観察眼
10本ずつの飲料をむりやり詰めた2袋ずつ合計4袋を重い思いで引き釣りながら白縞と市島はロッカールームに再度の入室。
中ではマネージャー八雲がこれからのスケジュールをロケッツナインに事細かく説明していた。
「まず各々軽い調整で体をほぐしてもらいます……終わり次第順次解散で、明日の集合時間は……」
肝心の青銅は説明も聞く様子なくパイプ椅子に座りながらスマホゲームに熱中している。
「青銅先輩!!」
白縞のよくとおる声に反応した青銅は顔を上げるが、二人が下げるパンパンなビニール袋にさしたる反応を示さない。
説明しつつ八雲はチラチラ白縞らを気にする。いっぱいなビニール袋をみて一瞬だけぎょっとする。
どうやら八雲は白縞らの意図 〜すべての飲料を購入し青銅に選ばせる〜 に気づいたようだ。
「さあ青銅先輩……この中から……」
白縞と市島がじりじり距離を詰めようとすると、青銅は先回りし、
「白縞くん、市島くん……なにもここまで持って来てくれんでもいい。遠慮せずに投げていいよ……“オレが今欲しい一本をセレクトして投げてくれたまえ”……」
うまく白縞らの攻撃を交わす。
これにて白縞は青銅自らに選ばさせる戦法を封じ込まれたことになる。市島はもうダメだと覚悟を決めたのか目をつぶって下を向いている。
それでも白縞はめげない。想定の範囲内だったようで次なる攻撃パターンを披露する。
置いた2つの中から適当に抽出したのは、ブラックの缶コーヒーだ。
白縞は缶コーヒーを持って投げるフリをする。青銅はそれでも表情一つ変えず左手に持つスマホを傾け、右手で缶コーヒーをキャッチする手の形を作る。
「……」
ロッカールームに異様な緊張感が充満する。八雲は説明するのを辞めて白縞をじっと見ている。白縞は八雲を横目でちらり。八雲は表情に出さないように必死だが、それでも口元が緩んでしまう。
そのかすかな笑みを “ざまあ……お前らもオレの二の舞になりやがれ” と読み取った白縞は缶コーヒーを青銅でなく、すぐ近くにいた茂木に手渡しする。
「茂木さん……ブラック派でしたよね?」
「ああ……さ、サンキュー……」
思わぬ八雲の反応のおかげで白縞は選択ミスから逃れたが、これをあと最大38回繰り返すのは精神的に辛すぎる上に、時間がかかりすぎて青銅がブチ切れる危険性もある。
手短に正解に持っていかなければならないが、白縞はどこまでも観察眼が鋭く、運もいいようだ。
青銅が傾けたスマホに映し出されていたゲームは、今流行りの落ち物パズルゲームであることを確認した白縞は市島に、
「イッチー、そっちの袋にレモン味の炭酸飲料あったでしょ? それを僕にくれないか……」
「ああ……」
市島は心配にたまらない表情で言われた通りのレモン味の炭酸飲料を探し白縞に渡す。
「青銅さん……お待たせいたしましたー」
バケツリレーのごとく渡されたペッドボトルを青銅にアンダースロー投法で丁寧に投げ渡した。
“本当にそれでいいのか!? 白縞!?”
ロッカールームの緊張感は頂点に達した。八雲は白縞の底しれぬ自信に圧したのかポカンと口を開けるしかない。
「おお……待ちくたびれたぞー白縞くん」
「それですよね、白縞さんが欲してたのは……」
「違うぜ、このクソガキが……パシリもできんのか……とブチ切れたいところだが……よくわかったな……」
青銅はペッドボトルを開けるその前にボトルの口に張り付いていたシールを剥がす。
「この飲料は今ハマってるスマホゲームとコラボしててね……このシールのQRコードをスマホで読み取ると限定アイテムが入手できるんだよ……さすが、白縞くんだ……佐島スカウトが目をつけただけがある……知らないだろうが、オレを見出してくれたのも佐島スカウトなんだよ……。その佐島さんが言ってた、今度入ってくる新人のなかで白縞ってやつに特に注目しろって……何もできないが何でもできる男……その意味が今わかった気がするよ……」
この作品で初めて頭をひねって書いた




