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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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野営 中編

「このままライ殿に続投を頼みたい」


 申し訳無さそうに将軍が言う。


「私が続投するには問題があるのでは?」


「大丈夫です。イライジャ殿下の命令書を作成します。ライ様は傭兵将軍として、将軍代行を続けてください」


 メイドがさらっと公文書偽造をすると宣言した。情報部か? それとも公王家の特殊部隊か?


「情けない話ですが、ライ殿の威光に縋る他無いのです」


 部隊長がダメ押しして来た。


 俺のカリスマが無いと持たない。それがこの3人の考えか。


 クローディアを前面に出したら、俺はいらないはず。仮にも第1公女。兵の人気は未だ高い。逃げなかった事も勘案すると、以前より人気が高くなっている。


 もしかして、彼女を出したく無いのか?


 彼女が兵の人気を博しすぎたら、継承権争いに巻き込まれる?


 ここでも政治か。


 そう仮定するなら、俺が将軍代行をしても良いか。


「期間は砦に着くまで、で良いか?」


「はい。最長で5日と見ています」


 メイドの答えを聞いて、この件を受ける。


 報酬は俺とイライジャが協議して決める事になった。


 どうやら第1公子直々に動かないといけない案件みたいだ。


 次は商人と荷物の話に移った。


「荷物にあった違法な品々はそちらに任せる」


 俺が次元収納した荷物からも何点か見つかったので引き渡しておいた。


「物は軍で預かり、処置は上に任せる」


 将軍が答える。


「接収した荷物はどうする積もりですか?」


 部隊長が心配そうに聞く。


 俺の権限で許されているが、公国人としては認めたくない。


「砦で売れる値段の2倍で俺が買い取る。馬車の修理と換えの馬の代金も全額出す」


「そこまでしなくても良いのでは?」


「その代わり、この事は砦に着くまで内緒だ。商人に優しい顔を見せるわけにはいかない。支払いはクローディア様がやった事にして欲しい」


 ちゃんと金額や馬車が死んだ商人の家族の下に行くかの監視もお願いする。


「よろしいのですか?」


 メイドが聞く。


「こうすれば、商人達はクローディア様の懐の大きさを語ってくれるだろう」


 兵士の人気は大丈夫でも、商人の人気は最低だ。


 公王家として、人気を取り戻すためのパフォーマンスが必要だ。


 そのために俺が悪役をやろう。


 頭の切れる商人ならクローディアにそんな金が無いと気付く。


 俺が金を出したと見抜ける商人は見所がある。


 そういう商人とは良い商売が出来そうだ。


「分かりました。必要な手配は私がやっておきます」


 メイドが上手くやってくれるみたいだ。


「他に何かあるか?」


「軍事の面では特に無い」


 将軍の話は終わりみたいだ。部隊長も同様だ。


「明日カッタルイに早馬で手紙を送ります。ライ様も送られるなら、明日の朝一番に受け付けます」


「それは助かる。屋敷に帰りが少し遅くなると伝えたかったところだ」


 メイドの発言を聞き、俺はメイリーズに手紙を送る事にした。


 明日も忙しいと言う事で、お開きとなった。


 俺は宛がわれたテントに向かった。10人は入る将軍用の大きいテントだ。俺と3人娘で使っているため、かなり広く感じる。


「お帰りなさい、ご主人様」


 サリスが出迎えてくれた。ポルルは寝息を立てている。


「起きていて、大丈夫か?」


 サリスもかなり疲れたはず。


「エルフですから」


 そうらしい。


「ニコルは外か」


「なんでも、叔父がここにいるとか」


 本当の叔父ではあるまい。盗賊ギルドの関係者か。


「ライ様、今大丈夫ですか?」


 ニコルが帰ってきた。おそらく俺の帰還を待っていたんだろう。


「大丈夫だ」


「紹介するね、私の叔父さん。今日始めて会ったの」


 補給物資1を守っていた線が細いおっさんが入って来た。


「また会ったな」


「いやはや、奇縁ですな閣下」


「して要件は?」


「山賊の情報を融通して頂きたい」


「俺も余り知らんぞ」


「拠点で何か手に入れたと聞きます」


「あの書類か。サリス、何かあったか?」


「南方の土豪と思われる名前が二つほど。黒幕に直接通じるものは無い様です」


 サリスには夕食の後、拠点で見つけた書類を読ませていた。何も出て来ないと思っていたが、土豪の名前が出ただけ上々だ。


 俺はサリスが示す場所をチラ見し、内容を確認する。


 そのまま、おっさんに渡す。


「俺には不要だ。処分を頼めるか?」


「お任せください」


 盗賊ギルドに取っては値千金の書類だ。


「他に何か?」


「蛮族の件は首都で上が説明に出向く様、手配致します。判断を下すのは少々お待ち願いたい」


 ポルルの一件は盗賊ギルドがかなり深く関わっていたか。少なくても、拠点の男は盗賊ギルドの仕事だと疑っていなかった。すなわち、ギルド内部の情報が筒抜けで、情報戦で敵に完敗した。


 俺がポルルの肩を持って、カッタルイに敵対すれば、面倒になる。実際は国ごと滅ぶが、そこまでは認識出来ないだろう。


「俺が不在の間、勝手な真似はするな」


 釘は刺しておく。上の思惑は知らぬ。だが敵対するなら潰す。


 屋敷に押し入り蛮族を無理矢理強奪しようと思えば出来る。そこまで短慮だとは思わないが、盗賊ギルドは内部に何らかの問題を抱えているみたいだから、安心出来ない。


「それは大丈夫です」


「そうか」


「ライ様から何か要望は有りますか?」


「そうだな……。黒幕の正体が分かったら教えてくれ」


 盗賊ギルドに手が無くても、今日の戦いで俺は目立ちに目立った。黒幕の9割方成功した企みを一人で引っ繰り返した。これからは黒幕が俺の事を知っている前提で行動しないといけない。


「分かり次第、すぐに伝えます」


 おっさんはそう言って、静かに退出した。


 最後の身のこなしからして、結構な使い手だ。最初会った時は微塵も思わなかった。一般人に紛れるのが上手いのだろう。盗賊ギルドには出来るやつはまだ相当数いる、と無言で言って来たか。


 明日も早いが、余裕がある内にメイリーズ宛に手紙を書く。


 リザードマンとレッサードラゴンを倒した事、ポルルの一族の事、クローディアを助けた事。将軍代行についてはかなり詳しく書いた。最後に帰還予定が10日ほど遅れるが心配しない様に伝えた。


 有能なメイリーズの事だ。この手紙を受け取ったらカッタルイ中を走り回って色々やってくれるだろう。……急に帰りたく無くなったのは気のせいかな?


 寝転がりながら、考える事はただ一つ。


 妹の件で手一杯なのに公国の存亡を掛けた戦いに巻き込まれるとは、不覚! 一体誰を斬ったら良いんだ!?

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