全てを切り開き進む魂
蟻の巣が地中にいくつもの部屋があり、それらが互いにトンネルで繋がっていて、地表には小さな穴がある。
部屋には育児室、食料貯蔵室、繁殖室などがあり、女王蟻は巣の奥で卵を産み落としている。
ジャイアントアントも性質は同じであり、トンネルで繋がった部屋が、どこに出るかはほぼ運といっていいだろう。
「うらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
気合一閃、ジャイアントアントの頭部と胴体がわかれる。
【ワーカーアントLv29】
ジャイアントアントの巣に入り4番の道から中に進んで3時間。
すでに戦闘回数30回を数える、あとからあとからゾロゾロと湧き出てくるワーカーアント。
すでに80匹ほどは倒している。
「だーうっとうしい、これだけ後から後から出てこられたらなかなか進まないぞ」
「確かにいい加減うんざりしてきたね~、でもLv上げには丁度いいかも~」
「ですがこれは試験ですからね、やはり他の受験者より多く点数は取っておきたい」
俺、ミア、リックがやくたいもない話をする。
「ですがたしかにこれでは進みがおそいですね」
「ふん、蟻どもなぞ物の数でわないわい、一気にすすんでしまえばいいんじゃ」
「ギリムス、たとえどんなに相手が弱かろうと油断はするな、俺たちの使命はリッツを守りきることだぞ」
「わかっとるわい」
リッツさんレンシュルツ、ギリムスの3人も、なんだかんだで嫌気がさしてきているみたいだ。
「・・・アーサー、だいじょうぶか?・・・」
「ああ、大丈夫だ心配してくれてありがとう」
バルアが体力の少ないアーサーをきずかう。
俺たちは30回目の襲撃を退け、少し休憩を挟んでいるところだ。
探索はなかなか進んでいないようにも感じるが、実際はかなりのハイペースで進んでいる。
理由はPTバランスが取れていて、個人個人がそれぞれにきちんと自分の仕事が出来ているからだ。
前衛を俺、レンシュルツ、ギリムス、バルアの4人で3人が前に出一人が後ろで休息と後方の警戒。
中衛にリッツ、アーサー、リックの魔法隊、そして後方にミアと休息中の前衛1人。
俺はアントの攻撃を素早くかわし、頭の付け根を狙い切り落とす。
バルアは片手のハンドアクスでアントの攻撃を止めもう片方のアクスで甲殻のない関節を狙い攻撃する。レンシュルツとギリムスはそのまま叩き潰している、2人ともかなりLvが高いようだ。
だがここで一番活躍したのが魔法隊の3人だ。
リッツは【太陽の守護】という神聖魔法を使いstrとintを20~30と大幅にアップさせ、その効果のためアーサーの攻撃魔法がかなりのアントたちを葬っている。
そしてリックの得意魔法は障害系魔法だ。
【スタン】【スロウ】【捕縛】【ブライン】など相手の動きを妨害する。
そこにアーサーの【ファイヤーアロー】が炸裂するのだ。
最後にミアは戦闘自体はあまり参加しないが、素早くアント達の奇襲を察知し、俺たちに指示を飛ばしている。
俺たちが戦闘に集中できるのもミアのおかげだ。
「しかし入ってからもう3時間はたつぜ?そろそろどこかにたどり着いてもいいと思うんだがな」
「そうだね~今回の巣は探知魔法で調べた結果、ランクC相当の大きさみたいだし、そろそろ何処かにたどり着いてもおかしくないね」
今回のような中規模、または大規模討伐(モンスターの巣壊滅作戦など)にはランク付けがしてありC、B、Aの順に大きくまたは数が多くなるみたいだ。
休憩を切り上げ少し進むとチャカチャカとアントたちの足音が聞こえてくる、かなりの数だ。
ミアが気配を隠しそっと部屋の様子をのぞくと、そこはどうやら繁殖室だったらしい。
「今回は試験なのでポイントを多く取ることが主眼ですが、やはり害のあるアント達の卵を放置することも出来ませんね」
「そうだな、この部屋の卵を全部潰すぞ」
リッツの意見を俺が受け、判断をくだす。
リッツが【太陽の守護】を唱え、アーサーが魔法の詠唱を開始する。
俺たちはきずかれた時のために2人を守る位置に陣取る。
アーサーの詠唱が終わる、【フレイムストーム】!
