選択
白縞と市島は急ぎ足でロッカールーム前の自販機コーナーに向かう。
「正解はなんだと思う!? イッチー」
「知るか!! 白縞が威勢よく加勢してきたからてっきりオメーが知ってるとばかり!!」
「同期生として見捨てられなかったんだよ……あとなんだか面白そうーだし。でも考えればわかるよ。青銅さんが僕らに何を望んでいるかが鍵だ。ほんとにただ喉を潤したいのか、それとも僕らを試したいだけなのか……」
「試したいだけだとしたら?!」
二人は約1.9秒で自販機コーナーに到着。怖すぎる先輩のパシリはやはり世界記録をやすやすと更新させる。
「何を持っていっても不正解で切れられるだろうね」
自販機は2台。お茶系、スポーツ飲料、缶コーヒー、果実系、炭酸系、紅茶系とレパートリーは様々でさらに同じ種類でも冷たいものから温かいものまである。
今あったばかりの人間の趣味嗜好を汲み取り、ここから一本を選ぶのはかなりの困難を要する。
「それってつまり…ただのイジメじゃん……高校野球じゃないんから。大人の世界で理不尽な行為は辞めてほしいよ……」
「ただ正解がほんとにある可能性もある!! なら青銅さんがのみたい1本を選ぶしかない。イッチーは青銅さんについてなにか知ってる? 例えば体質改善のため甘いものを控えているとか……」
「いや……選手名鑑に載ってそうなことしか知らない」
「僕もだ……」
白縞はスマホを取り出し、【青銅銀次郎 好きな飲み物】と検索するが、芳しい結果は出ず、思わずため息をつく。
「はあ……」
ポジティブシンキング白縞が絶望しかかかった刹那、バタバタとこちらに向かって走ってくる爽やか青年の姿が。
「あ、これはちょうどいい……八雲さん」
去年青銅の世話役を強いられた八雲マネージャーだ。
「八雲さんなら答えを知ってますよね?」
「え………!? あああ〜〜〜今年はお前らかあ……白縞と市島……ハハハ……答えなら知らねーぞ。青銅さん怖いからな。これも試練だ、試練……プロで成功したかったらこれくらいは自力で切り抜けろ」
けんもほろろで相手にしてくれず、選手のマネージメントに忙しいのか八雲はそのままロッカールーム入り。
「やっぱだめか……」
今度は市島が白縞以上に深いため息をつくが、白縞はニヤリと笑いを浮かべる。
「今の八雲マネージャーの反応でなんとなく答えがわかったぞ。八雲さんは答えを “言えない” でなく、“知らない” と確かにいった……去年の今日の強烈な体験談……答えを忘れるかな? 知らないってことで考えられることは二つ。まずその1、気まぐれ。つまり、その日の気分によって、お茶がいいとかコーヒーがいいとかコロコロ変わる。その2が答えなんてない。さっきもいった通りのイジリだ……何を持っていっても不正解な理不尽な世界……。ならばとりあえずは答えは1と信じて行動を起こす……イッチー……全部買うぞ」
「はあ? 全部? 青銅さんから渡されたのは200円ぽっちしか入ってない財布だぞお……札は全部抜かれてある……」
「自費で購入するんだ……そして、全部持っていって……青銅さんに選ばせる……。余った分は、他の選手に差し入れとして渡せばいい……」
「本人にセレクトさせる!? それなら理不尽な何を持っていっても違うもないだろうし、自分が選ぶなら気まぐれにも対応できるが……いいのか……」
「青銅さんは身銭を切るなとは一切言ってない……やるぞ、これが唯一無二の正答ルートだ」
白縞は向かって右側の自販機に自ら万札を突っ込み片っ端からボタンを押していく。
「イッチーは左側を頼む……」
「袋は! こんなにたくさん持てるわけがない……」
「いや、ご丁寧に自販機横にちょうどいいビニール袋が備え付けられている」
「あ、ほんとだ……」
「まさにこんな時のために用意されてたように……」
2台合わせて40銘柄1本づつで、しめて40本。合計4袋いっぱいに詰めて、二人は引き釣りながらロッカールームに逆戻りだ!!




