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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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帰還

 次の朝、転移でカッタルイから北に2時間の距離に転移した。ここは精霊で安全を確認済み。誰もいないし、誰にも見られていない。


 俺は左右にニコルとサリスを抱え、サークに跨った。ポルルは俺の前に座っている。これから飛ばすのに背中に乗せるのは辛い。


「サーク、ゆっくりと前進だ」


「ヒヒーン!」


 サークが俺の命令を受けて動き出す。本気を出せば数分でカッタルイの首都に着くだろう。それでは要らん注目を浴びる。


 カッタルイへの道すがら、北上する商人と何回かすれ違った。


 商人は皆サークを見て目を見開いた。


 この程度の注目は仕方が無い。


「そうか。もう4月上旬か」


「そうなります、ご主人様」


 俺とサリスは取り留めの無い会話を交わす。


 この時期から行商人が積極的に動き出す。北方の雪解けも終わって、野宿しても過ごし易い日々が近付いている。


 例年に比べてどう動いているのか気になるが、ここでは確かめる術は無い。


 カッタルイに入るための門は何事も無く通過出来た。第2公子が仕掛けて来るなら、ここだと思ったのだが、拍子抜けだ。


 行列の処理に手間取っていたので、俺達が入れるまで1時間は待たされた。


「何かあったのか?」


「どうやら責任者が汚職の容疑で拘束されたみたいです」


 サリスが待ち時間で精霊から情報を集めていた。


「ニコル、何か知っているか?」


「う~んと、ここの責任者は第2公子の派閥くらいかな」


「それで十分だ」


 公国の方が先に動いて企みを潰したか。


 レッサードラゴンを倒した俺に下手な対応をすればどうなるか分かっているのだろう。第2公子も分かっているはず。それなのに稚拙な策を強行したのは何故だ?


 公国の継承争いがいよいよコントロール不能なレベルになりつつあるのか? 外から見たら規定路線の第1公子がこのまま優勢勝ちする。第2公子に必勝の策が無いならそろそろ頭を下げている頃だ。


 一応用心しておこう。


 俺は観光案内所に着いたので、ニコルと一緒に中に入る。


 ベリアの窓口だけポツンと空いている。


「ベリア、ニコルを帰しに来た。予定が延びた分の追加料金は幾らだ?」


 早速本題に入る。


 ここでは裏の会話は出来ない。


 それに今日は勘弁して欲しい気もある。


「ご心配なく。メイリーズ様から窺っております。追加料金も既に頂いております」


 流石メイリーズか。


 あの手紙を読んですぐに行動したのだろう。


 ここ以外でどう動いたのか心配だ。


「それなら良い」


「ライ様、楽しかったです」


「また頼む。俺は数日はゆっくりする予定だ」


 ニコルの頭を撫でながら言う。


「そうですか。例の手紙の返事は後日と言う事でお願いします」


 ベリアが事務的に言う。


 ニコルから情報収集してから対応を決めるのか。


 既に決まっていそうだが、最終調整を図るのか。


「分かった。では失礼する」


 案内所を出て、サークを取り巻いていた人だかりを散らし、俺達は屋敷へ向かった。


 向かっている途中、余り聞きたく無い会話が聞こえた。


 人の輪が有り、普通なら見えない。しかし、サークに乗っている分だけ目線が高いので良く見えた。


「美しき姫よ、邪竜様復活の生贄となるのだ!」


「お断りします!」


 南方の土豪が着る民族衣装に身を包んだ男が公国の公女に似た女性に迫っている。


「貴様を守る騎士は既にいない! 捕らえよ!」


 地面には鎧を着て倒れている者が数名いる。


「待て!」


 人の輪の端から突然の乱入者が現れる。


 タイミングを逸したのか、出てくると同時に躓きそうになる。


 度台、観客の輪から出て来ると言うのが悪い。


 屋根の上辺りから、太陽をバックに現れないと格好が付かない。


「何者だ」


「旅の者だ。美しき姫君を生贄などにはさせない」


 台詞が棒読みだ。


「貴方様は白髪の君!」


 公女の衣装を着た役者が期待の眼差しを向ける。


『やめろぉぉ!』


 俺の魂の叫びはレイラ以外には聞こえないはず。


『あははっ! 宿主の君だ!』


 レイラが笑い転げる。


 前回のワイバーンロードの劇と同じ殺陣を見ながら、俺は頭を抱える。


「邪竜様から頂いた闇の……」


「ブレス……ブレス!」


 台詞を忘れた悪党に脇から脚本家が小声でヒントを出す。


「そう、闇のブレスで貴様を闇に帰す!」


 黒い粉を撒くも、拡散せずに悪党の周りに留まる。悪党は手で振り払おうとしているが上手くいっていない。観客から笑い声が上がる。


『風の魔法道具で浮遊と拡散を狙ったのか』


『そうなの?』


『恐らく光を発する魔法道具で闇を照らす光の演出をしたかったんだろう』


『失敗よね』


『失敗だ』


 その後はお決まりの光のペンダントが悪党の闇を払い、最後の殺陣で悪党が斬り殺された。どう見ても闇に飲まれて苦しむ悪党を助けただけだ。


「白髪の君、是非とも私の国に来てください」


「申し出はありがたいが、私は邪竜を討たねばなりません」


「それが終わったら?」


「終生、貴方のお側に」


 抱き合う二人。


 観客からお情けで拍手喝采が沸き起こる。


 キャストが一列に並び、観客に手を振る。


「これにて『白髪の君、邪竜から姫君を救う』を終えます」


 ナレーター役が盛大にお辞儀をする。観客がおひねりを投げ込む。


「白髪の君の次の活躍を乞うご期待ください!」


 無いから。そんな活躍しないから。


 俺は内心、今一度強く誓う。


「ご主人様、中々の喜劇でしたね」


「まったくだ」


 役者が台詞すら覚えていない中での強行上映。それに戦いから10日も経っていない。殺陣や魔法道具の再利用からして急ごしらえだ。


 そうなると、これは上がゴリ押しした劇だ。


 本来ならクローディアが勇ましく山賊を蹴散らす劇になるはず。損害など無く一方的な大勝利を喧伝した方が公国に利がある。


 それをせず、俺を持ち上げる意味はなんだ? 敵を山賊から邪竜信仰の土豪にした訳は?


 俺に関してはクローディアとの婚約の外堀を埋めたいのだろう。公国民の後押しがあれば、公王としても王国を説得し易い。


 土豪に関しては分からない。公国は土豪と一戦交える覚悟なのだろうが、劇の敵役にする必要があったのか。メイリーズに聞けば分かるか。


 邪竜に関しては滅びの黒龍で確定だ。白髪の君があんな化け物と戦って勝てると思われているのなら大問題だ。


 実際勝ったが、あれは謎の光の巨人だ。俺では無いと言い張る。


 色々あったが、やっと屋敷に帰って来られた。


 メイリーズ以下全員が出迎えてくれた。


 その中に俺の義兄と義妹が居た。


 何故ここに?

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