広範囲に炎の風が巻き起こる、さすが2分も詠唱と集中に時間をかけるだけはある、かなりの威力だ。
炎が消えた瞬間、俺、バルア、レンシュルツが部屋に飛び込む、炎の竜巻を耐え切ったアーマーアントや範囲の外にいた他の蟻たちを倒していく。
5分後、全てのアントを倒しその間にミアとギリムスがまだ無事な卵を潰していく、そうすると受験カードに大量の得点が入った、全部で77点、倒した蟻が多くても30匹ほどだ。
「どういうことだ?」
俺の疑問にレンシュルツが予想をたてる。
「おそらく繁殖室を潰したためのボーナスなんかじゃないのか?」
とするとボーナス50点てところか?主要な部屋は3つだったはず、これでクイーンも俺たちが倒せばトップ通過もありえるな。
「よっし、このままの勢いで行こうぜ」
俺の言葉に皆が返事を返してくれる、PTってやつもいいもんだな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
薄暗い日の光を全て遮った場所で2人の男が言葉を交わす。
「それでは・・・イズィーはグレーを殺すことは出来たが、自分もダメージが大きいのでこの仕事を下りるということだな?」
「そのようでございます、第一王妃マリネリーゼ様の部屋に忍ばせている耳からの報告でございます」
「そうか、唯一のイレギュラーだったイズィーが退場したか、俺の能力は対象を視認できなければいかないのが唯一の欠点だったからな、影に潜み姿を隠されるのはいただけない、もうよい下がれ」
「はっ」
返事をのこし1人がその場を離れる。
ふんっ、あの女も余計なことをしてくれる。
グレーが護衛についているから滅多な事は無いだろうと思っていたが、まさか暗殺者ごときに遅れを取るとわな、アーサーが死んでしまっては儀式を執り行うことができぬというのに。
「国王といい王妃といい忌々しい」
そう呟き懐から紫の水晶を取り出す、どこか不気味な黒ずみを中心に宿した直径8cmほどの水晶だ。
「ふふ、ふふふふふふ、この水晶さえあれば私は無敵だ。くくくくっアーサーよ少し予定が変わったが、やはりお前の運命は変わることがないようだ。ふふふふふふ、あはははははははは」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「・・・はっ・・・」
バルアの一撃で最後のアーマーアントを倒す。
【アーマーアントLv34】
「ふぅ~もうそろそろ最下層に着くんじゃないか?」
「そうですね、おそらくあと少しでは無いでしょうか」
俺の言葉にリッツさんが答えてくれる。
「まって皆」
ミアが唇に指をあて静かにするように促す、そうするとどこからか戦闘をしている音が聞こえてきた。
これは・・・もう少しで最下層に着くと言うところに激しい戦闘音。
となると誰かがクイーンアントと戦っているのか?これは不味いかもしれない。
「みんな走るぞ」
俺は急いで先頭の音が聞こえるほうに向かう、途中にアーマーアントやワーカーアントの死体が転がっている、間違いない俺たちは一歩遅かったようだ。
穴を抜けるとそこには大きな空間が広がっており、奥にはクイーンアントと思える大きな蟻が15~6人ほどのPTと戦っていた。
「くそっあいつら共闘したのか」
「ん~それはそれで一つの手だからしかたないよね~」
たしかにミアのいうことも間違いではないが、今回の場合手を組んでもクイーンアントの点数がどちらともに入るとは限らないぞ、少しおかしくないか?
「なにか、様子がおかしくありませんか?」
「たしかに、さっきからほとんどの物が防御を捨てて、力任せにクイーンを攻撃しているぞ、あれでは体がもたん」
リッツさんとレンシュルツの言うとおりだ、なんだあの戦い方は、まるで自分の体のことなんて微塵もきにしていないぞ。
「おや?やっときましたか?少々遅かったのでこの人形たちにクイーンを排除してもらっている所でした」
緑のローブを深くかぶり、胸に中ぐらいの紫水晶を首から引っかけている男がそう呟いた。
ゾクゾクとする悪寒が首筋に走る。
なんだ?こいつは、何かやばい、それにいまなんていった?
「人形にクイーンを攻撃さしてるってのはどういう意味だ?」
「ふふふふっもうすぐ分かりますよ、ほら、クイーンの最後です」
男の言葉どうりクイーンが、断末魔を上げて地面に崩れ落ちる。
『ギュルルルルゥゥゥゥ』 ドォォォォォォン!
