摩擦
──うーむ、どれほど打撃を加えれば良いのだ? 俺たちの力を全力で攻撃するわけにはいかぬであろうが……。
助三郎は頭を振った。
──格乃進! 躊躇っている場合ではないぞ! どう考えても、世之介さんの今の状態は普通じゃない。戦いが長引けば、世之介さんの身体にどんな悪い影響が出るか、さっぱり判らん。早めに決着をつけるべきだ!
世之介の胸に、賽博格たちに対する軽蔑の念が湧き上がる。
奴ら、戦士としての適性は欠片も持ち合わせていない! 戦いに必要なのは、躊躇いのない決意だというのに、奴らときたら、相手を傷つけてしまうかもしれない思いに、充分に戦うことすらできないのだ。
だが、自分は違う。
世之介は猛然と賽博格に向けて駆け出す。
が、つるりと地面で滑ってしまう。
なぜだ? 何が自分の身に起きた?
世之介はガクランによって加速状態にある。普段とは違う、猛速度で動くことが可能な状態である。
が、その加速状態は通常とは違い、摩擦係数がひどく少なくなっている。摩擦に必要な時間を経過させないためだ。充分、地面を把握しないと、まるで氷の上に立っているかのように、ツルツル滑ってしまうのだ。
助三郎と格乃進は、地面に身体を投げ出すようにすれすれに傾け、爪先を蹴り出して空中に飛び出す。これが加速状態での、最も効果的な動き方である。




