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目は口ほどに  作者: とこ
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アイスクリームを作ろう1(おまけの様な話)

 半袖になった制服。

 窓の外でギラギラと自身を主張する太陽に、室内だというのに額に汗が滲む。

 周りの生徒たちは教師の話を聞きながらもどこかソワソワと色めき立っている。


 明日から夏季休暇だ。



 放課後、カロイドとウィステリア嬢と共に生徒会室に向かえば既にクリア卿がそこにいた。


「ごめん、待たせたかな?」

「いや、僕もさっき来たところだよ」


 俺が謝ればクリア卿は首を横に振る。

 この数か月ですっかり打ち解けた俺たちは、他の人が居ない時に限り、敬語を使わない仲になっていた。


「それにしても、今日は生徒会の集まりは無い筈ですわよね…?殿下はどうして私たちだけを集めたんですの?」

「今日は、1学期の間生徒会の仕事を頑張ってくれた3人におもてなしをしようかと思って」


 おもてなし?と頭の上にハテナを浮かべる三人を残し一度生徒会室を出て、俺はある物を持って生徒会室へと戻る。

 ちなみにウィステリア嬢は敬語を使わない方が疲れるというのでそのままだ。


「それは何?」

「卵と砂糖と生クリームと、これから使う器具達だよ」

「器具…それで、何をするんだ?」

「アイスクリームを作るんだよ」


 俺が机に材料を並べながらそういうと、三人は驚きの声を上げた。

 それもそのはず、今この世界は氷を手軽に作れる時代ではなく、全て冬の間にできたものや寒い地方から態々取り寄せているのだ。

 一応、氷に塩をかけると0度以下になるという発見はされているのでアイスクリームという物自体は広まってはいるが、そのアイスクリームを作る過程でやはりたくさんの氷が必要になる。

 貴族とはいえど早々口にできる代物ではない。


 しかし、学園入学前にイマルジェ先生のもと氷魔法を取得した俺は魔力が続く限り氷を生み出せるようになったし、練習の結果、氷魔法を身に着けた当初よりも少量の魔力で沢山の氷が作れるように立った。…だけではとどまらず、もう一段階上の、既にある物体を凍らせる、という技術も身に着けたのだ。


「それじゃ、折角だからみんなで作ろう。エプロンも用意したし」

「あら、公爵令嬢である私に料理をさせようだなんて…」


 そう言いながらもウィステリア嬢は早速エプロンを手に取った。

 やる気満々だ。


「僕も料理はしたことがないんだけど…大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。そんな難しいことは無いから」

「俺は何をしたらいい?」

「カロイドは一番料理に手慣れているだろうから、卵を割ってこのボウルに入れてくれ」

「了解」


 カロイドは頷くと片手で器用に卵をボウルに割入れた。何を隠そうこの男、たまに俺にお菓子や料理を作ってふるまってくれるのだ。カロイドと書いて知識欲と読めるほど勤勉なこいつは、好きに沢山の事を学べるこの生活の中で料理とお菓子作りに目覚めたらしい。


「ウィステリア嬢はカロイドが卵を割ってる間に生クリームに砂糖を入れて軽く混ぜてくれる?」

「お任せください」


 ウィステリア嬢は俺が渡した生クリームにあらかじめ計量されている生クリームを入れると慣れないながらも丁寧に混ぜ始める。


「ラージ、卵全部割れたぜ」


 その慣れた手つきで次々と卵を割っていたカロイドはあっという間に卵を全て割り終えてしまった。


「お、早いな。そしたらクリアは、その卵が入ったボウルにこの砂糖を入れてもったりするまで混ぜて」

「もったりってどれくらいかな?」

「うーん、ちょっと重たくなるくらい?これくらいかな?って時に声をかけてくれたら俺が確認するよ」


 クリアはカロイドから受け取った卵にこちらもあらかじめ計量された砂糖を加え、混ぜ始めた。


「で、手が空いたカロイドはウィステリア嬢が混ぜてる生クリームを泡立ててね」

「どのくらいまで泡立てればいい?」

「ホイッパーを持ち上げた時、クリームがトロトロ落ちてくくらいかな」

「分かった」

「あら、このまま私が混ぜますわよ?」


 カロイドが生クリームの入ったボウルを受け取りにいくと、丁寧にくるくると生クリームを混ぜていたウィステリア嬢が反応する。


「いや、生クリームを泡立てる作業は結構大変だからね。体力のあるカロイドにやってもらおう。その間にウィステリア嬢は俺を手伝ってくれるかな?」

「そういうことでしたら…。承知いたしましたわ」


 少し残念そうにウィステリア嬢はボウルをカロイドに受け渡した。


「で、私達は何をいたしますの?」

「んーと、あ、ちょっと待ってね」


 俺はウィステリア嬢に待ったをかけて、生クリームの入ったボウルより少し大きめのボウルを持ってカロイドの元に戻る。


「ん、どうした?」

「いや、生クリームは冷やした方が泡立ちやすいからさ」


 そう言いながら、手に持ったボウルに氷魔法でガラガラと小粒の氷を出してカロイドに渡した。俺が氷を出すことに慣れているカロイドは、助かる、といって氷の上に生クリームのボウルを重ねてまた泡立ての作業に戻った。


「驚きましたわ。殿下は氷魔法が使えますのね…だから、夏の学園の中でアイスクリームを作る、なんて考えたのですね?」

「僕も驚いたよ。アイスクリームを作るって聞いたとき、学園内にそんなに氷を保存して置けるところなんてあったかなって不思議だったんだけど、ミラージルが氷を出すってことだったんだね」

「まぁ、そんな感じだよ」


 俺が氷を出したことに驚いた二人だったが、おかげで俺がなぜこんな真夏の学園の中でアイスクリームを作るなんて言い出したのか分かったようだ。

 まあ実際は直接氷魔法で冷やすのだけど、俺が対物を凍らせられる程氷魔法を熟練していると知らない二人は俺が氷をだしてアイスクリームを作るのだと思ったらしい。

 実際凍らせる時に驚かせたいのであえて否定はしない。

お読みいただきありがとうございます。

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