みんなでクエスト
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ご飯を食べるべく『止まり木』に入ると、今日もまたティナがせっせと働いている。
本人も一応冒険者として登録しているが、戦闘が苦手なためもっと技能を身につけるまでは店の手伝いをしつつ戦闘技術を磨き、たまに雑用クエストをするという生活を送っているらしい。
ユウナは「すごく努力をしているので横で見ていますと、私ももっと頑張らなくてはという気にさせてくれますわ」と言っていた。
そんな一生懸命なティナを眺めつつご飯を食べ、僕たちは冒険者ギルドへ向かう。
今日は人が多くて忙しそうだったのでティナと話すことは出来なかった。
冒険者ギルドについた僕たちは、とりあえずパーティー登録をすることにしたため、受付へと向い、お姉さんに話しかける。
「すいません、パーティー登録をしたいんですけれど」
「はい。それでは皆様のギルドカードをお願いします」
言われ、皆がギルドカードを提出する。
「この中ではカムイ様が最高ランクですので、カムイ様をパーティーリーダーとしますが、よろしいでしょうか?」
「異議なーし」「いいですわ」「問題ありません」
「いや、まぁ、なんとなく予想はしてたけどね・・・」
ということで僕がパーティーリーダーとなった。
「リーダーとなられた方にはクエストの報告を主に行なって頂きます。また、魔獣襲撃があった際には、パーティーリーダーの通信端末にギルドからの指示を伝えます。なお、クエスト失敗のペナルティはリーダーだからといって重くなるわけではありませんのでご安心を」
「わかりました」
ペナルティが重くならないってのはいいな。これでリーダーの責任だーとかいう感じの厄介事を減らしてるのかな。
「パーティー名を任意で付けることができますが、どうしましょうか?」
「え?パーティー名ですか?」
何も考えてないけど、どうしよう。付けないとダメなのかな?
「はい、パーティーごとに個性を出したいってこともありまして、パーティー名を付けることができます。付けないといけないというわけではありませんので、付けたい時におっしゃってくださったら手続きをします」
「すいません、ちょっと皆にも聞いてみます」
「はい」
ここはひとまず皆に何か案があるかどうか聞いてみよう。いい案があればそのまま採用だ。
「皆、どうする?僕は何も考えてないんだけど」
「私はいい案は思いついていませんわ。ですがせっかくですので何か付けたいですね」
「私もありません」
「カムイと愉快な仲m「却下だ」えー」
「まったく、イヨは適当なことを・・・」
そこまで言いかけたところで僕の頭にある言葉がよぎったので、皆に提案してみる。
「なぁ、今思いついたんだけど、『アブサード』ってのはどうだ?」
「それはどういう意味なのですか?」
とはてなマークを浮かべているイヨとユウナの横で微妙にアリアンが頷いている。
「あぁ、英語って言葉で不条理とか非常識って意味なんだ。僕もよく言われてる上に、アリアンだって今の常識じゃありえない存在だし、イヨやユウナだってヒューマンの中ではなかなか非常識な魔力量もってたりするだろ?だからいいかなーと思ったんだけど」
「なるほど、わたし達全員ある意味非常識ってことだねっ」
まぁ、イヨなんかは食べる量も非常識だけどそこは言うまい。
「それで、どうかな?」
「わたしはおっけー」「私も異存はありませんわ」「主が言うことならば」
アリアンはなんか怪しい感じだけど、とりあえず全員からオーケーをもらうことができたようだ。
そして、お姉さんの方へと向き直す。
「すいません、お待たせしました」
「決まりましたか?」
「はい、パーティー名は『アブサード』でお願いします」
「『アブサード』ですね、わかりました」
お姉さんが何かを入力していく。
「これでパーティー登録は終わりです。パーティー『アブサード』の初期ランクはCとなります。それではここから注意事項についてお話します。」お姉さんによると
パーティーでしか受けれないクエストを受注できるようになったり通常のクエストをパーティーでこなすこともできるようになる。が、パーティーで通常のクエストを行った場合、個人のランクを上げるために必要なクエストの数は多くなるので注意が必要。
今まで通りに個人個人でクエストを受注することもできる。
今のランクに合った、もしくは今のレベル以上のクエストをこなしていくとパーティーのランクも上昇させることができる。
とのこと。
まぁ、主に気をつけないといけないのは、普通のクエストをパーティーで受けたらランクアップに必要なクエスト達成数が増えるってところか。
「わかりました、ありがとうございます」
「はい、それでは『アブサード』の皆様の活躍をお祈りしております」
お姉さんにお礼を言って受付を離れる。
とりあえず、パーティー用のクエストってどんなクエストがあるんだろう?
