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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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朝食後 中編

 ミルファの件が一段落したので、彼女には退出して貰った。蛮族関係の事には関わる予定が無いみたいだし、俺からも関わらせる気は無い。


「ポルル達の教育をどうするか?」


 読み書きと出来れば足し算と引き算。それ以上は期待薄だ。


「文字、習う、弱くなる」


 ポルルが反対する。


「読み書き出来ても弱くなるわけでは無い」


「主様、強い、例外。土豪、読める、雑魚」


 ポルルの中では俺は比較対象では無く崇拝対象になっているのか。これでは俺を例には使えない。


 どうするか。


「ご主人様、エルフは蛮族と交流があります。私が説明しましょう」


 サリスが助け舟を出してくれた。


 てっきりポルルを説得してくれるかと思ったら、俺が説得されていた。


 蛮族は長い歴史で読み書きが出来る者を文弱と見下していた。敵である土豪は読み書きが出来るが蛮族相手に手も足も出ない。読み書きが出来ないモンスターは蛮族に取っては脅威。南特有の弱肉強食の世では知恵がある程弱い。


 それでも、詐欺を働く土豪対策として、読める努力をした蛮族もいる。しかし、蛮族は読み書きを習うと弱体化した。理由は不明だが、教育を担当していたのがエルフだったので報告は本物だろう。


 何故そんな事になるんだ?


 待てよ。


 ポルルとの決闘。彼女は魔法を使った。


 魔法は難しい魔法理論を暗記してやっと使える。更に属性魔法の相互干渉理論を齧っていないとあの威力は出せない。


 感覚か? フィーリングだけで高等魔法を独自アレンジして格闘技と融合させたのか。これを理論的に説明できて論文に纏められたら、ポルルは大賢者と持て囃される。


 そうか。何となく見えてきた。


「なるほど。感覚派か」


「どう言う事です、ご主人様?」


「あくまで仮説だが……」


 1+1=2。俺達は何故そうなるのかも知っている。蛮族の1+1は10にでも100にでもなる。彼らの理論は間違っているが、その間違った答えを実現出来る野生の勘を持っている。力尽くで答えを変えられるのだ。


 無知故に最強。蛮族の強さの秘訣がこれだとは意外だ。


「正しき事を知る事で弱くなるとは、面白い考えです」


 サリスは感心している。


 それ故に教育は思わぬハードルに直面した。弱くなるなら、教育する事は出来ない。しかし蛮族の理論が通じるのは南の土豪相手のみ。公国か帝国が本気で南進政策を取れば、蛮族は滅びる。


 蛮族が10人前なら帝国は1000人の兵をぶつける。全ての蛮族を集結させ、最低限の共同歩調が取れる様になれば、帝国も侵攻を躊躇する。


 帝国が南進するかどうかは不明。しかし過去の勇者召喚では、魔王討伐後の国家戦争が起こっている。今回は特に帝国が力を入れているみたいだ。メイリーズにも確認したのでほぼ間違い無い。


 矛先は王国か二重王国だと思うが、征服し易いのは南だ。統治し辛いのも南だ。


 いかん。話がそれた。


「ご主人様の懸念は分かりました。時代が動くなら蛮族は今のままでは辛いでしょう」


 サリスが同調してくれる。


「かと言って、何が出来るか」


「この件、私が蛮族と調整してみましょう」


「頼めるか?」


「お任せください」


 蛮族は人族よりエルフを信じる。サリスに丸投げになったが、ここは彼女に任せるのがベストだろう。


「教育を試すのは良いですが、そうなると予算をどうしますか」


「蛮族、運動、必要」


 メイリーズが資金の事を問う。孤児院と学校となるとかなりの金が必要だ。表向き稼ぎが無いから、心配になるのも無理は無い。


 ポルルが欲しいのは屋外の訓練施設か。孤児院と学校と訓練施設となると更に計画が巨大化する。裏庭の敷地内で収まるが、子供の数が数倍に膨れ上がったら引越しを考えないといけない。


「金の心配は不要だ。公国の国家予算相当は持っている。後でアルフレッドに預けておく」


 金銀だけで3倍超。マナメタルも入れたら20倍弱。100年掛けて採掘する金山を俺は3日で採掘出来るのだから、当然だ。


「それなら何故もっと大きな買い物をしなかったの!?」


 固まっている中でメイリーズが一番最初に復活した。ポルルは何を言っているのか理解出来ていないので、皆が固まった理由が分からない。無知、恐るべし。


 メイリーズは数百人の奴隷を買えば、それだけで公国相手に発言権を確保出来ると知っている。今の数では子爵家の次男が道楽で屋敷を買った程度の扱いだ。保有資産と行動がチグハグなのだ。


「俺の戦闘能力なら上位3指、個人資産なら上位100人に入るだろう」


 皆、固唾を呑んで俺の声に耳を傾ける。


「だが、俺は一人だ。一人で出来る事などたかが知れている」


 俺がこのまま覇道を進めば、国を相手取っても勝てる。


 しかし、一人では守れない。治められない。


 だから、人手が要る。


「そんな俺が大量に人を集めても有効には使えない。今の数でも仕事の割り振りが大変なんだぞ」


 最後はちょっと明るく言う。


「そうですが……」


「旦那様は大きな組織を作る際の中心人物を集めておられる最中なのですね」


 アルフレッドが一行で言ってのけた。俺の格好良い前振りが、これでは痛い自慢話にしかならないでは無いか!


「そう、その通り! メイリーズには政治関連を指揮って欲しいのだ」


「私ですか?」


「おまえしかいない」


「分かりました」


 メイリーズの顔が少し赤いが、きっと暖炉の熱のせいだ。


「サリスにはエルフ、ポルルには蛮族関係だ」


「委細承知」


「ポルル、無理」


「えっ?」


 サリスは良いとして、ポルルが拒否するとは意外だ。


「私が説明しましょう」


 すっかり解説家業が板についているサリスが話し出す。


 族長代理だったポルルは俺に負けた事で俺が族長に就任。族長代理の地位を失ったポルルは部族から蹴り出され部外者となった。


 昨晩ポルルが部族の皆と距離を置いていたのはこのためか!


「客人、扱い」


 艱難辛苦を共にしたポルルを蹴り出したく無い部族はポルルを客人として扱った。本来は族長の俺が認めないといけない。しかし、昨日は引越し等で忙しかったので、部族の年長者の多数決で決定した。


「分かった。当面は客人扱いする様に族長として言い渡す」


「主様、ありがとう」


 ポルルの今の身分だが、蛮族社会では俺の所有物。「物じゃない」と言いたいが、蛮族の社会制度に明るくないのでサリスに聞く。


「族長が決闘後に生き残る場合はレアですから、部族ごとに決まりが違います。ポルルの場合は二つほど選択肢があります」


 俺が捨てる。物だけに捨てても良いらしい。その場合はポルルは一人で生きていく事になる。俺の奴隷でもあるが、蛮族がこの法制度を理解しているとは思えない。


 俺が孕ませる。この場合は族長の愛人として部族に復帰出来るらしい。


「分かった。終生面倒を見てやる」


 捨てるなんて持ってのほかだ。


「主様、子作り」


「待たんか! まだそういうのは早い」


「残念」


「数年待て」


「待つ」


 ポルルが同意してくれた。


「言質を与えるとは、ご主人様も中々やる」


 しまったぁ! いつの間にか既成事実化させられてしまった。


「一人も二人も同じですわ」


 メイリーズ、それは違うから。

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