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最強の成長するユニークスキル異界の心臓で、異世界無双 ~エルフ美少女に愛され養われ、精霊美少女にも愛されてハーレム状態~  作者: 手ノ皮ぺろり
第一章『精霊の森』七幕『新たな力の発現』

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固有精霊の力、その三

 デルライラムの家へと向かいながら、先ほど聞き流したある言葉を思い出していた。ん? 確か、もうすぐ昼って――ええ!? ひ、昼!? 大遅刻じゃねぇか!?


「はあ、初日は遅刻で二日目は、それを遥かに上回る大遅刻だなんて……」


 今度こそ破門されたりしないだろうか。徐々に不安が胸中に広がって行くが、背中からジジのお気楽な声が聞こえる。


「何じゃ? 刻限に遅れただけで破門されるのか? ふむ。そもそも明確な時は指定されていなかったはずじゃ。鷹揚に構えておれば良い」


 まあ、それはそうなんだけど。

 やはり先ほどまで雨が降っていたのか、枝葉からは水滴が落ち、少し開けた場所には、小さな水溜りが出来ていた。

 森の木々の間を進み、デルライラムの家が木陰から覗き始める。


「おい、もう降りてくれ。師匠の前じゃ隠れてるんだぞ。あ、そうだ。イシとデイも一応かくしておくか」


 ジジは一度、不満そうに口答えした後、身体の中に隠れた。師に対して隠し事をするのもどうかと思ったが、見つかった時の面倒を思って精霊たちに透明になるよう命じる。

 家の庭先を見ると、窯の隣にデルライラムがしゃがみ込んでいるのが見えた。濡れた施設を点検しているのだろうか?

 森から一歩ふみだした所でこちらに気付き目が合う。片方の眉が上がり、怪訝な表情を取る。


「おい、随分と遅いご到着じゃねぇか。カイト」


 あからさまな嫌みを受けて、どうしたものかと思案していたが、デルライラムは家の入り口へと向かいながら続けた。


「まあ、今日の午前は大雨だったからな。修行には適さねぇ。……腹へってんだろ? また飯を持って来てやるぜ」


 ドアを開き、奥へ消えて行ったが、しばらくして食糧の乗った大皿を持って戻って来た。突き出されたそれを「ありがとうございます。いただきます」と受け取った。デルライラムはこちらに一声かけて、再び家に戻って行く。


「食ったら、皿はその辺に置いておけ。昨日の続きをやんなら、今日はよく考えて始めるこった。初期段階が成功するまで呼ぶんじゃねぇぜ?」


 釘を刺されてしまった。……とりあえず、昼飯を食べるか。また近くの切株に腰かけると、ジジがするりと抜け出して、昼食を目を輝かせて見つめて来る。やらないぞ、と無言で牽制の視線を送り、食糧に手を付ける。

 冷めてはいるが、今日も焼かれた肉は香ばしい匂いを放っていた。ジジの目当ては恐らくはこれだろう。

 今日は、パンに裂け目を入れて、そこに肉とキャベツを挟んで食べるかな。水滴の輝いていたキャベツを何度か振って、水気を切る。パンがふやけると嫌だからな。そして、それを肉とパンと一緒にかぶりつき味わう。

 うむ。今日も上手くも不味くもない味だ。強いて難点を挙げるなら、昨日よりもキャベツがしおれている所か。皺が多く、舌触りが悪い。逆に昨日は、よく焼かれていた肉は、僅かに火加減が足りなかったのか、肉汁が多く感じた。旨み自体は変わらずと言った所だが。


 しばらくして昼食を平らげ、水筒に口を付け一息つく。そしておもむろに立ち上がる。さっそく修行を始めたい所だが、その前に試したい事があった。家の玄関を見やり、デルライラムが現れる気配がないか確かめてからイシとデイの透明化を解く。ジジはそれを不思議そうに見つめる。


「何じゃ? 魔法の修行ではないのか?」


 これは必要な事だ。おざなりには出来ない。墓所での霊あいての仕合と実戦を経て気になった点を洗い出す。

 イシ、デイ。お互いに向き合って、全力で押し合うんだ。お前たちのパワー差を把握しておきたい。


 言葉の通りに精霊たちは空中で押し合い、最初は拮抗していたが、徐々にデイが上回り始める。しばらく経っても状況が変わらない事から偶然ではなく、単純なパワーはデイの方が優れていると判断した。ジジはその様子を興味深そうに眺めている。


「パワー勝負はデイの勝ちか。今の感じだと、強いと言っても、二十から三十パーセントくらいで、圧倒的って訳じゃなさそうだな」


 押し負けたイシは落ち込み、勝ったデイは嬉しそうにしている様に見えた。


 次は左手を真っすぐに伸ばし、スタートラインを作り、そこに精霊たちを並ばせる。ジジに頼んで、真っ直ぐに十メートルほど先の、森の入り口あたりに立ってもらう。短い距離だが、スペースがないので仕方ない。


 よし、次は、二人のスピードを試すぞ。俺が合図したら、今だせる全力でジジの場所まで飛ぶんだ。


 行けっ!


