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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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白髪の君

 それから数日は平和だった。俺の心労は計算外にして、振り返ってみる。


 やたらと豪華な馬車が納品され、俺は何処から突っ込めば良いのか分からなかった。


「少し豪華すぎないか?」


「侯爵が乗る馬車ならライ様にお似合いです」


「運良く、発注後にキャンセルされた馬車がありました」


 メイリーズとアルフレッドのコンビがこの程度当然、と言う顔をしている。


「凄いです」


 左腕に抱きついているニコルが言う。


「主様、凄い」


 右腕に抱きついているポルルが言う。


「いー!」


「むー!」


「二人共、俺を挟んでケンカするな」


「はぁい」


「はい」


 ニコル、自分が男だという設定を忘れていないか? 変な噂が立たないか心配だ。ポルルも張り合う必要が無いだろうに。


 それでも同年代だ。良い友達同士になるかもしれない。


 ニコルをガイド役に馬車を試乗してみた。歩くだけでは見られない景色も見られ、中々有意義な時間だった。


 近所に俺のお披露目も兼ねていた、と後で聞いた時は顔が引き攣った。


 錬金術士の頑張りもあり、石鹸もどきが完成した。彼の妹やメイド連中の間では好評だ。ある程度使って、アレルギーなどの問題が出ないかテストだ。


 それに形が綺麗じゃない。個人使用には十分だが、貴族用ともなると、見た目が大事になる。それについてはメイリーズが口を出しているので、任せておいた。


 屋敷の2階から綺麗な歌声が聞こえるとメイド連中が噂するようになった。ミルファの先生とも話したが、ミルファは歌うのが好きなのであって、必ずしも歌姫に向いているわけでは無い。


 身内限定で歌って貰って、適正を見極める事にした。歌姫にならないなら、そろそろ結婚相手を見つけた方が良いかもしれない。結婚は数年先としても、婚約者がいないと色々噂される年齢になっている。


「大技は隙が多い、もっと組み合わせを考えろ!」


 ミルファの歌に耳を傾けながら、蛮族の少年相手に模擬戦をやる。日々の鍛錬の余暇でポルルが推薦した子を鍛えている。やはり魔法を無意識に使っている。子供なのに大人並みの動きが出来るのもこのためだ。


 模擬戦が終わると、ギャラリーが解散する。


 サリスは青空教室で読み書きのレッスンを再開する。勉強している蛮族でもやはり族長の戦いは気になるらしく、サリスが休憩時間を設けて観戦を許可している。


「流石、ご主人様です」


「そうか。それより、どう視えた?」


「やはり無意識から意識的に魔法を使うにはなんらかの心理的なハードルがあるみたいです」


「ポルルだけ何か違うからな」


「大人が全員そうなのか、興味深いです」


「その内分かるだろう」


 サリスと蛮族強化の方策を話し合う。体系的に強くなれる方法を示せれば、知恵をつけても弱体化しないかもしれない。


 生活が安定したので観光案内所に向かう。そろそろ強くなるために動き出さないといけない。


「白髪の君、私の事は良いですから、逃げて!」


 蜥蜴の被り物をした男に捕まっている女性が懇願する。


「大丈夫だ、君を見捨てはしない!」


 貴公子の格好をした白髪の男が格好良くポーズを決めて言う。


 見守っている観客が拍手喝采する。


『なんだこれは?』


 俺は人だかりが気になって近付いて見た光景に絶句した。


『さあ?』


 羽虫は平常運転だ。


「行け、ワイバーンども!」


「ぎぇー!」


 同じく蜥蜴の被り物をした4人が白髪の男に踊りかかる。


 見た目重視の殺陣で白髪の男が4人を打ち倒す。


「ワイバーンロードよ、もう後が無いぞ!」


「小癪な!」


「さあ、レイラ姫を解放しろ!」


『レイラ姫?』


『公国では正体不明の高貴な女性の渾名にレイラを良く使う』


『そうなの』


『あの女性も話を盛り上げるために追加されたギミックだろう』


『ふうん』


 羽虫は気付いていないのか?


「おっと、動くな! これ以上近付けばこの女の命は無いぞ!」


「卑怯な!」


 観客から野次が飛ぶ。悪党役も中々やる。


「さあどうする、白髪の?」


「こうする!」


 白髪の男がペンダントを握ると光が溢れ出す。


「なんだこれは!?」


「神々よ、邪悪を退ける力を私に!」


『発光する魔法道具で神々の助力を演出しているのか』


『そうなの?』


『かつての勇者が光を纏って戦った伝説があるから、それにあやかっているのだ』


『宿主様って物知り?』


『この手の娯楽では常識だ。俺が屋敷を抜け出して良く観戦していたからな』


「ぐぉぉぉ! 眩しい」


「今だ。くらえ!」


 白髪の男が蜥蜴の被り物をしている男を斬る。


「白髪の君、ありがとうございます!」


「レイラ姫、私は当然の事をしたまでです」


「なら、このまま私を国元までエスコートしてくださいますか?」


「私で良ければ、喜んで」


 抱き合う二人。


 観客のテンションは最高潮に達した。


 キャストが一列に並び、観客に手を振る。


「これにて『白髪の君、ワイバーンに捕らわれた姫君を助ける』を終えます」


 ナレーター役が盛大にお辞儀をする。観客がおひねりを投げ込む。


「白髪の君の次の活躍を乞うご期待ください!」


 無いから。そんな活躍しないから。


 俺は内心、強く誓う。


 俺はそそくさと現場を離れる。


『ふうん、それで主役になった感想は?』


『気付いていたのか?』


『あの女のせいで最初はちょっと混乱したけど』


『あの偽乳、許さん、かな』


『案内所の人ね』


『証拠が無いから何も出来ないが、いずれ意趣返しの一つでもしてやる』


『ねえ』


『なんだ?』


『私も名前が欲しいな』


 羽虫がまたなんか変な事を言っている。


『名前?』


『そうそう! いつまでも羽虫とかおまえじゃ味気ないから』


『名前ねぇ』


 羽虫が名前じゃなかったのか? いや、流石にそれは酷すぎるか。


『謎のお姫様につける名前が何処かに落ちていないかな?』


 露骨な催促だ。


『レイラでどうだ?』


『うん! ありがとう宿主の君!』


『その呼び方は無しで』


『はぁい』


 レイラと馬鹿話をしてストレスを発散している内に観光案内所に到着した。

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