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目は口ほどに  作者: とこ
24/28

留学生

抜けている文が一部あったので修正いたしました。(2021/5/7)

 俺とウィステリア嬢の不仲説は俺が彼女の推薦者となることが知らされるとすぐに収束を見せた。元々数人が密かに噂していたにすぎなかったので収まるのも早いのだろうとウィステリア嬢は笑っていた。

 

 そんな彼女は無事、生徒会の会計係に任命され、俺とカロイドも生徒会の会長、副会長へと就任した。最近は前役員の方から引継ぎを受けつつなんとか仕事をこなしており、今日もその真っ最中だ。

 

 俺達が机に向かい、各書類の整理をしているとガチャリと生徒会室のドアが開いた。

 

「すみません。おくれました」

 

 入ってきたその男はペコリと頭を下げると自身の席へと座った。

 

「コンタット様、遅かったですわね?」

「すみません。何分僕は留学生なので、先生に呼ばれることが多くて」

 

 ウィステリア嬢からの言葉に男はそう言って苦笑した。

 

 ゲームをプレイしていた時には舞台がノワール王国だということもあり、フォードリア帝国はルージュリアの断罪後、彼女を追放する国、程度の認識だったので驚いたのだが、どうやらノワール王国とフォードリア帝国は比較的良好な関係にあり、毎年お互いの学園に通う二年生から一名を選抜し、交換留学を行っていたのだ。

 選抜条件は、「成績が良いこと」「魔力の保有量が高いこと」「一年次生徒会の役員を務めていたこと」

 そして栄えある今年の交換留学生として選ばれたのが、彼。クリア・コンタット。

 

 俺は事前に留学生の情報を書面で確認させてもらったのだが、初めてその名前と書面に添えられた姿絵を見た時驚いた。

 

 その姿は、ゲーム内の攻略対象である、クルール・コンタットにそっくりだったのだ。

 

 

 クルール・コンタット。

 ノワール王国の宰相を務めるコンタット侯爵家の次男として生まれた彼は、2歳上の兄よりも才能があるにもかかわらず、次男というだけで家督が継げず、次期宰相となることもできない事で自棄になってしまっている、という設定のキャラクターだった。

 

 そんな彼をヒロインが励まし、クルールルートを選べば光魔法に適性を持った、癒しの乙女であるヒロインと結婚し、後ろ盾を得たうえで父親に直談判し、家督を継ぐ者として、そして宰相として、どちらが相応しいか兄と勝負する機会を得る。このゲームにはバッドエンドは存在せず、ノーマルエンドではクルールは兄に負けてしまうものの持ち前の賢さで店を起こしヒロインと幸せに暮らし、ハッピーエンドでは見事兄に打ち勝ち宰相の座を手に入れる。

 ちなみに、どちらに転んでもルージュリアはミラージルに嫁いでいく。

 本筋のストーリー自体は良く考えて構成されており、各ルートにも厚みがあったのにルージュリアの扱いだけ雑だ。制作陣はルージュリアにどんな恨みがあったのか。

 

 閑話休題

 

 クリア・コンタットの姿絵を見た時、驚きと共に思い出したのだ。

 そういえば、クルールとヒロインの会話の中で一度だけ、双子の弟についての話がでてきたな、と。

 

 出てきた、とはいっても名前やその姿が出てきた訳ではなく、ヒロインがクルールの家族について聞いたとき、クルールが双子の弟がいるが他の国に留学している、と話していただけなので、どんな人物か、どこに留学しているのかは知らなかったのだが。

 

 実際(クリア卿)と話していると、その聡明さが良く分かった。

 

「留学生は何かと大変ですもんね。何か困ったことがあったらいつでも声をかけてくださいね」

「ありがとうございます。なにかあった時は甘えさせていただきます」

 

 ウィステリア嬢と話す彼に声をかければ彼は自身の少し吊り上がった眼を細め頷いた。

 

「唯でさえ魔法の有無で文化が違いますのに、その上で副会長の仕事もこなすなんて…何かございましたら私にもお声かけくださいませね?」

「あはは、副会長と言っても、カロイド君に頼りっぱなしなので僕自体は簡単な事しかしていないですけどね。でも、ウィステリア嬢のお気持ち感謝いたします」

 

 我が学園の生徒会には副会長の席が二つあり、一つは留学生、もう一つは在校生が埋める仕様になっている。

 

 留学生としてくる生徒は先に述べたように皆昨年、自国の生徒会の役員を務めたものなので、生徒会の仕事や行動方針など互いの国での違いを経験してもらうためだ。

 学園は小さな国、生徒会は国で言うところの貴族。

 それぞれの国の在り方が、学園、ひいては生徒会に少なからず影響するのだ。

 