 二人は、同時にスタートを切り、全力でゴールへと向かう。どちらが速いかジジに確認してもらおうと思っていたが、見るからにイシの方が優位だった。弾丸の様な速度で飛んだイシは圧倒的な差をつけて勝利する。デイの飛翔そくどは小鳥くらいだろうか? それでも十分に速く思えるが。


 今度はデイが落ち込み、イシが勝利を誇る。


「いいぞ。スピードはイシが圧倒的だな。デイも遅い訳じゃないけど……。よし、二人とも、もう一回こっちに並んで、今度は巨大化して飛ぶんだ」


 言われた通りに、二人はスタートラインに並び、身体を大きくした。そして、合図と共に、全力でゴールへ向かう。だが、小さい時と比べるとどちらもかなり遅くなっていた。地球の基準で言う様な、普通の人間が走るくらいの速度だな。


「ん? ほぼ同着か。それでも、イシが僅かに速かったみたいだけど、巨大化はスピードを大きく犠牲にする、と……。あ、二人とも大きくなったままでもう一回おしあってくれ」


 お互い向き合った精霊たちは、身体を巨大化させたまま押し合う。その結果は明白で、今度はデイが圧倒的なパワーを見せてイシを押しやった。


「ふむ。今の感じだと巨大化はパワーを大幅に強化するって事か」


 基本的なステータスの変化は大体つかめてきたな。後は……。


 イシ、お前が小さい基本形態の時に、どのくらいの間トップスピードを維持できるかみたい。後はまがった時に速度が落ちるかも。その辺りの空中をしばらく全力で飛び回ってみてくれ。あ、人や物にぶつからない様に注意してな。


 イシは空中に弾丸の様に飛び出したが、やはりカーブする時には速度が落ちていた。更に数秒もすると目に見えて遅くなっていく。最初は小さな身体ににつかわしくない猛烈な風と音を起こしていたが、徐々にそよ風となり、肌の表面や髪の毛にこそばゆい感覚を起こす。


「そこまででいいぞ。……やっぱり精霊とは言っても色々と制限が多いんだな。イシ、しばらく休憩して、最高速度を出せると思ったタイミングでもう一回とんでみてくれ」


 頭の中で秒をカウントする。体感だから多少いい加減だけど、今は仕方ないかな。イシが再び弾丸の様に飛び出したのは、十秒ほど経ってからだった。思ったよりもずっと早く回復したな。このスピードが必要な時がきっと来るだろう。そんな漠然とした予感があった。それは、強敵と戦う事を意味する、出来れば避けたい未来ではあるが、強くなると決めたのだから、今もてる全ての力を把握しなければいけない。


「うん。基本的な事は、一通り試したかな? あ、そうだ――」


 イシ、お前の棘って伸ばしたり出来るんだから、逆に引っ込ませられないのか?

 イシは懸命に棘を縮めてしまおうとしている様だが、わずかな突起が残り、完全に球にはならなかった。まあ、これでも十分だな。


「後は――」


 イシ、身体の半分だけを棘なしに出来ないか? お前を手で掴んだ時に、痛いんだよな。

 小さく健気な精霊は要望に見事に応えて見せた。その状態で掴みやすい様に、少し大きくして握ってみる。


「うんうん。いいぞ! この状態ならお前を掴んで殴ったりも出来そうだな!」


 先ほどあの空き地で精霊銀の剣を手に取ったが、剣術の心得なんて趣味で始めた素振りくらいで皆無に等しい経験値だ。初めから使えるとは思っていない。ならば、原始的ではあるが、殴りつけるのが一番だろう。それに、あまり考えたくはないが、硬質の棘が刺さった相手は大変な事になるだろう。多分。


「最後は、隠れた状態の移動かな」


 イシとデイを透明にし、全力で飛ばそうと思ったが、これはすぐに結果が分かった。視覚では捉えられないが、二人の居所は把握できる。透明化の状態では、ごくゆっくりとしか動けない様だ。ふむ。人間の歩行速度くらいか。かなり遅いが、こちらが見えない相手への不意打ちは得難い手札になる。慎重に運用しないとな。


