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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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クローディア 前編

「クローディア様、お初にお目にかかります。私はライ・フリージア、アルドスタン王国子爵の次男です」


「危ない所を救って頂きありがとうございます。ご存知の通り、私はクローディア、カッタルイ公国の第1公女です」


 形式ばった挨拶が終わり、本題に入る。


「クローディア様、これからどうされる御積りですか?」


 ここで国内問題で干渉不要と言われればそれまで。


 助けて欲しいなら、今後の事を考えて協力するしか無い。


「それは……」


 頼みの将軍は気を失っている。俺の持っていた回復薬が間に合い、少ししたら復帰出来る。回復薬が無ければ確実に死んでいた。どうやらこの軍は実戦をする前提で組織されていないみたいだ。


「ライ殿に指揮を取って貰いましょう」


 顔が青白く細長い騎士が進言した。彼は最後尾の部隊長で、俺と一緒にクローディア救援に来た男だ。倒れている将軍と彼が唯一生き残った指揮官だ。


「ですが……」


 他国人に指揮を任せるのを渋るのは当然だ。


「ライ殿はイライジャ殿下の命令でここにいるのです」


 あの時の発言をここで持って来るか。部隊長をやっているだけはある。


「本当ですか!?」


 驚いたクローディアが俺に聞いてくる。


「私はイライジャ様に与えられた任務を遂行中です。クローディア様の救出は任務遂行に必要だと判断し、介入しました」


 嘘は言っていない。


 クローディアが連れている調査団が全滅したら任務遂行が不可能になる。


「指揮官が足りない状況で、日没までそう時間はありません。ご決断ください」


 部隊長がクローディアに決断を促す。


「クローディア様、ここは取引をしましょう」


 部隊長は軍人としては良いが、政治は駄目みたいだ。


 何故俺がこんな事で骨を折らねばならないのだ?


「取引ですか?」


 クローディアが興味深そうに聞く。


 内容を要約するとこうなった。


 1.ライに軍全体の指揮権を明日の正午まで渡す

 2.ライはクローディアをはじめ、生存者を守る

 3.山賊撃退の功績はクローディアのもの

 4.ライはイライジャの命令でクローディアを助けに来た


「如何でしょう?」


 明日の正午になれば将軍も復活している。そうなれば俺が指揮を取る必要が無くなる。クローディアは俺がこのまま指揮権を簒奪して公国に仇名す事を心配していた。


 クローディアには悪いが、こんな弱卒を率いる位なら、金にものを言わせて王国兵か蛮族を揃える。


 功績に関してはクローディアを納得させるための利だ。山賊に負けた公女なんて大恥をかかなくて済む。本来は俺の功績だが、そうなると公国の方が叙爵しろと言って来そうだから、回避したい。


 それでも他国の貴族が指揮権を得るのは政治上面倒だ。それなら今回は上から正式な任務を受けていた事にすれば良い。事後報告になるが、イライジャとクローディアが口裏を合わせれば問題無い。


「姫様、受けるべきかと」


 クローディア付きのメイドまで参戦して来た。


「分かりました。お受けします」


 クローディアが即決した。


 あのメイド、ただものでは無いな。


「ならば死体をどうするか決定してください。後は私の裁量で軍を動かします」


「味方の死体は持ち帰ります」


 クローディアがきっぱりと言う。


 公国騎士は他国騎士に比べて能力は7割程度だが価値は10倍と言われている。


 公国は領土が狭く、南北貿易の要衝として栄えている。


 そんな中で軍に入ろうとする者はほとんどいない。


 公国は騎士と兵士を手厚く扱う事でなんとか必要数を確保している。防衛に徹すれば大国が侵攻を諦める規模を維持するために腐心している。


 遺体を回収して家族の下に送る事は公国軍を維持する上で重要だ。


 だが、この状況で遺体に固執しては全滅もありえる。俺が継続して手伝わなければ8割以上の確率でクローディアも死体の仲間入りだった。


 だから部隊長やメイドが俺に指揮権を渡したかったのか。他国人の俺なら死体を捨てて動ける。それとも、俺が奇跡でも起こすと期待したか?


「アイテムボックスがあれば、持ち運べます」


「アイテムボックスはありません」


 クローディアには貸していないのか。公女より遥かに重要なので理解出来る。そもそも補給物資だってアイテムボックスに入れて運べば、こんな足が遅いだけの輜重隊は必要無い。


 この長蛇の列は表敬訪問時のインパクトと輜重兵の遠征訓練を兼ねているのだろう。騎士と兵士は公国の誇りだが、輜重兵は農民や商人の丁稚だ。輜重兵は荷物さえ持てれば良いから戦闘訓練もろくに受けない。


 他国に遠征出来る余力が無い公国らしい。俺からすると輜重兵を軽視しているようでは公国の未来はお先真っ暗だ。攻める事が出来なれば、いずれ守りきれなくなる。


 南方を情報部が混乱させて時間稼ぎをしているが、最近はその手が通用しなくなっている。クローディアを砦に送って士気を高めるのも、南方対策だ。北方は勇者召喚まで静かだが、召喚後はどう動くか?


「私のアイテムボックスを使います。信頼出来る騎士の同伴をお願いする」


 他国のアイテムボックスの中身を見るのは外交上良く無い。公国騎士の眼前で入れて目録を作って貰うしか無い。


「ありがとうございます!」


 クローディアが笑顔を見せる。騎士達も安堵の表情だ。俺がどうやってクローディアを諦めさせるのか冷や冷やして見ていたのだから、分からなくも無い。


 ここで畳み掛ける。


「では、部隊長はここから500メートル先辺りで野営の準備を。馬車で円陣を組めば一晩は持ちます。物資もアイテムボックスに入れますので、その目録も頼みます。盗賊は首だけ入れて、死体は私が後で燃やします」


 矢継ぎ早に出す命令に騎士達が動き出す。


「回復薬の類は野営本陣に出しますので、本陣と救護テントの設立を最優先で。料理は豪勢に、酒も1杯までは認めます」


「夜の防衛対策はどうします? 現在の兵力では足りないかもしれません」


 部隊長が聞いて来る。


 戦える騎士と兵士を合わせても30人残っているかどうか。戦闘での怪我と疲労も考えると夜に使えるのは10人弱かもしれない。


「誰か、案はあるか?」


「モンスター、血、丸」


「エルフもたまに使う方法です」


 解説屋サリス曰く、強いモンスターの新鮮な血は弱いモンスター避けに使える。ここには数は多いが弱いモンスターしか出ない。


「南方に訓練で行った時に蛮族が使っているのを見ました」


「噂ではサンドスコーピオン相手にも有効らしいです」


 騎士の数名が声を上げる。騎士仲間の発言なら公国軍の者なら信じるだろう。


「後は手頃なモンスターか」


「レッサードラゴン!」


 ポルルゥ! 余計な事を。


 チラリとひと睨みするとサリスの影に隠れた。


「ご主人様、ポルルの言う通りかと」


 サリスも同調する。


 分かっているが、他で代用したかった。


「血はレッサードラゴンのを使用します。アイテムボックスから出す前に全軍に通達してください。ポルルとサリスは血の撒き方を指示せよ」


「お任せください、ご主人様」


「ポルル、得意!」


 夜の対策は二人に任せよう。


「ならば、全員作業開始! 日没までには終わらせるぞ」


「はっ!」


 全員が動き出す。


 俺の仕事量だけ多いのは気の性か?

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