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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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奴隷商 後編

「話を聞こう」


「実はこれは他の奴隷商が仕入れた商品なのですが、奴隷になるのを拒否しておりまして」


「奴隷魔法で如何様にも出来るだろう?」


「ですが、命と引き換えに主を殺す事は出来ます」


 奴隷魔法では相手が死にたく無いと思う限り効果を発揮する。しかし、死を覚悟した者には効果が大幅に減退する。


 そもそも奴隷魔法なんてスキルは存在しない。精神支配を専門とする《闇魔法》と紋章学の合わせ技でしか無い。ネタバレをするなら、強力な暗示でしか無い。


「そもそも、そいつらは戦争捕虜か何かなのか?」


 恐らく複数だ。


「それが、奴隷商の話ではそうなのですが……」


「相手が違うと」


 厄介事の匂いしかしない。


「相手の言い分では、安全圏に移送する契約だったと」


「それなら相手が公国の法制局に訴え出れば良いだろう?」


 契約があるのなら、奴隷商が一方的に負けてお仕舞いだ。


「相手は南の蛮族でして、公国法でも人族扱いされるかは半々です」


 南か! それも蛮族か。


『どう言う事?』


『南は常に戦争中だ。土豪が蛮族を引き込み、小国が乱立している。蛮族は人族だが生活習慣が余りに違うため、法律上の扱いが面倒なんだ』


 土豪は蛮族を使い潰そうとしても、逆にその蛮族に滅ぼされるケースが多い。公国に有益な土豪は優遇される。今回の蛮族はたぶん公国寄りの土豪の敵だ。


「政治上の敵対勢力か」


「その通りです。はい」


 しかし、風向きはいつ変わるか分からない。今回の対応で蛮族が公国を襲う可能性もある。公国なら跳ね返すだろうが、その仮定で被る被害は本物だ。


 言うなら政治犯だ。返せないし、解放も出来ない。


 俺が買って、機を見て解放すれば良い。


 それが公国の思惑か。


 俺は公国の貴族では無い。


 王国は奴隷禁止だ。


 俺は王国法に乗っ取って行動した。


 公国のアリバイとしては合格点だ。


 土豪では文句を言えない。


 公国から追加支援を貰う程度だ。


 蛮族はどう動くか?


 読めない。


 面倒な。


 でもこれは公国上層部への貸しになる。


 役に立つか?


 南には《王権》持ちがいない。


 南は小国が乱立状態。


 公国は統治能力を持つ高級奴隷を売っている。


 俺の資金力は上限知らずだ。


 布石となるか?


 布石とするか……。


 布石とする!


「とにかく会って見る」

 興味無さそうに言う。さて何が出てくるか。


 しばらく待つと女子供が17人来た。中には乳飲み子が数人いた。


 全員に奴隷紋が浮かんでいるが、余り効いていない。《魔力可視》で見える。ボディペイントを施しただけの状態だ。


「この者達です」


 イブゲスも対応に苦慮している。護衛10人で囲んでいる程だ。


「私が名はライ。リーダーは誰だ?」


 俺も対応方法が分からない。まずは穏健に接してみる。


「あたい、ポルル」


 一歩前に出たのは12歳の少女だ。他の蛮族は認めているみたいだ。


 手足にワッカを嵌められている。奴隷紋が反応したら両手足のワッカがくっつく魔法道具の一種だ。そこそこな確率で誤作動する。ある程度強ければ自力で粉砕出来る。


「そうか。話を聞きたい」


「部族、戦争、行く。子供、安全、移送」


 たどたどしい共通語を繋ぎ合わせると大凡理解出来た。


 ポルルは族長の娘。部族は土豪に雇われ戦場に。族長は女子供を安全な場所に送った。依頼した相手がポルル達を奴隷商に売った。


 イブゲスに確認したが、契約書は無い。


 扱いとしては南の奴隷狩りにあって、奴隷商に売られた女子供だ。


 どうするんだ、これ?


 大人なら利を説けるが、女子供になんて言う?


 養うのは余裕だが、俺は孤児院を運営する気は無い。


 誰も手を出したく無いはずだ。


 それにポルルは蛮族だ。その戦闘能力は折り紙付き。恐らく公国騎士数人分の強さだ。奴隷に出来たのも、赤ん坊を人質に取ったからだろう。


「何を望む」


「自由、復讐」


 ストレートだな。そういう意味ではやり易い。そして土豪が足元を掬われるわけだ。


「なら勝負だ。俺が勝てば奴隷。ポルルが勝てば自由だ」


「先祖の霊に誓って」


 ポルルが了承した。


 イブゲスがアタフタしている。


 戦う前に全員買うと言ったら落ち着いた。


「イブゲス、場所を用意しろ。それと以前気になった二人を持って来い」


「はい、ただいま!」


 恐らくワイバーンを出した場所で戦闘する事になる。準備が終わるまで残り必要な奴隷を購入しておく。


「食うか?」


「敵、施し、受けない」


「腹減っている相手を倒しても誇れない」


 ポルルが残り16人に振り返る。


 この集団のリーダーだけはある。未だ上下関係を維持出来ているのも、こういう配慮が出来るからだ。ポルルを落とせば、残りも落ちる。


「全員で食えば良い」


「分かった」


 ポルルが折れた。


 蛮族と言われているが、戦士の一族だ。誇りや決闘と言うキーワードには弱い。大人ならもうちょっと手強いが、痩せ細っている子供相手ならこれで十分だ。


「アルフレッド、応対出来そうか?」


「お任せを」


 アルフレッドらには、蛮族の流儀のままで良い、と伝えておいた。同僚では無くお客さんならプロのスタッフで十二分に対応出来る。メイドの何人かがイブゲスの部下にミルクを温めるように言っている。

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