表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/236

風呂

 番長星で風呂といえば、それは銭湯だった。


【集会所】の近くに、銭湯の建物はあった。どっしりとした瓦屋根、高々と空を突き刺す煙突。【集会所】からは、住人が各々洗面器と入浴道具を携え、続々と集まってくる。

 助三郎と格乃進の姿はなかった。茜と連れ立ってやってきた光右衛門の話によると、賽博格は入浴の必要がないのだそうだ。

 それに、賽博格の身体を他人に見せるのは、かなり厄介な事態を引き起こすとかで、二人は遠慮したのであった。


 イッパチは相変わらず扇子を一本握り、ぺちんと自分の額を叩く。


「そんなもんですかねえ? あっしゃ杏萄絽偉童アンドロイドでげすが、別に、裸を他人に見せるのは恥ずかしくはござんせんよ」


 イッパチの言葉に、茜は眉間に皴を寄せる。


「あたしだって、別に見たかないよ!」

「へっ、これはご挨拶……」

 イッパチは、ギョロリと目を剥き出した。


 番台で世之介はイッパチ、光右衛門とともに男湯に入る。男湯には【集会所】からの客が一斉に湯口に向かって、身体を洗っていた。


 世之介は銭湯は初めてで、どうにも決まりが悪い。早々に身体を洗うと、湯船に浸かることにした。イッパチは嬉々として三助の役目を買って出て、湯口に向かっている男たちの背中を威勢良く流している。

 湯船に浸かり、じっと目を閉じていると、イッパチが入ってきて横に並んだ。


「若旦那、ちょいとお話が……」

「なんだい?」


 世之介は用心して目を開けた。イッパチの顔はいやに深刻で、こんなとき、とんでもないことを言い出す傾向がある。


「番長星に来るとき、確か格さんは通常空間を亜光速で航行した、と仰いましたね?」

「うん」


 世之介は湯の中で、ぐるりとイッパチに向き直った。


 イッパチの口調は、いつものふざけたものではなかった。何を言い出そうとしているのか。


「確か半光年を亜光速で航行した、と言っていましたから、あれからあっしらは、半年も経ってしまってる、そうでげすな?」

「ああ、そうなるな」


 いよいよイッパチの顔つきは真剣である。


「お忘れですか? 大旦那は、一年以内に童貞を捨てろと仰ったんで。もう、半年が過ぎております。あと半年しか余裕はないんでげすよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