22犠打目
「監督、お言葉ですが……田原交代はまだ早いと……」
大和は母校……いや白縞に警戒心を積み重ねている。
「大和くんの母校だからといって意識過剰すぎんかね? 川上やその他投手陣も場馴れさしておきたいところだろうよ」
港南台大付属の監督が先に動く、田原に替えて川上を投入してくる。川上は津浜が大苦手な左腕でスピードも140キロは出る……まさに攻略不可能なスーパー難敵だ。
「うーん……田原降板は願ったりだが、なあ白縞」
「左腕ですかあ……監督……僕の入学以来左腕を攻略した記憶ないですよ」
「オレの現役時代もない」
「ということは最低6年はないのか……うちが左腕に勝ったのは……」
4回表は3番島中からの攻撃。左腕が大の苦手な島中はまったくタイミングが合わない。あっという間に追い越まれ苦し紛れのセーフティバントも失敗でまずワンアウト。
次打者は4番白縞、左腕が苦手な津浜打線の中で多少マシな打撃をする。
「いつもは頼りにならん男だが、左腕相手にはすがるしかない……」
ところが白縞は一球たりとも振らずに追いまれ、最後も明らかにストライクを見逃し三振に取られてしまう。
これには白縞に賭けた川相も不満をあらわにする。
「どうした!? なんで振りもしない」
「……見てたんです……そしてわかったんです……」
「はい?!」
「ストライクとボールがすごくはっきりしてるんですよ、川上って投手は」
「だから!?」
「空振りが一番取れるボールってストライクからボールになる変化球ですよね?」
「そりゃそうだ……ゾーンに入ってるって思って振りにいったらボールになるんだからな……なんだいまさら」
「川上にはそれがないんです……スライダーもカーブもストライクからストライクか、ボールからボールしかない……つまり一番厄介なストライクからボールになる変化球がない」
「だからそれがわかって打てるのか?」
「ゾーンに来たら振る、ボールなら振らない……わかりやすいですよねえ。しかもストライクからストライクになる変化球は待ってれば打てる甘いボール……バントもしやすい……ほら弓岡が証明してくれますよ……」
「最後は他人頼りかよ……」
弓岡は一球も振らずフォアボールを選ぶ。
「ほら僕のいった通り!!」
「お前が得意になることはないだろ」
結局後続の山本が倒れ、このイニングは0に終わったが白縞は攻略の糸口を見つけたと希望を捨てないでいる。
「4回裏からは秘密兵器近藤だ……こいつはまだ何かを隠している気がしてならないんだよなあ……今年来年は捨て石で2年後甲子園に行く計画だろうが……そうはいかないぞ……僕は今年最後なんだから、今年やってもらわないとね……3年計画!? そんなん知るかだ」
近藤が心がける投球はぎりぎりのラインで相手の上をいき抑え込むスタイル。そこそこレベルの川野高相手にはそれなりの投球をすれば0に抑え込めたが、はたしてそもそも強打の港南台大相手にぎりぎり上にいく投球ができるほどの投手なのか近藤は。
「菊名コーチはよくこう言う。僕はプロも望める素材だって……だから酷使されないように3年生までは力をセーブして投げろって。もしも投げさせられる機会があったら相手の力をみてその上をちょっとだけいく投球で抑さえろって……それなら監督の目には頼りにならないままだから酷使されないし試合も壊さないって……でも港南台大のような相手にそんな投球できるかな? 今のフルスロットルで行かなきゃ抑えれないんじゃないかな……いいですか? 菊名コーチ、全力でいって」




