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31歳中堅探索者、今日も潜る  作者: 上畑 優平
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第五話 調査協力

 翌日の午前九時。

 東京第三ダンジョン管理棟の会議室には、俺と高瀬の他に三人の職員が集まっていた。

 昨日見かけたことのない顔ばかりだ。

 五十代くらいの男性は第三管理課の課長らしく、隣には調査担当の職員、その向かいには記録係と思われる若い女性が座っている。

 机の上には東京第三ダンジョンの地図と、昨日提出した異常報告の資料が並べられていた。

「昨日確認された異常個体はレッドスライム一体、ゴブリン二体です」

 課長の村瀬が資料を見ながら話し始めた。

「東京第三ダンジョンは利用者が多く、初心者講習でも使われています。現時点では閉鎖する予定はありません」

「講習で使ってる場所ですからね」

 高瀬が苦笑する。

「講習日程もありますし、簡単には閉鎖できません」

「それで俺を呼んだのか?」

「はい」

 村瀬は頷いた。

「佐伯さんは東京第三ダンジョンに長年潜っています」

「十階層までの地形も把握していますし、昨日の戦闘記録を見る限り、戦闘能力も十分です」

「調査に協力していただけないでしょうか、お伝えしたかもしれませんが日当は二十万円で」

「了解しました」

 即答すると、高瀬が呆れた顔をした。

 村瀬は咳払いをする。

「今日の目的は十階層の再確認です。ゴブリンが出現した採掘跡を調べ、異常魔素濃度や新たな魔物が確認された場合は撤退してください」

「無理はしない」

「それが条件です」

「了解」

 打ち合わせを終えた俺たちは装備を整えた。

 ロングソード、ダガー二本、革鎧、ポーション三本。

 いつもの装備だ。

 高瀬も昨日と同じ軽装だった。

 革鎧の上に探索者庁のジャケットを羽織り、腰にはショートソードを提げている。

「探索者庁の職員って、みんな潜れるのか?」

「最低限ですね、戦闘職じゃないので、Eランクくらいが限界です」

「十分だろ」

「佐伯さんはCランクですよね」

「ソロだからCランクダンジョンの深層はきつい、浅い階層なら何度も経験はあるがな」

「上には上がいます」

「謙遜じゃなくて本当に十分だと思ってる」

 入場ゲートを通る。

 制御環のランプが赤く変わり、身体が少し軽くなった。

 第一階層から第十階層までは順調だった。

 スライム、ラット、ホーンラビット。

 出現する魔物はいつもと変わらない。

 新人講習の一団ともすれ違った。

 昨日の異変を知らないのか、楽しそうに会話している。

 十階層へ到着する。

 採掘跡の小部屋。

 ゴブリンと戦った場所だ。

 高瀬は端末を取り出し、周囲を測定し始めた。

「魔素濃度は正常です、崩落もない、異常魔力反応もありません」

「結局、原因不明か」

「そうなりますね」

 高瀬は壁際へ歩いていく。

 俺も何気なく視線を向けた。

 昨日見た時には気づかなかった。

 採掘跡の一番奥。

 崩れた岩の隙間から、かすかに冷たい風が流れている。

「……高瀬」

「何ですか?」

「あそこ」

 高瀬は俺の視線を追った。

 崩落跡の向こう。

 わずかな隙間。

 しかし、その先には確かに空間が続いているようだった。

「昨日、こんなのありました?」

「いや」

「少なくとも俺は見てない」

 高瀬は無線機を手に取った。

「課長!報告です。東京第三ダンジョン十階層採掘跡に未確認の空間を発見しました」

 返事が来るまでの数秒が妙に長く感じた。

「許可は出ました、確認だけなら進んでいいそうです。本当は帰りたいんですけど」

「俺もだ、でも二十万円貰ってるしな」

「……働いてください」

 俺はロングソードを抜いた。

 目の前に道があるなら進むしかない。

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