「では紹介しましょう、私の忠実なる人形たちを!」
パチッンと男が指を鳴らすと、さきほどまでクイーンと戦っていた受験者16名がこちらに振り向く。
「「「「「「「っ!!」」」」」」」
俺たちは一斉に息を呑む。
こちらに振り返った受験者全てが白目を向いて、目、鼻、口、耳から血を垂れ流している。
いやそれだけではない、全身が血で真っ赤にそまっている。
あるものは足を食いちぎられ、あるものは腹から内臓がこぼれだしている。
それでも皆立っている、足や腕が逆のほうに曲がっていても、痛みすら訴えない。
ザッザッザッと後ろから足音が聞こえてくる。
のこりの受験者7名が後ろから現れた、その7名もすべて前の16名と同じだ白目に体中を血で染めている。
「ふふふふふ。どうです?私の人形達は」
「てめー、こいつらにいったい何をしやがった!」
「私の人形になってもらったのですよ、貴方達より早くこの場に来たかったので、少々無理をさせてしまいましたがね、私の命令に忠実に従い全力で蟻どもを殺させましたら全身から血が流れたのですよ」
つまり全身の毛細血管がきれて血が滲み出てきてるのか。
「きさまあああああああぁぁぁぁぁぁぁ」
俺の怒声に男がびくつく、仲間たちはみな何も言わなくても戦闘体制をとり、男を包囲しようとする。
「あはははははは、私の人形はまだいますよー」
パチンッと言う音とともに、一人の男がこちらを襲ってくる。
あれは試験官のAクラス冒険者タージュス、さらに後ろからギルドの職員達がゾロゾロと歩いてくる。
「ふふふお前達も私の人形にしてあげよう、捕まえろっ人形達よ」
一斉に操られた人たちが襲ってくる。
「ちょっちょとこれは無理だよ」
「・・・ミア・・・俺の後ろに隠れて・・・」
「皆さん、諦めてはいけません、太陽神様は諦めない物に光を与えてくださいます」
「あははっこれはきついね【スパイダーネット】もうひとつ【スロウ】」
「スタージュは俺が抑える、ギリムス、リッツをたのんだぞ!」
「まかせとけ、お前さんもぽかするんじゃないぞ!」
「アーサー威力は無くても良い、近ずいてくる奴を吹っ飛ばせ」
「わっわかった・・・・・・・【ウインドボム】」
リックの妨害魔法がギルド職員達を動けなくする。
アーサーの魔法で後方の7名の冒険者を吹っ飛ばす。
レンシュルツがリミッターを外されたタージュスを押さえに行く。
【狼の守人】レンシュルツのタレントが発動する、狼は群れで狩をし群れで女子供を守る。
レンシュルツの周りに10匹の黒狼が現れた、一匹一匹が2mもなる大型の狼だ。
タージュスは操られてまではタレントを使うことが出来ないらしい。
だがリミッターを外されたAクラス冒険者の攻撃力はすさまじい、振るった大剣が壁を粉砕する。
レンシュルツは狼達と連携してタージュスをけん制する、タージュスの動きが単調なのもあり互角の戦いだ。
ミアが痺れ薬を矢に仕込み、16名の冒険者達を射抜いていく。
止まりはしないが効果はある、そこをバルアが殴り飛ばし、または斬り飛ばす。
手加減すればこちらがやられる。
俺とギリムスは魔法隊3人を守り、リッツは【太陽の守護】をみんなにかける。
いける、こいつら力と素早さは上がっているが、動きが単調で読みやすい、なら!
