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「アンディ、領主様がお呼びだってよ」


交代にはまだ早い時間に珍しくトニー・ワトソンが現れると、ニヤついた顔で話しかけてきた。

防衛部隊の副隊長でありながらやや疑問の残る勤務態度(ルーズさ)であるものの、彼が副隊長を務めているのは持ち前の戦闘センスの賜物だろう。

アンディもトニーも魔法適正を伸ばしきれず体術に逃げた者達だが、幸いな事にお互いそちらに才能があった。

アンディは槍、トニーは弓。

的確に目標を捉える彼の射撃は城壁の地形も相まってかなりの数の魔物を仕留めており、その討伐数により領主に見初められるまでにそう時間はかからなかった。

小柄でありながら大柄の兵士の倍活躍する、それが彼を副隊長までにさせたのだ。

勤務態度の差で役職が違うに過ぎない、アンディは自分が隊長をやっている事にそう理由づけしていた。


「さっき慌てた見張りに聞いたよ、鉱夫が飛び込んで来たんだってな」


明け方ハフの町が持つ採石場、名をアランと言うそこから作業員が数人息も絶え絶え飛び込んで来た。

憔悴仕切った様子に何があったのかと聞くと魔物の襲撃に会い、占拠されてしまったという。


「恐らく奪還に向かえ・・・という事だろうな」

予想は的中し、この町の産業の要である採石場に何かあっては一大事だと、領主からの命令でハフの町の防衛部隊を派遣することになった。


防衛部隊とは町の力自慢や攻撃魔法を使える者で構成されるのが一般的だが、先ほどの二人がいるもののハフの町には他所と比べそれに該当する者が少なく戦力としてはやや乏しい。

もともと襲撃自体も少なく、堅牢な城壁による守りでそれほど力を入れずとも防衛が出来る事もあってさほど注力しておらず、町の商人など一部非戦闘員を駆り立て、その場しのぎで何とか人数を維持している。

言わば烏合の衆、寄せ集め集団である。

中にはまだ成人していない子供も含まれていたが、それでも今日までは問題なく過ごせてきた。


全戦力を投じる事としたのだが敵対戦力が未知数なのと、そうした懐事情から念のため、同時に王都への応援要請の使者も出した。

流石に王都にとっても採石場の生産物は需要が高いため無下にはされないだろうという期待を込めて。

全戦力の投入によりこれに乗じて外部からの襲撃が無いとも言い切れないが、城壁で守られているこの町であれば何日かは持ちこたえられるはずである。



招集により門前に人が集められるとそれぞれが武器を受け取り、出立の準備を始める。

大半は戦闘経験がある者たちだが中には今回初参加という者もいる。

アンディは集団の前に立つと部隊編成、緊急時の行動、警戒・確認ポイントなどを説明する。


「おいおい、俺たちまで呼び出されるのかよ。ハフの町の最終兵器だぞ俺は」

「まったくだ、こんな糞な兄貴に会わなきゃいけない程の事なのかよ」


説明しているアンディに向かって、集団の奥の方でふんぞり返っていたノエル・カルアとリアム・カルアの兄弟が悪態をつく。


「ははは、俺もお前たちに会いたくは無かったけどな。見てるだけで飯が不味くなるしよ」


話すのを遮られた事を注意しようとするアンディよりも早く、トニーが二人に言葉を返した。


アンディ、特にトニーと相性が悪いこの二人は、珍しく兄弟で攻撃魔法が使える者たちだ。

この町には攻撃魔法を使える人間が限られており、魔法の有益性や希少価値も相まってかなり優遇されている。

ただ、そうは言っても実績を上げないと優遇も受けられず、町への貢献度を領主が判断し、それに応じて報酬が入る仕組みだ。

トニー達は自分たちの頑張りと比べ、さほど彼らが働いていると思ってはいないが、領主的にはこの二人の貢献度はそれなりと考えられており、手厚い優遇を受けている。

また、手厚い優遇を受ける事によりカルア兄弟の横柄さに拍車をかけている事も相まって、一方は優越感によるぞんざいな態度で、一方は嫉妬による厄介者扱いで、といった関係性となっている。


「止めろトニー。お前たちも無駄口を叩くな」


トニーをややきつめの口調で注意すると、兄弟に向かって話し始める。


「今回の一件は領主もかなり力を入れている、いつもよりも多くの報酬を得る事が出来るだろう。

遊ぶ金が欲しいなら頑張って成果を出す事だな」


魔物を倒す以外は遊んでいる兄弟は宵越しの金を持たない。


「それにいつもとは違って、どういった力を持つ魔物がいるかもはっきりしない。何が起こるかも定かではない、気を引き締めないと死ぬぞ」


鉱夫達はただ魔物に襲われたとしか言わず、どういったものかを説明が出来ない程混乱していた。

少しでも情報があれば何かしら対処できるのだがこの状況ではとにかく注意して進む・・・しかない。

アンディは兄弟の眼前まで来ると、その横にいる少年に声をかける。


「エア、お前にまで来てもらって心苦しくはあるがとても頼りにしている。お前の力で我々を助けて欲しい」


本人が小柄の為、通常の成人用の物かも知れないが大ぶりのマントを頭から被り、上目遣いでアンディを見上げてくる。


「まかしときなよ!俺にかかればどんな奴だってイチコロだってさ!」


シュッシュッっと空間を殴るような仕草を見せると鼻を擦りながらニヘヘと笑う。

幼さゆえの軽さ、向こう見ずさの返答だが不安が渦巻くこの場では非常に心強く感じた。


「おいアンディ!こんなパセリみたいな奴連れて行って役に立つのかよ、湿った所に埋めなおそうぜ」


リアムがエアの頭を叩きながら挑発する。

叩かれたエアは勢いよくリアムの手を払うと馬鹿にするない!と睨みつける。

これが心配だから言っているのか馬鹿にしていっているかわからない所が、彼の扱いづらい所だ。


「エアの実力はお前も見た事あるだろう、皆に向かってエアは使えないから要らない奴だって叫んでみるか?」


ウッと喉を鳴らしリアムがたじろぐ。

以前大群で押城壁に押し寄せたアーロたちをエアは一瞬で吹き飛ばした。

未知の状況に対してあの力が使えなくなる、そんな事を言おうものなら周囲からの非難の目は流石に避けられない。


「うるせぇなリアム、お前は黙っとけ」

「お前が黙れ」

「俺が言ったんだよ、お前が黙れ」

「お前が黙りな」


間に入ったノエルだが、そのまま兄弟喧嘩へと移行してしまった。

暴れる二人を尻目にアンディは距離を開け、再度注意をこちらに引き付けると、


「出立は今から1時間後だ、各自遅れの無いように」


オロオロしているエアを無視してそう告げた。

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