逡巡
しかし、格乃進のほうが加速状態での戦いには熟練している。空中で浮かび上がったまま、格乃進は前蹴りによって慣性がついた身体をくるりと回転させた。
頭を下にした逆さまの態勢で拳を突き出し、世之介の胸に叩き込む。
普通なら世之介の全身の骨という骨は一本残らずへし折れ、内臓破裂の衝撃で即死しているはずであった。
格乃進の突きを受け止めた世之介は、手足を大きく広げた態勢で後方に吹き飛んだ。地面に横転して、ごろごろと転がっていく。
格乃進は案じ顔をしている。自分の攻撃が、強すぎたかと懸念しているのだろう。
世之介は身体の回転が止まると、むくりと起き上がった。素早く体勢を整え、身構える。
歓喜に、世之介は吠えるように笑い声を上げる。格乃進の攻撃など、微塵も感じない!
格乃進は、あんぐりと口を開け、叫んだ。
──信じられぬ! あれほどの衝撃を受け止め、しかも平気の平左とは!
助三郎が声を掛ける。
──先ほどの攻撃を解析したところだ。驚くべきことに、あの学生服の生地は、お前の攻撃が当たった瞬間、硬化したぞ! おそらく、世之介さんのあの爆発的な力は、学生服が筋力を倍化させているに違いない。まさしく硬化装甲戦闘服と呼ぶべきだ。
格乃進は唇を噛みしめた。




