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ゆっくり御令嬢ビアンカ婚約破棄の顛末  作者: 黒森 冬炎


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7/7

隣国のゆっくり御令嬢ビアンカ篇、最終話

「ビアンカさん」


 声が届く距離になって、ジンジャーが声を掛ける。何時もの優しげでわざとらしいニコニコ顔から、穏やかで嘘臭い声を発する。

 そんな嘘臭い語りかけじゃ、心は動かせないんじゃないかね?


 かといって、アタシはどうやって声をかけたら良いのか解んない。御令嬢でも、イーヴォーみたいな奴なら、すぐに仲良く慣れるのに。



 ジンジャーの呼び掛けに、ワンテンポ遅れて、ビアンカ嬢が立ち止まる。アタシ達は、尚も近付く。ビアンカ嬢は、酷くゆっくりと此方に顔を向けた。木々の隙間から、不思議そうに下がる金色の眉が覗いている。


 あと数メートルで、手が届く。



 と、その時、淡々とした声が、薄暗い森に響く。


「あれえ、どうしたの?君、随分汚れちゃってるけど」


 黒い霧を纏った青年がいる。アロエ王子だ。

 ジンジャーが走り出す。


「ビアンカさん」


 掛ける声は優しい。けれども、ビアンカ嬢は、もう私達を見ていない。ちょっぴり朱が射した頬が、ちらりとみえた。



 アタシは、銃を構えて『酔蒸気(ヤスザケスチーム)』を、黒いアロエ王子に吹き付ける。


「その手はもう古いよ」


 アロエは、にやついた顔をアタシに近付ける。


「くそっ大人になって、酒に強くなりやがった」


 アタシは、次々違う銃を取り出す。蒸気に混ぜる魔法も変えてみる。どれも効かない。相談できる歯車卿ターロッホは、ずっと向こうの車に残ってる。



「まあ、お優しくて、お強いのねえ」


 ゆったりとした優しい声が、ボロを纏った御令嬢から聞こえてきた。空色の瞳が、嬉しそうに輝いた。


「ビアンカさん、駄目だ」


 ジンジャーが、あきれる。


「君こそ、優しいひとだねえ」


 アロエの声に、感情が宿る。2人は黙って手を取り合って、微笑んだ。それからまたアロエは、あからさまな侮蔑を乗せて、アタシに向かって言ったのさ。


「無様だね」


 アロエは、黒い霧になる。ビアンカ嬢は、嬉しそうにその霧に身を任す。


 嘲る声が静かに消えて、ビアンカ嬢はもう居ない。




「見てたのに、簡単に連れてかれた。目の前で、また」


 ジンジャーは、アロエ王子が連れ去られた時の事を思い出したのだろう。


「でもさ。なんかお似合いだったよ」

「ダイシーは気楽で良いよね」


 滅多に見せない泣き笑いをして、ジンジャーはアタシをギュとした。しばらくじっとしたあとで、アタシを見詰めて微笑んだ。とても自然な笑顔だよ。


 アタシがにっこり見詰め返すと、初めて会ったあの頃みたいに、


「神獣城に帰ろう。私の素敵な可愛いダイシー。大好きだよ」


 って、アタシの頬にチュッとした。


 fin.

最後まで読んで下さりありがとうございました。


この作品を投稿したとき、メリーバッドエンドという言葉は知っておりました。この作品をメリバと読むか、否か、は人それぞれと思います。少し迷ったのですが、タグつけてみました。



※「ハピエンタグに騙された(#`皿´)」の方、ご一読くだされば幸いです

↓↓『ゆっくりご令嬢ビアンカ「作者解題」』↓↓

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関連する物語(神獣王国物語シリーズ)


ビアンカ婚約破棄初出――シリーズ第1話『緑玉に映る少年』

ビアンカ魔の者化初出――シリーズ第4話『魔絃の奏者』

追記『神獣王国完結編』にもこのカップルの姿があります。


神獣王国シリーズを通して、ゆっくり御令嬢の婚約破棄事件は散見されます

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― 新着の感想 ―
[良い点]  難しい物語と感じました。ビアンカ嬢としては最初から連れ去られることを望んでいたのでしょうか? [一言]  読ませて頂きありがとうございました
[良い点] 完全な第三者視点での物語は新鮮でした。 [気になる点] メリーバッドエンドなのか、それともハッピーエンドなのか…。これだけではわからないですね。 個人的には、メリーバッドエンドとハッピー…
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