ちょっと楽しみにしながら皆でどんなクエストがあるか確認していく。
Cランクのパーティー用クエストは魔獣討伐系が多かった。
他には別の都市からトウキョウまでの護衛クエストがあるかな。
都市国家「ムサシ」にはトウキョウ以外に大きなものを他の場所へ送ることのできる転移刻印は無いらしい。人を2~3人同時に運ぶのが限界なところもあるらしく、そういう都市は物資を受け入れることはできても送り出すことは出来ないとのこと。
んで、そういう場合の都市間移動は転移刻印じゃなくて普通に車とかを使う事になるらしく、魔獣と遭遇する危険性がグッと上がる。そのため、護衛クエストというものが生まれてくる。
でもまぁ、今回は日帰りだから護衛クエストは却下で。
この近辺の魔獣討伐クエストを受けよう。と考えているとユウナが『シルバーウルフ討伐』という良さ気なクエストを見つけてきたため、このクエストを受けることにする。
再び受付のお姉さんのところへ行き、クエストの受注をする。
「すいません、『シルバーウルフ討伐』を受けたいんですけれど」
「わかりました、それではギルドカードを提示下さい」
あれ?ギルドカード出すのって僕だけでいいのかな?
「パーティークエストの場合、全員分出したほうがいいんでしょうか?」
「いえ、リーダーの方だけ提示していただければ大丈夫です」
「わかりました、それでは」
お姉さんにギルドカードを渡す。
ちょっと手元の機械を操作し、終わるとギルドカードを返してくれる。
「受注完了しました。こちらのクエストの目安として10匹ほどシルバーウルフを狩っていただきます。それでは『アブサード』の皆様、いってらっしゃいませ」
お姉さんに見送られながら僕たちは外に出る。それにしても目安ってどういうことだ・・・?
「それは、シルバーウルフが基本的に5~6匹の群れをなしているということですわ」
僕の疑問にユウナが答えてくれる。
そうか、基本は狼だから群れで動くのか。
「ということは2つの群れを壊滅させて来いというクエストか」
「そうなりますわね」
「ありがとう、ユウナ。じゃあ早速向かおうか」
僕達は早速西門から外へと向かう。
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西門から出ると東門とは違い、昔の建物の残骸と思われるようなものが点在する荒野みたいな光景が広がっていた。
前に来たときは魔獣の襲撃で忙しかったからあんまり見れなかったんだよな。
「そういえば、シルバーウルフってどの辺で出るんだ?」
「街からちょっと離れたところで徘徊してることが多いねー」
「となると、出会えるかどうかは運か・・・」
これは思った以上に大変なクエストかもしれない。とおもったが
「いえ、シルバーウルフはヒトの匂いを嗅ぎつけて襲ってきます。ですので適当にぷらぷらしてたら割と簡単に会えますわ」
どうやら出会うのは簡単っぽい。
「え?それってだいぶ危なくない?」
シルバーウルフは単体でもCランクの魔獣らしい。それが基本的に群れになっているため、討伐はCランクのパーティー以上のはず。そんなにホイホイ出会ってたらかなりやばい気がする。
「その点に関しては余り心配いりません。シルバーウルフの生息域は非常に狭いため、その生息域を迂回すればほとんど出会うことはありません」
なるほど、そういうことか。さらにイヨによる補足説明によると、シルバーウルフが増えてくると生息域の拡大やら遠征をし出すやらで厄介となるため、ちょいちょい討伐クエストが出てるらしい。アリアンと二人して説明を聞いていたのだが、イヨの説明し終わった後のドヤ顔がうざかった。
出会ったらどんな戦術で戦えばいいんだろうなと考えていたところであることに思い至った。
「そうだ、僕ってユウナの戦い方を見たこと無い気がする」
「・・・そういえばそうですね」
「腰から剣を下げてるってことはその剣を使って戦うのか?」
「えぇ・・・あ、あそこにスモールベアーが居ますね。ちょうどいいので私の戦いをご覧になって下さい」
そう言うや、ユウナは剣を抜いてゆっくりとスモールベアーに近づく。
スモールベアーはラージベアーを単純に弱体化した感じのDランクの魔獣だ。
「【身体強化】」
ラージベアーが接近してきたユウナに気づき、戦闘態勢に入る。
「それでは、行きますわ」
ユウナが宣言し、同時にスモールベアーがユウナに襲いかかる。
ゆるやかな動きでスモールベアーの突進を回避したユウナが流れるような動きで剣を振るう。
その瞬間、スモールベアーの腕がぼとりと地に落ちる。
