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「今回は本当にすまなかったな、感謝する」


門番から案内され兵舎の隊長室に入ると、正面にやや大きめの机があり、その椅子に座っていたアンディが立ち上がり入室者達に深々と頭を下げる。


「無事戻ってきてくれて嬉しいぜ、本当は俺たちの仕事だったんだけどな」


机の横で同じく頭を下げていたトニーはこちらへ近づき、満面の笑みでエアの頭をポンポンと叩くとやるじゃねぇかと声をかける。

子供扱いするなよとエアが拳を振るが、それを余裕の表情でヒラヒラとかわすとアンディの横に戻っていった。


「まず先に聞きたい、昨日も思ったんだがその隣の貴婦人はどなただろうか?」


アンディの発言後、トニーがそれなと口笛を鳴らす。

二人からすると、逃げ遅れと送り出した者以外の人物がいきなり増えてたらびっくりするのは当然か。


「この方はラシェル・バートンさんです、私たちがエアを見つけるまで保護してくれていたんです」


「よろしくねー」


陽気に片手をあげ、チョップでもするような仕草で挨拶をする。


「そうだったんですか、改めて感謝申し上げます。しかしラシェルさん、あなたはあんな場所でいったい何を?」


「いやー、気が付いたらあそこに居たんだよねぇ」


「気が付いたら……ですか」


アンディはやや怪訝そうな顔でラシェルを見つめる。


「あの区域はこの町の城壁を超えないと入ることが出来ません、そんな中にどうやって入ったのか」


「もしかしたらあの魔物の侵入してきたルートかも知れないぜ、奴らもなぜあそこに入ってこれたかはわからないし。まぁいいじゃないかそんな些細な事は」


エアが無事だったんだし、とトニーが少し重くなった雰囲気に助け舟を出す。


「そうだったな、申し訳ありませんでした」


再度頭を下げるアンディに、いいよいいよとラシェルは困り気味に頭を上げるよう求めた。


「ありがとうございます。さて、わざわざ来てもらったのは他でもない、君たちが向かったトンネルの先の状況を聞きたかったのだ」


アンディはそれぞれに近くの椅子へ腰かけるよう促すと、自身も座り話を進めた。


昨日命からがら逃げだした所へと、アキラとリジーは向かった。

この先再度向かうことになるであろう場所に何か気がついた事が合ったかの確認がしたかったそうだ。


「アンディ達が行った時と何か変わっているかとかは細かくはわからないが、言っていたエンヤとは遭遇したよ、何とか倒しは出来たけど」


そこのエアが、と付け足しておいた。

名を呼ばれた本人はヘヘンと鼻を擦ると誇らしげに上を見上げる。


「エアが・・・、最初に遭遇した際の怯えっぷりからは想像も出来ない。短期間で驚く成長を遂げたようだな」


アンディはどこか穏やかな表情でエアを見つめる、それは実子はいないものの我が子の成長を喜ぶ親のような表情だった。


「しかし話しからすると魔物たちは採石場から居住区、トンネルまでの道くらいまでは活動範囲を広げて行っているという事か。どちらにせよトンネル前で早急な防衛ラインの設置が必要だな」


「傷や疲労の無い者を優先に組み、すぐ向かわせるように手配する」


アンディは横にいるトニーに目配せすると同時にトニーは一声発した後に部屋から出て行った。


「その他は、特に気になる事は無かったか?」


部屋にいる者すべてが顔を見合わせるが、全員それ以上に思いつくこともなく首を横に振る。


「そうか、わかったありがとう。わざわざここまで来てもらってすまなかったな、これは心ばかりだが人命救助のお礼だ」


机の引き出しから袋を取り出すと、アキラに取っておいてくれと渡してきた。

中を除くと見た事も無いような硬貨が詰め込まれており、手のひらに収まるほどの大きさではあるがかなりの重量感があった。


「こんなにも……!? 良かったですねアキラさん!」


見た感じ50000レノン位かな、美味しい物が食べれますよ!と興奮気味にリジーが話しかけてくる。

流れ的にこの硬貨がこちらの世界での貨幣なのだろう、ざっくり50枚ほどなのでこの袋の中の貨幣は1000レノンといった具合か。


「せっかくこの町に来てもらったのにこんな事になってしまってすまない、本当はこの町一番の名所である採石場を観光してほしかったがせめてそれで少しでもこの町を楽しんで貰えたら嬉しいよ」


繁華街などでは地元特有の料理などもあると紹介してくれた。

ラシェルはその話に興味が湧いたのかどういった料理なのかを細かく質問し始めた。

アンディが細かい質問に困惑した顔をしていると


「失礼します、アンディ隊長!」


若い青年、兵士かどうかわからない甲冑などを身に着けていない簡素な服を着た人物が入室し、


「ダン領主がお話があるとの事で、至急部屋までお越しください」


と大きく声を上げた。

アンディはわかったと青年に告げると、急いでいるかのように頭を下げ早々に部屋から出て行った。


「すまない、彼も恐らくトニーに呼ばれて出ていく所だったんだろう。さて先ほどの通り私は今から領主の所に行くとするよ」


重い腰を何とか押し上げるように立ち上がると、首を少し左右に動かす。


「王都に出した応援の答えが返ってきたのかもしれない、早々に動いて奴らを鉱石場から追い出さなくてはな。もしかするとエアに再度助けを求めるかもしれないが、その時はよろしく頼むぞ」


任せといてよ!と意気揚々と答えたエアに満足したかのように、アンディは部屋を後にした。


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