「ギリムス、ここは頼んだ、おれは奴をぶっ殺す!」
「まかされた、いけい!」
俺はローブの男を仕留める為に動き出す。
だが俺たちはこの状況を切り抜けるのに手が一杯で、戦闘に参加せず自分達の血を撒きながら、歩いているギルド職員に気がつかなかった。
「ふふふふふ、あははははははははは、少し遅かったよ、魔法陣は完成した!」
この戦闘に参加しなかった6人のギルド職員は6箇所に小さな魔方陣を血で書いていた。
「【おおっわれらが女神セフォネアよ、麗しき冥府と大地の狭間で揺られし死と豊穣の女神よ、われ捧げる供物をもってお力をお貸しくださいませ】」
魔方陣が繋がりペンタグラムを描く。
【 人 形 へ 妄 執 する者 】タレント発動
《魂を捧げよ、人のこらよ、われは女神セフォネア、死の妻であり豊穣の娘である、捧げよ、捧げよ、捧げよ、捧げよ、捧げよ、捧げよ!!!!》
「うあああああああああああっ」
ミアが倒れる。
「・・・・ぎぃぃ、ぐぅぅうううぅぅ・・・」
バルアが崩れ落ちる。
「・・・・・・・っっっっっ」
リックが白目をむき力なく膝を着く。
「ぐがああああああああああ」
ギリムスも
「・・・・・リッツ・・・・」
レンシュルツも倒れる
「・・・ぐぅぅぅぅ、みなさんあきらめては駄目です・・・アトゥラムさま、どうかお力を!」
リッツが最後に倒れながら錫杖に力を注ぎ何かを放つ
「があああああああああああああああああああああああああああああああ」
そして俺も、意識が・・・とぎれる・・・
「い・・・」
「いや・・・・・・」
「いや・・・ン・・に・・で」
「いやだ、ジン一人にしないで!」
アーサーの声が聞こえる・・・だけどもう力が・・・<ドクン>
<ドクン> <ドクン> <ドクン>
剣がリッツの放った光を吸い込む、<ドクン> <ドクン>
剣が俺に語りかける、言葉としてではなく、魂と魂のつながりを持って、これでいいのかと。
お前はここで終わるのかと、仲間を一人残し、全てを諦め、死に逝く仲間の魂を救わずに。
・・・・・・・・・・・・それでいいのか?・・・・・・・・・・・・・
[いいわけ・・・ないだ・・・ろうがあああああああああああああああ]
なら示せ、お前の生き様を。
【お前は何者だ】
[俺は人だ、泣いて傷つき、笑って喜び、怒って悲しむ]
【お前は何を望む】
[全てからの自由、それに伴う責任、どこまでも終わらぬ果て]
【お前は何を捨てる】
[諦めを、弱音を、絶望を、]
【それは棘の道にして終わらぬ戦いの日々】
[上等だ、何処までも昇って行ってやる!!]
【ならば見せてみろお前の魂を】
[おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!]
意識が澄み渡るさっきまでうるさく響いた女神とやらの声も消える。
【全てを切り開き進む魂】タレント発動
「ジ・・・ン・・・・」
「すまねーなアーサー、少し待ってろ、すぐにかたずける。」
ローブの男が俺を驚愕の顔で見つめる。
「ばっ馬鹿な・・・私達人の子は神には逆らえないのだぞ?なのになぜ貴様魂が囚われないのだ!」
剣が俺に囁きかける我に名をつけよと、名前、そう思ったときに白銀の刀が頭に浮かぶ。
「白銀お前の名前は白銀だ」
剣が応える、革の鞘が漆塗りの黒鞘に、剣が白銀の刀に変わる、俺には分かる、これが【ランクアップ】
俺は刀を正眼に構える、ローブの男は危険を察知したのだろう、操られた人たちを盾にする。
だが俺はそれをものともしない、摺足で動く、単調な動きの人形に触れさしもしない、体が軽い、力が漲っている、男は絶叫しながら逃げ出す。
一閃
銀の閃きが男を両断する、その瞬間操られていた人たちは、まさに人形のように崩れ落ちるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「うああああああああああああああああ!」
はぁはぁと荒い息を一人の男がつく、銀髪に翡翠の瞳、顔は端整だがどこか歪んだ印象を感じる。
男がいるのはオストライト王国第一王子の部屋、男の名はへりオット・キリアスア・オストライト、オストライト第一王子だ。
「何なんだ、何なんだあいつは!なぜ神の呪縛を抜け出せたのだ!!」
髪を掻き毟り、発狂したように叫ぶ。
「このままでは水晶を取り上げられてしまう、神の力がなくなってしまう!」
まだだ、まだ時間はある、グレーは死んだ、そうだグレーが死に、行く場所無いあいつは戻ってくるはずだ、ならば・・・・
「は・・ははは・・・はははははは、そうだ、最後に勝てばいいのだ・・・最後に勝てば!」
テーブルの上には中心が黒ずんだ紫の水晶が怪しく光っていた・・・
【白銀】
【38】Lv
【36】str
【37】vit
【33】dex
【30】agi
【5 】int
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