咆哮を上げ、残った腕で攻撃を繰り出すスモールベアーに対し、その攻撃をかすらせることなく躱し、冷徹に切り刻んでいくユウナ。
カムイはその剣技の美しさに見とれていた。
ユウナの剣技を見たことあるはずのアリアンやイヨでさえ初めてじっくり見るそれに見とれてしまっていた。
しかし、ユウナがスモールベアーにとどめを刺したところでその美技は終わりを向かえる
一同はスモールベアーの角を持って帰ってくるユウナをただ見ているしかなかった。
「ユウナ、すごいな」「すごい!すごい!」「お見事です」
皆が口々に賞賛の言葉を送る。
「ありがとうございます」
ほめられてユウナの頬が心なしか赤くなっている。
「あの剣技はヤマトさんに教えてもらったの?」
「えぇ、その通りです」
「それにしても、ユウナってあんなに強かったのか。あれだけ綺麗な技出せるんだったらAランクにもなれるんじゃないのか?」
「いえ、お父様には『剣舞』しか習っていませんので、体格差がありすぎる相手とか格上の相手だと勝てるかどうか・・・」
「そうだったのか・・・」
ですのでコツコツと実力を磨いてランクアップしていますと言ってユウナは笑った。
もうちょっと街から離れる方向にあるいていると、アリアンがシルバーウルフを見つけた。
「あちらの方角にシルバーウルフと思われる影が見えました」
「どれどれ・・・」
僕は【鷹の目】を使ってアリアンの指し示す方向を見る。
「お、10匹くらい居そうだぞ」
「お!ラッキーだね!」
「あちらも気づいたようで向かってきてますわ」
【鷹の目】を使っていたユウナが言う。
「じゃあ、イヨは後衛でちょっと遠くに居るシルバーウルフの撃退を。アリアンとユウナは側面からくるシルバーウルフを頼む。僕は正面から来たやつを倒す」
「「了解!」」
もうすぐ近くまでシルバーウルフが来ている。気を抜かないようにしないとな。
カムイはシルバーウルフたちが到着する前に補助魔術を自分及び皆にかける。
「【身体強化】【硬化】【外装:対象指定『イヨ・ユウナ・アリアン』】!外装は攻撃数発貰ったら砕けるから気をつけろ!」
外装は同時に多くの人にかければ掛けるほど一人あたりの防御能力が下がることがわかっている。3人同時にかけた場合ではCランク魔獣の攻撃を数発受けたら外装は砕け散ってしまうだろう。
カムイに礼を言い、イヨ・ユウナ・アリアンも【身体強化】を自分にかける。
全員が補助魔術をかけ終わったちょうどその時、雄叫びとともに1頭のシルバーウルフが突っ込んでくる。
「ッシィ!」
突進を回避するように身体をひねりながら、カムイはユウナとな違う力任せに剣を振ってシルバーウルフの胴を真っ二つに斬る。
体勢を立て直すと、シルバーウルフはこちらを取り囲むように展開していた。
気合を入れるように全シルバーウルフが雄叫びを上げたその瞬間、イヨが正面に向かって魔術を放つ。
「うるさいよ・・・【鎌鼬】!」
風の刃により正面に居たシルバーウルフが切り刻まれ、血を吹き出して絶命する。
一部のシルバーウルフは生き延びたが、それでも瀕死の状態でとても戦えるような状態ではない。
それに怒ったのか、周囲に居たシルバーウルフが一斉にカムイたちに襲いかかる。
襲い来る狼たちに対してカムイたちは冷静だった。
ユウナは全ての狼達の行動を予測して攻撃を回避しながら流れるように剣をふるって数を減らしていく。
アリアンは数頭の魔獣の対処はしたことはないため、苦戦しながらも格闘術を駆使して狼の数を減らしていく。
意外なのがイヨだった。正面に敵が居ないということでカムイがイヨのサポートに回って戦っていたのだが、少ないながらもカムイが対処できなかった左右同時にきた狼を杖でぶん殴って倒したのだ。
結局、シルバーウルフは15匹おり、この1回の戦闘でクエストを達成することができた。
アリアンが少し【外装】を貫通されており、腕に軽い切り傷を負っていたため、イヨが治療を施して早々に街へと戻る。
帰り道は特に何もなく、普通に街に帰ってくることができた。
冒険者ギルドへと向かい、クエスト達成の報告を済ますと今日は解散という流れになった。
「今日はありがとねっ!みんなでクエスト行けて楽しかったよっ」
「あぁ、こっちこそありがとな。またみんなで行こう」
僕の返答にえへへとイヨが照れる。
「じゃあ、またねー!」
「あぁ、またな」「またですわ」「失礼します」
イヨと別れた僕たちは、家に帰ってご飯を食べてサクッと寝ることにした。
みんなでワイワイしながらクエストもいいもんだと思いつつ、僕は眠りについた。
パーティー名は即席で決定(何




