17犠打目
「ええええ? なにが起きたの? なんか知らないけど近藤降ろしてぼんくらがマウンドにあがる!?」
先読み得意な莉乃も思いつかない策を津浜は取ってくる。
白縞にマウンドを譲り、ベンチに戻ってきた近藤は選手とハイタッチを交わしつつ監督の川相に素直な気持ちをぶつける。
「監督の指示ですか?」
「いやあいつの暴走だ」
「でしょうね……」
「あの馬鹿は確かに過去3試合で最後のマウンドにいるがまともに抑えた試合は皆無。点差があったから言いようのもんで、最小得点差のこの状況、いくら残り1アウトっでもなあ」
「誰よりも今夏の成果にこだわってたのはキャプテンですよね。汚い手を使っても甲子園行くって……なら自分の登板こそおかしいって気づくはずでしょうよ」
「目立ちたいんだろ……自分が目だった上で勝つのが自分が目立たず勝つより上なんだよ……」
「でも負けますよ、下手したら、いや高い確率で……」
莉乃が出した投手白縞の分析結果は?
「普通にやれば打てる……運悪く守備の真正面に行くとかあるかもしれないけど……普通にやれば逆転十分に可能よ! いけえ」
川野の打者は7番の垣内。どうってことのない右打者で今日も3打数無安打と不発。
「垣内でも打てる……白縞はその程度……ってほらああああああ」
初球ど真ん中のストレートを垣内は迷わず振り抜く。打球はやや力ないライナー性に近いフライとなり津浜弱点の外野を襲う。
「抜けろ抜けろ! ほらあ抜けた!!」
莉乃の絶叫が届いたのか、左翼手緒方と中堅手山本がお見合いし打球はその中間に落ちる。それを見た垣内は一塁を蹴り二塁に向かう。
「外野手はやっぱ下手くそ! このまま三塁にいけええ!」
ボールは転々……緒方も山本も足がもつれなかなか打球に追いつけない。
「よし三塁打!! これでバッテリーミスでも同点」
山本が打球に追いつき三塁にボールを返すころにはとっくに垣内がベースの上に立っていた。
「あーあ、せっかく1球で試合終了だったのに外野手下手すぎたな……うちの弱点露呈だ。あいつらグラウンドでできない分自分で工夫して練習しとけって口酸っぱくいってたのに」
白縞はいきなり甘いボールを投げた責任を棚において外野手批判に走る。
「さあ三塁よ! しかも投手はぼんくらのまま! つけいるスキだらけ!!」
莉乃は自分の意思を伝えた控えに伝令させる。
「ふふふ……バント野球にはバント野球……ツーアウトからスクイズはないと思ってるでしょ……想定してないから成功するの……ふふふ……スクイズの構えをする。捕手は警戒して外す……ぼんくらはウエストボールを投げる……それを何度か繰り返したら……ぼんくらはきっと暴投する……その程度の投手だから……」
希望的観測がやや強すぎるが、現実白縞が警戒してウエストしたボールは捕手弓岡が背を伸ばしてやっと届くほどに浮き上がる。
「よっし、次も次も……ウエストさせる……今度こそ暴投よ……三塁走者生還で同点!!」
次もスクイズの構え……ところが今度は白縞がど真ん中に投げ込んでしまう。
これほどバントに格好的なボールがくるとは思ってもない打者は打球の勢いを殺し忘れてしまう。
打球は白縞の前へのフライになってジ・エンド、莉乃はバント野球こそ完封したが、データにない、データと違う津浜投手陣と白縞の強運の前に破れてしまった。
「えええ負けたの私たち!? なんでこの程度の投手陣打てずに終わり!?」
落胆する莉乃と喜ぶ津浜ナインの差は激しい。たかが一点の差が天と地ほどの差をつけてしまった現実が横たわる。
「これで悲願のベスト16だ! 5回戦進出だ!!」




