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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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野営 後編

「ご主人様、起きて下さい」


 サリスが俺の体を揺すっている。


 寝たり無い気分だが、体調は良い。未だ音信不通のレイラがしっかり管理しているからだろう。


 サリスが俺を起こすなら可能性は二つ。寝すぎたか、厄介事か。


「どうした?」


「騎馬の一団が南から近付いています」


「何時頃、到着する?」


「一時間後です」


「分かった。俺が対応する。二人の事を頼む」


 俺はそう言ってテントを出た。


 太陽はまだ出ていないが多少明るくなってきている。


 朝の4時頃か。少なくても6時前なのは間違い無い。


 近くに屯している輜重兵に声を掛ける。


「当直の騎士はいるか?」


「はっ! 本陣に居られます」


「分かった」


 俺は隣のテントに入る。昨日夕飯を食べた場所が本陣なのも今考えるとおかしいが、分ける余裕が無かったのだから仕方が無い。


 本陣に入ると当直の騎士が眠りこけていた。


 もはや公国軍の錬度については何も言うまい。


「私の放った物見の情報では、騎馬の一団が南から来ている」


 騎士を起こし、状況を説明する。


「味方では?」


 騎士が目を擦りながら言う。


「敵なら全滅するぞ」


 確認作業をしろ、確認作業を。


 昨日だって油断して皆殺し一歩手前だったのに、どうしてこう動きが遅いんだ。


 抜けているのでは無く、図太いのか?


 疑問が尽きない。


「た、直ちに準備をします!」


「味方の場合の受け入れ準備もな! 強行軍だから疲れているだろう」


 馬の飼い葉を用意したり、騎士が使えるテントを追加で建てたり、色々と俺が指示を出す羽目になった。


 途中で一端自分のテントに帰り、ニコルを起こした。


「ライ様、まだ心の準備が!」


ぱこん!


 軽く頭を叩く。


「痛いです」


「目が覚めたか? クローディア様に伝令を頼む。南から騎馬が接近中だ」


「では、行って来ます!」


 ニコルが飛び出しそうになった所を止める。


「まずは服を着ろ!」


 薄い下着もどきのシャツを着ているが、それでクローディアに会うのはまずい。借り物のメイド服があるのだから、それを着用すべきだろう。


「ご主人様、着替えは私が手伝います」


「頼むサリス。流石に胸の詰め物には詳しく無い」


「ライ様ぁ!」


 ニコルが文句を言うが、無視だ。


 借り物の服だけに胸のサイズが合わない。そのため、昨日から何か詰めているのは知っている。何をしているのか聞かないのがせめてもの情けだ。


 しばらくすると「たゆんたゆん」と胸を揺らしながらニコルが出て来た。そのままクローディアのテントに向かったので、俺は本陣に帰った。


 本陣で経過報告を聞いているとクローディアが来た。一緒に来たニコルの胸がしぼんでいたが、何も聞くまい。メイドさんは将軍を迎えに行ったそうだ。


「ライ将軍、ご苦労様」


「朝早くから申し訳ありません」


「良いのです。して騎馬隊の正体は?」


「未だ不明です。南の砦から来たには少し到着が早過ぎます」


 昨日の昼前に伝令を送った場合、援軍なら明日の朝には着く。急げば今日の夜。


 伝令が到着すると同時に夜通し馬を潰す覚悟で走らせれば、今の時間にぎりぎり到着する。だがそれでは継戦能力を著しく損なう。


「近衛騎士隊だけ先行させたか」


 今し方到着した将軍が会話に加わる。メイドさんも一緒だ。


「名前からして実力者集団ですか?」


「そこそこだ。公王家の人間に関する事柄なら通常の指揮系統を逸脱出来る。伝令を聞いて飛び出して来たのだろう」


「それならば、着く頃には人馬ともに腹が減っているのでは?」


 クローディアが危ないから全速力で飛ばして来たのか。近衛の名を冠するならもう少し戦略的に考えて行動して欲しいものだ。


「ははは! ライ将軍の言う通りでしょう」


 将軍、笑い事では無い。


「近衛騎士隊、まもなく到着です!」


 兵士の一人が本陣に伝えに来た。


「さっそく出迎えに参りましょう」


 クローディアが外に出ようとする。


「クローディア様はここでお待ちください」


 俺が止める。


「え?」


 不思議がるクローディア。メイドさんが後ろで頷いている。


「まずは本物か確認する必要があります。クローディア様を守るならこの本陣が一番安全です」


 本物か確認。ついでに味方か確認。敵になっている可能性がある。


 女公王になれる血筋だ。野心があるなら、このチャンスにクローディアを手篭めにする。


 相変わらず、自分の身がどれだけ危険に晒されているのか理解出来ていない。


 12歳前後では無理も無いのか?


 それでもこういうのは守役がしっかり教育するもの。


 他国人の俺ではクローディアの置かれている立場がいまいち分からない。


「確かに。話を聞かずにそのままクローディア様を砦に連れて行くかもしれん」


 将軍、それは既に誘拐だ!


 円陣の外で騎馬に乗せられたら、俺達では追いつけない。俺なら追いつけるが、これ以上力を見せ付けたくはない。


「私と将軍で出迎えます。部隊長とメイドさんはクローディア様の警護を」


「お任せください」


 部隊長に後を任せ、将軍と円陣の南に向かう。


「誰が来るか分かりますか?」


「女ならリティー。彼女はクローディア様の姉代わりで信用出来る」


 将軍は分かっていたか。


 クローディアの前での発言は演技か。


「男なら?」


「一戦覚悟する」


「了解」


 無理な行軍もこの国を支配するためなら冒す価値がある。近衛隊の男が全員そうでは無いと信じたいが、将軍の口ぶりからして、楽観視出来ない。


 敗戦で兵士の信任を失った将軍と無理を押して救援に来た近衛隊長。二人が火花を散らしたら、ここにいる兵士はどちらに味方するか? どちらに味方する方が得か?


 俺が将軍代行でいる限り、兵士は俺を見限らない。


 《ドラゴンスレイヤー》と近衛隊長なら、誰も近衛隊長に味方しない。昨日野次馬を追い払うのが大変だったレッサードラゴンの死体も後押しに役立つ。


 ……ここまでの絵図を書いたのはメイドさんか。


 メイドさんが考える落とし所は何処だ?


 このままずるずる引き摺り込まれるわけにはいかない。

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