48犠打目
白縞は20球投げて一回しか落ちないフォークを次投げたらきっと落ちてくれるとポジティブに考え、打者迫田は初球のフォークの不出来をみて完全に頭からフォークを消し、捕手の弓岡は地面に叩きつけられたフォークもどきを捕れたことで自分のキャッチング能力に改めて自信を持ち、川相は白縞の球筋が珍しく荒れたことを逆に大ピンチを切り抜ける好材料と考えている。
気温33度、続く真夏日の炎天下も午後4時をすぎると多少しのぎやすくなっている。
白縞は流す汗も切れたのか、手で額の水っ気を拭うこともなく、第2球目も予告する。
人差し指と中指でボールをはさみ、それを迫田に見せつける。
「またか、このペテン師が……フォークの握りを投げる途中でストレートに変える気だな」
迫田は怒り、弓岡は突っ込む。
「そんな技術ないよ、うちのキャプテン……」
2球目も予告どおりフォークだ! だがやはり落ちない! いつもの真ん中にただ遅いだけのストレートとして入ってくる!
迫田はこの絶好球を逃してなるものかと大いに力み、スタンド目指して猛烈なフルスイング……。ジャストミートされた打球はレフト方向に高々と舞い上がる。
切れなければ逆転サヨナラ3ランホームラン! スタンドは悲鳴と絶叫で充満する……。
「切れた……」
ショック死寸前だった川相はそのままベンチに背中からもたれかかる。
「遅すぎて……タイミングが狂ったんだ……そりゃ高校野球レベルで115キロの棒球なんてめったにないからなあ……待てなくてファウルになるわー」
ほっと一息の川相だが試練はいまだに続く。白縞は3球目を予告しない。
「どっちでもいい……どっちにしろ打ち頃かクソボールだ」
迫田は2球で投手白縞の限界を察して完全優位な気持ちで待ち構えている。
またもフォークで今度は初球と同じクソボール。なんとか体で止めた弓岡は、1.2塁の走者を前の塁に行かせないように目で執拗な牽制している。
1ストライク2ボールはカウントが悪くなっただけ。
4球目、ストライクが是が非でも欲しいカウントで白縞が選んだのは懲りずにフォークボール……。
迫田はフォークをもう意識していない。どうせ落ちないならストレートと同じ。真ん中ストレートだけをひたすらに待っている迫田は、今度は切れないよう引きつけてセンター返しを心がける。バックスクリーン一直線のはずが20球に1球落ちるそれが来る。
「うわ……」
手元でストンと落ちたフォークに迫田は無残な空振り。
「落ちた……落ちた……白縞のボールが落ちた……」
弓岡は起きた事態が現実と信じられず、止めたミットを動かせないでいる。
これで白縞は追い込むことに成功したが、白縞の頭からフォークは消えた。
「20球に1球しか落ちないフォークが2球連続で落ちるわけがない……ならば僕にはもうこれしかない……ストレート……数々の修羅場をくぐり抜けたこのボールに命運を託す……」
最速120キロでド真ん中にしかいかないストレートは白縞と津浜に幸運をもたらすか?




