第五十話 いつもの日常
第三ダンジョンの追加調査から一週間。
探索者庁の正式発表が出た。
東京第三ダンジョン。
正式ランクD。
推奨ランクD以上。
確認階層二十。
十八階層以降はDランク上位相当。
二十階層ではホブゴブリン複数確認。
探索者達の間ではそれなりに話題になった。
新しい稼ぎ場。
新しい攻略対象。
興味を持つ探索者は多い。
ただ、それだけだった。
世界は終わらない。
探索者の日常も変わらない。
今日も誰かが潜る。
今日も誰かが帰ってくる。
それだけだ。
朝。
東京第五ダンジョン管理棟。
自動ドアを抜ける。
見慣れた景色。
見慣れた受付。
「おはようございます、佐伯さん。」
榎本ありさが笑う。
「おはよう。」
「今日は第五なんですね。」
「ああ。」
「依頼が無い日は大体ここだ。」
認識票を差し出す。
ありさが端末を操作する。
「第三ダンジョン、正式にDランクになりましたね。」
「らしいな。」
「ホブゴブリンが複数確認されたって聞きました。」
「二体だった。」
「十分多いですよ。」
ありさが苦笑する。
「最近はどこのダンジョンも少しずつ変わってきましたね。」
「そうだな。」
「忙しくなりそうです。」
「探索者だからな。」
ありさが認識票を返す。
「でも、佐伯さんなら大丈夫な気がします。」
「買い被りすぎだ。」
「そうですか?」
「俺は普通の探索者だ。」
「普通の探索者は第三の調査にも行きませんし、昇格試験の手伝いもしません。」
「たまたまだ。」
「またそれですか。」
二人で笑う。
「行ってらっしゃい。」
「ああ。」
転移陣へ向かう。
途中で見覚えのある顔とすれ違った。
「佐伯さん!」
神谷だった。
胸の認識票はDランク。
装備も少し新しくなっている。
「第六はどうだ?」
「大変です。」
「でも面白いですよ。」
「そうか。」
「佐伯さんも来てくださいよ。」
「気が向いたらな。」
「絶対来ない言い方ですね、それ。」
神谷が笑う。
「まあ、生きて帰れ。」
「はい!」
神谷は仲間のところへ走っていく。
その背中を見送る。
探索者は増える。
辞める奴もいる。
消える奴もいる。
それでもまた新しい探索者が現れる。
昔から変わらない。
たぶんこれからも変わらない。
転移陣の前で立ち止まる。
ロングソード。
ダガー。
ポーション。
認識票。
問題ない。
転移陣が光る。
視界が白く染まる。
その先に何があるのかは分からない。
新しい依頼かもしれない。
知らないダンジョンかもしれない。
面倒な仕事かもしれない。
それでも。
探索者の仕事は昔から変わらない。
潜る。
帰る。
また潜る。
それだけだ。
俺は今日もダンジョンへ潜る。
一旦ここでこのお話は終了します。
長い間、駄文にお付き合いいただきありがとうございました。




