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次回最終話


最終部分は下書きで1話分だったのに、④~⑦と、4倍になってしまいました

 獅子翁城から『黒影の森』までは、半日くらいかかってしまう。ビアンカ嬢が連行された転移先が、何処なのかにもよるが、秘術を使っても追い付けそうに無い。


 何か考えがあるのか、ジンジャーは城の車寄せまでやって来た。

 車寄せに、突然灰色の煙が立ち込める。臭いはしないね。眼にも染みない。魔法の気配がするな。何だろう。


 見詰めていると、煙幕を突き破って、何かが飛び出したんだ。キキーッと音を立てて停まったのは、銀色をした箱形の自動車だ。


「ターロッホ!」


 歯車卿だ。失われた『王者の歯車』製作技術に近付いたのか。若い頃、伝説の『スチームパレス』で見た、実在する魔法の歯車。それが『王者の歯車(ブライアンズギア)』。

 アタシと時計屋は、その再現に務めている。


「歯車の秘密を見つけたのかい」

「話は後だ。乗んな、お二人さん」


 アタシとジンジャーは、ターロッホの自動車に素早く乗り込んだ。ドアを閉めるか閉めないかのうちに、再び灰色の煙が立ち込める。ターロッホの最新式『魔石蒸気機関(エンジン)』が唸りを上げた。



 猛スピードで煙幕を抜けると、『黒影の森』だった。マーカーを辿れば、すぐビアンカに追い付ける。集中して探ってみれば、ビアンカも森に居た。


「こっち!」

「よしきた」


 周囲を破壊しない魔法の蒸気で車体を包み、衝撃吸収魔法でアタシ達自身も守る。歯車卿ターロッホは、運転も超一流。信じられないスピードが出る、強化魔法のかかった車を、事も無げに自在なハンドル(さば)きで、マーカーに導く。


「見えたぜっあれだろ」

「追い付いた」


 木々の向こうに、薄汚れた細身のドレスが見え隠れしている。ビアンカ嬢は歩いていた。ようやく我に返ったのかい。どうやら独りみたいだね。国境守備隊は、転移で帰っちまったんだろう。


 水さえ持たされて無いんじゃないか。他国の事には首突っ込まないって言ってもさ。黒い霧の件が無いと見殺しにする、ってのは後味悪いよね。


「本来、他国の重罪人を救い出す権利なんか無い」


 ジンジャーは、アタシの甘さを嗜めるように意見した。そのあたりは、厳しいよ、この人は。



「けど、今は、1人でも魔の者にしない事が重要だ」


 ターロッホを運転席に残し、アタシ達2人はビアンカさんの方へ近寄って行く。木々が遮って、時々姿が見えなくなるが、見失うことは無い。


 時計屋に借りた、小型のランタン型魔石蒸気発生装置に、光の魔法を仕込んでいるから、足元も明るい。

 魔石は、特殊な技術で魔法を固めた固形物だ。燃やせば燃料にもなる。砕いて魔法を解放する事もある。



 ビアンカ嬢は、散歩でもするように昼なお暗い森を、のんびりと歩いている。灯りも持っていないのに。彼女は、何をするのもゆっくりだけど、まさか恐怖までゆっくり認識するのかね?


 アタシは、ちょっぴりゾッとした。

お名前由来一覧


ジンジャー――疫病すら祓う最強生薬

ダイシー――アイルランドの酔っ払い女

イーヴォー――鏡に映る像

ターロッホ――吟遊詩人。英語でテレンスにあたる名前

アロエ――火傷に効く癒しの薬草

ビアンカ――白

ネロ――黒

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