「やはり、我が学園と御国の学園で異なる点などあるんですか?」

 

 書類整理をしていたカロイドが手を止め、二人の会話に混ざる。

 

「そうですね…やはり、授業内容や細かいルールなどはかなり違いますね。ノワール王国ではそれほど魔力が豊富な人はいませんから」

「魔力ですか…でも、ノワール王国でも魔法学の授業はあるのでしょう?」

 

 ウィステリア嬢が興味深そうに尋ねた。

 

「授業自体はありますが、皆使えるのは無属性魔法のみで、属性魔法に適性を持っている人はほんの一握りなので、内容自体はこの学園で学ぶ内容の2割程度です。魔力量も皆少ないですしね」

 

 属性魔法が使える人は、別で家庭教師を雇ってます。とクリア卿は付け加えた。

 

「そうなんですね…そういえば、コンタット様は学園内でも高い魔力量をお持ちと伺いました」

「まぁ…高いといっても、我が国の基準値が低いのでフォードリア帝国の方と比べるとお恥ずかしい量ですが…一応、学園の生徒内では4番目に魔力量が高かったです」

 

 クリア卿は照れたように頬を人差し指でかいた。

 4番目、ということは彼の上に3人いるということだ。俺はそれが誰なのか気になり、今まで書類の処理をしていた手を止め、顔を上げた。

 

「ウォル卿よりも魔力量が高い人ってどんな方ですか?」

 

 暫くの間話に混ざらず、もくもくと仕事をしていた俺が急に話に加わったので三人は少し驚いていた。

 

「王太子殿下と今年入学してきた王太子殿下の婚約者のご令嬢と、その義理の妹君ですね。」

 

 俺は一人首をかしげる。ゲーム内ではヒロインは魔力量が高いということで一目置かれていたが、ルージュリアにそう言った印象はなかったからだ。

 

「なるほど…では、来年の留学生はそのご令嬢のうちのどちらかになる可能性が高いのでわね!」

「うーん。それはどうでしょうね?」

 

 他国のご令嬢と仲良くなれるかも、と嬉しそうに笑ったウィステリア嬢に、クリア卿は苦笑した。

 彼のその表情に、ウィステリア嬢は怪訝そうな顔をする。

 

「あら?どうしてですの?あ、もしかして、生徒会には所属していらっしゃらないのでしょうか?すみません。私ったら、早とちりを…」


 この学園では、基本的に公爵家以上の出身者は生徒会に入るという暗黙の了解の様な物がある。

 その為、ウィステリア嬢は二人共生徒会の役員であると考え話を進めていたのだがクリア卿の答えに、自身の考えが誤っていたのかと思い謝罪をした。


 しかしクリア卿は首を横に振る。


「いえ、お二人共生徒会の役員になったと伺っております」


 確かにゲーム内でも二人は生徒会の役員だった。

 生徒会の仕事をする中で仲が深まる攻略対象もいる。ちなみにルージュリアは生徒会に名前だけ連ね、仕事は一切せずヒロインに押し付けているという設定だった。


 彼の答えにウィステリア嬢はではなぜ、と眉を顰めた。


「では、もしかして、お二人とも成績がよろしくないのでしょうか…?」

「…お二人とも成績は悪くはありません。むしろ皇太子殿下のご婚約者は成績上位者でいらっしゃるのですが…何分、素行が悪いと噂されておりまして…」

 

 クリア卿は少し言いづらそうに視線を下げる。

 すると、俺とブロジットの契約を知っているカロイドは今の話を聞いて王太子の婚約者=俺の将来の婚約者、と気が付いたようでその話に食いついた。

 

「素行不良ですか…。コンタット様はそのご婚約者様とお会いしたことはあるんですか?」

「はい。一度だけパーティーでお見かけしたことはあるのですが…不思議と僕はそう言った印象は抱かなかったですね。むしろ妹君の方が…いや、僕はその日体調があまり優れず、途中で帰ってしまったので、僕が帰った後で何かあったのかもしれないですね」

 

 クリア卿は話の途中、何かを誤魔化すように首を振ったが、すぐに言葉を続けてしまったので誤魔化したその先を聞くことは叶わなかった。

 

「それは不思議ですわね。大体素行を噂されるご令嬢は、パーティーの最初から最後まで大胆な行動をされるものなのに…。私、噂はあまり信じないタイプですので、一度そのご令嬢とお話ししてみたいですわ」

 

 不思議そうに首を傾げた後、ウィステリア嬢はほほほ、と淑やかに笑った。

お読みいただきありがとうございます。

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