

「そうですね。一つだけ、この酒よりも強いのがありましたよ」

「それじゃなくて良かった」

「はっはっは、タカシ様はあまり飲まれないのですか?」

「そうですね……学生、あぁ、若い頃は良く飲みに行きましたが、今は全くですね」


 危ない。普通に飲み会の雰囲気だったので、喋るところだった。

 そこに、ちょうどマルカがおつまみを持ってきてくれた。


「お待ちゃせしました!」

「おう、ありがとうな!」

「ありがとう」


 マルカはそのまま去っていき、おつまみに手を付けたところで、アバンの雰囲気が少し変わる。


「ふぅ……ところで、私と二人でということでしたが、何か相談事でもあるのですか?」

「え、いえ。特にないですよ? 前からアバンさんとは、ゆっくり話がしたかったんですよ」

「はははっ、私もじっくり話してみたかったのですよ?」

「最近は色々立て込んでたので……でも、やっと機会に巡り合えて良かったですよ」

「えぇ、私も同じ気持ちです!」


 初めて会った時から、じっくり話したいとは思っていた。


 色々とミリア達と出会った経緯などを聞かれ、セクハラ等の話で盛り上がり、酒もかなり入ったところで、ランの話になる。


「そういえば、ラン様ですが、何故タカシ様の事を、お兄ちゃんと呼んでいるのですか?」

「あぁ、あれですか。俺がとあるアイテムを入手できるかどうか、負けた方が何でも言う事を聞くという、賭けをしたんですよ」

「それで、ラン様が負けた、と?」

「そうです。それから、俺の事をお兄ちゃんと呼ぶように」

「ラン様は何をさせるつもりだったんでしょうね」

「あいつは、俺を奴隷にしたかったみたいですよ」

「なんとっ!?」


 俺の事をお兄ちゃんと呼ばせるようにしたのも事実だが、性奴隷にしたことはランの為にも黙っておこう。


「それにしても、ラン様もお強くなられた……」

「そうですね。ただバカなのは変わらないですが」


 何かしみじみ語り出したと思ったら、グイグイ酒を飲んでいる。

 そんなに一気に飲む酒ではないと言ったのは誰だよ……。

 それより、ファラが静かだなと思ったら、アバンが飲み干す度に酒を注いでやがる……原因はこいつか!


「しかし、この短期間でどうやってあそこまで強く……タカシ様はどんな魔法を使われたのですか?」

「おい、ファラ、注ぎすぎだ」

「だいじょうぶ、おもしろい」

「何を根拠に大丈夫なんだよ。面白いって何だよ」

「それに、ラン様がまだ小さい頃から見ていた私には分かります。あそこまで強くなられたのには、何かあったに違いありません」


 俺とファラが話している間にも、アバンの語りは続く。もう既に酒が回っているのだろう。目を瞑り、語りモードに入っている。

 これ以上は危ないので、ファラから酒樽を奪い返し、遠ざける。


「それに、サラ様もです。たった一日見なかっただけで、全く別人になっておりました。雰囲気も変わりましたし」


 それは、まぁ、やることをやったからだろう……じゃなくて! 奪い返した酒樽、中身カラじゃねーか!


「マルカやミュウさん、パルさん、パロさん。皆ですよ。今まで、戦いの“た”すら知らなかった彼女達も、突然強くなりました」


 空の酒樽と一緒に、他の酒樽もインベントリに戻そうとしたら、一本無くなっていた。

 ファラの方を見ると、案の定召喚獣が一本持っていて、またアバンに注いでいる。

 ファラには邪魔をするなよと言っておいたはずなのに、こんな事をするとは思わなかった……。


「おい、ファラ。お前なぁ……」

「だーじょぶ、おもしりょい、おもし? くっ……」


 まさか……。


 試しに、ファラの飲んでいたシロップジュースを飲んでみる――やっぱり! これ、酒じゃないか!

 いつ酒を注いだ!?


「突然強くなった、皆さんの共通点は、タカシ様です。彼女達に、一体何をしたのですか? あなたは何者なのですか? マリーさんの言うように、本当に勇者様なのですか?」

「え、ちょっと待っててください。おい、ファラ」

「やっぱり勇者様はファラさんなんですね。ではタカシ様は……」

「いや、そうじゃなくて、おい、ファラ」

「ん。タカシすき。ちゅーして」


 いつファラが勇者になったんだよ。


「皆さんにちゅーしたのですか? 私はまだですが。あぁ……手を付けたから皆さん強くなっ……あ、私には手を出さないのですか」

「あなた男でしょう。それより、飲み過ぎです」


 アバンが、召喚獣の持っていた酒樽で手酌している。


「タカシ、ここごしごし。いつものごしごし」


 ファラが俺の手を掴んで自分の股間に持っていこうとするので、抵抗しておく。


「タカシ様、ごしごしってなんすか。私にもごしごしですか」

「しねーよ!」

「タカシはやく。あ、ちゅーがいい。あ、おっぱいでもいい。あ、やっぱりごしごしがいい。あばんごしごし、くくっ……」

「タカシ様、私しばらくちゅーもごしごしもしてないれす」

「だから、しねーよ!?」


 もうやだ。誰か大人の人呼んできて!


「タカシ様、

「スリープ!」


――ゴッ!


 アバンを指差し、眠らせておく。テーブルに額を打ち付けたが、大丈夫だろう。ごしごしよりマシだ。


「あばん、てーぶる、ごしごし。くふっ」

「お前なぁ……」


 何が面白いのか分からないが、プルプル笑いを堪えているファラを抱っこして、アバンを浮かせながら、個別に用意しておいた部屋に連れていく。

 ベッドに寝かせて、布団を掛ける。念の為、顔を横に向けるが、まぁ大丈夫だろう。


「あばん、ごしごし?」

「いいから黙ってろ」

「あい」


 アバンとは少しアンノウンの事を話そうと思っていたが、邪魔が入ってしまったので仕方がない。また今度だな。

 アバンを寝かせた後、酔っ払い幼女を連れて、家に戻る。


「あ、タカシさん、おかえりなさい」

「お兄ちゃん、おかえ、うわ、酒くさっ!」

「タカシさん、どうでした? アバンとは楽しめたかしら?」

「あぁ、もうファラが勝手に酒を飲んで、めちゃくちゃだったよ。アバンさんは酔いつぶれたから寝かしてきた」

「あばんごしごし、くふふっ」


 まだ言ってやがる……何が面白かったんだよ。それより、アバンにゴシゴシするなよ? するのは俺だけだからな?


「もう、何やってるのファラ……」


 ミリアが水を出してコップに注ぎ、ファラに飲ませる。

 何か、最近のミリア。精神的にいきなり成長し、オカンクラスになっている気がするが……気のせいだろうか。


「俺も、久し振りに酒を飲んで眠たいから、ファラと一緒に寝る。後は任せたぞ」

「たかしはやく! はやくごしごし。あばんもごしごし」

「ゴシゴシを俺以外にしたら、本気で怒るからな?」

「あい」


 返事の変わったファラも可愛いな。

 抱っこしたまま、ベッドに横になる。


 それにしても、明日、アバンの記憶は大丈夫だろうか。

 落ち込んでいたら、また酒にでも誘おう。今度はファラ抜きで。


 ふぅ。酒も入って良い感じに眠い。

 ファラも寝たみたいだし、俺も寝ることにしよう。


「それじゃあミリア。お先な。おやすみ」

「はい、おやすみなさい」


 皆の事はミリアに任せておけば問題ないだろう……おやすみ。

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