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激しい崩壊の起こった場所は引き続き沈黙を続けていた。

話し込んだせいで時間がたったが、それでもエンヤの増援が来る気配はなかった。


「とりあえず近づいてみようか」


アキラは決心すると隠れていた茂みから体を出し、

腰を低くしたまま自身が破壊した門の方へ向かい歩き出す。

ラシェルもそれにならってついてくる。


門のあった場所に到達すると、まるで爆撃でも受けたかのように無残な荒地となっており粉々になった建物の跡が残っている。

その所々にエンヤの物らしい血がこびり付いており、惨殺が行われた現場のような雰囲気を醸し出していた。


「あの演奏でここまでの威力があるのか……」


ボリュームと威力の概念は以前の実験で実証できたものの、

この曲を試すのは初めてだった為威力がわからなかった。

内蔵アンプでの演奏ですらこの破壊力ならアンプを取り出した場合どうなるのか……。


「やはり人前で演奏するにはこの効果をどうにかしないと」


それなりの人を集めてのコンサートの場合、内蔵アンプ程度の音では碌に聞かせられない。

また、ジャンル的にも大音量でやらないと意味がない。

が、今それをやるとコンサートがリアルな処刑場になりかねない。


やはりさっさと魔神を見つけないと……


「ねぇねぇ、ちょっと悪いんだけどさ」


考え込んで止まっていた所、ラシェルに声をかけられる。


「あたしちょっとあっちの方を見てきたいんだけどいいかな?」


指し示す方向を見ると、広い空間に畑らしきものが見えた。

遠目にも荒れているように見えるが作物らしきものも少し残っているように思える。


「今後の参考にどんな農作物を作ってるか見ておきたいんだよね」


未知の食材に巡り合えるかも知れないしね、と目を輝かせる。

場所的には目的地である採石場から反れる方向となるが……


「わかった。ただあれだけの騒ぎを起こしたんだ、可能な限り早めに退散したい。

ササっとみて採石場に向かうぞ」


「えー、行くからにはじっくり見たいんだけど。

あたしは1人で見てくるからアキラは採石場に先に行っててよ」


「馬鹿言うなよ! 1人だと危ないだろ!?」


いくらあの音で寄ってこなかったと言えど何処にエンヤが隠れているかもわからない。


「おっ、心配してくれるの? 意外に紳士じゃないかアキラ君~~」


茶化(ちゃか)すなよ、まったく」


寄っかかって肩にかけられた手を丁寧に外す。

そんな突っ込みをされると思っていなかったので、少し気恥ずかしくなってしまった。


「まぁ大丈夫だよ、最悪なにかあっても逃げるしさ。

アキラも目的があってここに来たわけじゃん。

それと同じであたしにも目的がある。

お互いの目的の達成のために有効に時間を使わないとね」

そう言うとラシェルはポシェットに手を突っ込み、包丁を取り出した。


少し不安はあるが言っていることは理解できる。

時間がいつまであるかもわからないし、

確かラシェルは先日にエアがエンヤに襲われている際に倒したと聞いた。

こう見えて実はかなり強いのかも知れない。


「わかった、危険を感じたら俺を置いて町まで戻るんだぞ」


「ありがとう! そっちも気を付けてね、危ないから」


今から自分が向かう採石場の方が危険度はかなり高い。

むしろこっちが危ないから付いてきてほしいんだがと思うアキラであったが、

いざというときは先ほどの曲を再度演じれば大丈夫だろうと先の展開に高をくくった。


かがんだ状態で手を振るとラシェルは畑の方へ向かっていった。

その姿は忍び足で歩いているのだが、どこかスキップでもしているような様子に見える。


(好奇心でテンションが上がってるなあれは……)


好奇心は猫を殺す、といったことわざにならない事を祈るばかりだがこちらもそれは同じだ。

聞いた流れだとこの先の採石場に親玉がいるのはほぼ間違いないだろう。


(先ほどの騒動で現れないという事は目的を達していなくなったのかも知れないな)


風の音のみ聞こえる荒地をこちらも忍び足で慎重に進んだ。

居住区の入り口から更に奥に進むと、鉱員達の住居施設や小規模な商店街らしき場所にたどり着く。

そんなに日は立っていないはずだが窓や外壁が壊され、長年放置された廃墟のようになっている。


恐らくエンヤ達が荒らしたのであろう。

食べかけの果物や動物の死骸がそこら中に転がり、干からびていた。


静まり返ったこの場所でも物音など聞こえず、生き物の気配もしない。

やはり撤退したのだろうか。


疑問に思いつつも忍び足のまま居住区を突っ切り、採石場への道へとたどり着く。

視界の先は大きくへこんだ状態となっているのが月の光でもはっきりとわかり、

その凹みの大きさに圧倒される。


(ドーム球場位の大きさあるんじゃないか……?)


恐る恐る近づいていくと凹んだ穴の中から何か天に向かって光が差していた。

じわじわと近づき、穴の底の方から出ている光の発生源に目をやると

まぶしく輝く光の源と、その光の一部を遮る大きな塊があった。


『待ちくたびれたぞ……』


大きな影を作っていたその塊は、しなやかなうねりと共に大きくなっていく。


『先ほどの音を作り出した者か……?』


眼前に立ちはだかる化け物がパスクアであるとこの時アキラは理解した。

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