30犠打目
星港パソコン部は各大会の前だけ野球部データ対策部に変部する。ただでさえ狭い部室に20人のオール色白眼鏡が各々ノートパソコンに向かう姿はかなり密で不気味だ。
「それでは津浜高校にの先発確実視される近藤投手を丸裸にする」
「球種は?」
「スライダー、カットボール、シンカー」
「スピードは?」
「最速133キロ」
「コントロールは?」
「いいのか悪いのかわからない」
「それでも打者の狙いを外すのがうまい。打ちにいくと微妙に落ちたり曲がったりで」
「ゴロになる」
「対処法は?」
「うちの打線なら打ってくれる」
「打ってくれるとは希望的観測が過ぎる。具体例を」
「控えの笹内を起用すべき。彼は動くボールにすこぶる強い。過去近藤と同じタイプに8打数5安打だ」
「手元の変化に合わせれる天性のセンスがある」
「ただし笹内を起用すると内野守備が落ちてバント攻撃にやられる」
「バントシフトはどうするべきか」
「付け焼き刃のシフトよりも個々の純粋な守備能力にたよるべき」
「ならば投手は矢坂に限るか」
「矢坂ならばバント攻撃にも冷静に対処できる」
などと20人が次々発言するという活発な意見みられその結果をレポートにまとめて部長が試合前日、小山監督に提出するのがいつもの流れ。
小山もデータ部隊の情報を頼りにしているが、頑固な彼にはそれでも譲れない時が多々ある。
「先発は矢坂がデータ班の結論か……うーん、彼は決勝に投げてほしいんだがな……おやこういうデータも出たんだ!? 矢坂が準決勝で投げたら勝つ確率99.9% 投げなかったら98.3%。そして決勝で矢坂が投げたら勝つ確率88% 投げなかったら56%……はは、これ根拠あるの?……僕の直感もこんな感じだ……矢坂には連投させない……投げさせるとしたら宿敵相撲大相模が上がってるくるだろう決勝だ……津浜さんには舐めているようで悪いが決勝で勝つには矢坂の温存しかない」
データ班の部長は矢坂登板云々の確率をいつはじき出しか記憶になく、小山とのやり取りも適当に相槌を打つしかなかった。
そしてナインも小山派反小山派問わず矢坂先発で固まりその意思を監督へ陳情する。
意見は聞くが取り入れるかは自分で決める主義の小山はやはりこの陳情には従わない。
矢坂先発回避でまとまりつつあるとの情報は試練縞にも筒抜けだった。
「今、星港に通う従兄弟から連絡が入った。どうやら矢坂先発回避の流れだって」
「やっぱお前が仕組んだのか……? シラ……」
「僕がなんか特別なことしてたように思えるか……? 休養日の今日山本とずっと一緒だったろ」
「スマホをずっといじってた……その従兄弟とやらに何かを頼んだな……」
「強いて言えば……その従兄弟……パソコン部で書記役をしている従兄弟に監督に提出するレポートにある確率を入れるように頼んだんだ……従兄弟は母校が大好き、僕の快挙より母校の甲子園行きを強く望み僕から情報を収集しようと躍起になっている……。あろうことか僕に母校が必ず勝つにはどうすればいいって聞くんだ……で僕はそんな母校愛あふれる従兄弟に母校が甲子園に行くためには矢板が準決勝決勝を連投するのが一番確率が高いってのを吹き込んだ……」
「それでどうして矢板回避になるんだよ……逆じゃん」
「それが面白いところなんだよな……従兄弟が母校愛高じて勝手に入れた矢板登板熱望のデータをみた小山監督は自分の信念を一層強くした……それが数字のマジック……まあ簡単に言えばウチ相手には誰が投げても勝てる……所詮県立高校……快進撃も真の強豪相手には止まるって思い込んでるんだろうな……浅はかだけどな……矢板が投げれば決勝には行けるのに……投げなきゃ県立に負けて敗退の屈辱が待ち受けてるのにさ」
やばマンネリで現実味なく飽きられたか




