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21犠打目

「白縞……この珍しい名字……どこか記憶にあるが……そうか、津浜旋風のときの対戦高校に白縞って投手がいた。そこそこ強い私立高で津浜より格上にも関わらずオレらを警戒しすぎて逃げの投球に終止した変な投手って記憶にある。顔もなんとなくあのキャプテンに似てるような……親子か親族としたらあいつも策が無駄に大好きなタイプ……!? この場面スクイズ以外にあるとしたら……」


 河野は予定通り初球を空振り、弓岡はドタドタ三塁に戻る、ここまで白縞作戦どおり。

「今のも演技臭いぞ……ということは……」

 河野がまたもスクイズの構え、カウントに余裕のあるバッテリーはウエストして外して様子見、弓岡がスタートを切ってないことを確認すると捕手は目を離すが、

「おい! 吉沢(港南台の捕手)!! 三塁走者をちゅう……」

 察した大和コーチが大声を出した瞬間、向こうのベンチの白縞がそれを打ち消すようにその100倍もの音量の奇声を発する。


「きょええええええええええ」


 大和の注意も白縞の奇声で吉沢には届かない、吉沢は弓岡への警戒を一瞬解く。その刹那、弓岡はスタートを切る。


「やばい!」

 大和だけでなく吉沢以外の球場中全員が弓岡の動きに気づく。

 やっと吉沢が気づいたころには弓岡はホームベースにヘッドスライディングする寸前。

 吉沢は慌ててタッチしに行くがミットからボールをこぼす、急いで拾ってタッチし直すが弓岡の右手は先にホームベースに触れていた。

 まさかのホームスチールが成功してしまった、これで津浜が奇跡の先制だ。


「あのキャプテンの奇声がなければ吉沢はもっと早く気づき簡単に三塁走者弓岡を殺していたはずだ。策士だが親父?のように策に溺れるタイプでなく、あらゆる方法で策を完遂するタイプか……令和の津浜旋風の立役者はもしかしてあのセンス0のキャプテン!? でもな、お前らみたいに遊びの延長じゃないんだよ、うちら私立はな……先制点くらいくれてやるさ……終わったときには20ー1だ!」


 だが二回裏、早速この虎の子の1点が無意味になる。

 港南台付属の4番はこれもドラフト候補の強打の石井。河野はコーナーへのスライダーでかわしまくるが、たった一球やや甘くなったのを見逃してくれない。

 レフトスタンド上段に飛び込む同点弾だ、これには大和コーチも格差を忘れて狂喜乱舞。

「みたか、必死の作戦で取った一点が一振りでチャラになるこの現実……これが強豪私立の恐ろしさだ……でも30年前オレら津浜はこの手の強豪校私立をなぎ倒しベスト4までいったんだよな……。圧倒的に勝つのもなんだなあ……可愛そうっていうか……今後の人生によくないっていうか……20−1はやりすぎだ……10−2くらいで勘弁してやっか……」

 大和は母校に対する複雑な気持ちをうまく処理できないでいる。


 河野はその後も失点を重ね3回終わって3−1でじわじわリードを広げられる。公立旋風終わったり、ベスト16からは世界が違うとの雰囲気が球場中に充満する中一人勝利を疑わないのが白縞だった。

「相手はこれでもう勝った気でいる……スキが絶対生じるはずだ……そこを見逃さなければ……絶対に追いつける……追い越すまでは言えないが……でも追い越せなきゃ勝てないな……うん……」

 ポジティブ思考白縞でも揺らぐ戦力差、津浜ナインの真夏の進撃はやはりここで終了なのか?

 

 

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