 ここで、興味深そうに見守っていたジジが口を挟んで来る。


「カイトよ。精霊たちの力を確かめるのは良いが、魔力を消耗しておるぞ。修行はどうするのじゃ?」


 「言われなくても分かってるよ」と返し、今回いちばん確認したかった事項に移る。


「イシ、デイ。今から俺のやってみせる魔法を再現できるか試してくれ」


 そして、ハキスの初期段階の一連の動作を行う。昨日と同じく右手には小さな砂粒がまとわりつき、鉄を引き当てる事は出来なかった。


 このままじゃ出来ないのは、分かってるんだ。後は、この二人には可能か、だな。

 精霊たちの身体がにわかに輝き出し、地面へとマナが放射される。


 そして――。


 一瞬あとには、二人の身体に鈍い銀色の金属片がまとわりついていた。その事実に驚きつつも、半分は予想通りだったと身震いし、高揚感が沸き起こって来る。


「やっぱりお前たちは、俺より上手く扱えるんだな!」


 「ふむぅ。これは驚いたぞ、主よりも手慣れておるな」ジジはしきりに頷きながら、精霊たちを見つめる。生来の適正の違いだろうか、両者とも土ゆらいの精霊ならば当然の結果と言えた。


 デイの身体についた金属片をつまみ、目を近づけて確かめてみる。うん。昨日、師匠が見せてくれたのとほぼ同じだ。多分、鉄だな。

 しばらく金属片を見つめていたが、戻そうとした所で指を滑らせて落としてしまう。


 すると――。


 地表に接触した瞬間に、金色のマナの波動が迸り、地面に放射状に幾筋もの模様を描いた。それぞれの長さは二メートル程に及ぶ。辿った跡には、小さな土の盛り上がりが出来ている。


「え? 何だ、今の現象は?」


 いつの間にか隣にやって来ていたジジが、答えてくれた。


「その金属片は、既に精霊素が励起され、土の精霊の力をまとっておる。そこへ余剰の魔力が残っていたのじゃな。過ぎた力が注がれると、今の様に弾けるのじゃ。その鉄片は魔法による生成物じゃからな、魔力が消えれば瞬く間に土に帰る」


 どういうことだ? もう一度いま落ちた鉄片を拾い上げ、左手に持ち、右手からマナを照射してみる。すると、弾かれる様に、金色の奔流が巻き起こり、そよ風を起こした。


「本当だ。既に精霊の力と属性が決まっている場所に、さらにマナを注ぐと爆発するみたいに弾けるのか」


 精霊素にはそれぞれに、マナを受け入れられる許容量と、魔法の発現までの必要量が決まっていて、余剰分を注ぐと周囲に向かって弾ける、そういう解釈であっているのだろうか。


 待てよ! そうなると、昨日やったみたいに無茶苦茶な量のマナを地中に注ぎ込まなくても、既に許容量の限界に達した部分に何度も薄くマナを通してやれば!


「より少ないマナ量でも、地中深くまで広範囲に届くんじゃないか!?」


 善は急げだ。意識を霊体に集中し、しゃがみ込み右手を地面に付ける。そして、ゆっくりと、今度は、出口を絞る様に、少量ずつマナを注いでいく。視覚に左右されない世界に、地中の様相が表れ、自らのマナが地下水の様に、流れ込んで行く姿が見えた。

 一定の深さと範囲に達した所で、マナの金色の輝きは滞留を始める。そこへ、もう一度かさなる様に、注いでいく。すると、余剰分が弾け、さらに奥深くへと伸びて行く。それを何度か繰り返し、足元に巨大な蟻の巣状に展開された金色の空間を眺め、そこから伸び出した一本の糸を手繰り寄せた。


 隣からジジの感嘆の声が響く。


「おお! 出来ておるぞ!」


 その声に答える様に、ゆっくりと目を開いた。右手には、酸化しているのか赤味がかった金属片がまとわりついていた。


「ふむ。赤茶色だけど、とりあえず師匠にみてもらうか」


 精霊たちを透明化し、慌ててジジが隠れ様とするのにも構わず、デルライラムの家のドアをノックし、呼びかけた。


「師匠! 出来ました! 見てもらえませんか?」


 その声に、屋内から動く音が聞こえ、次いで足音が近づき、ドアは開かれた。そこへ、金属片をまとった右手をかざして見せる。

 デルライラムは目を鋭く細めて金属片を確認していたが、やがて、ゆっくりと唇が動き出す。その様子を息を呑んで見守る。


「ああ、酸化しちゃいるが、確かに鉄だ。何かコツでも掴んだか? 思ったより早かったな。よし、これが出来たなら炭素を引き出すのも簡単だろう。次の段階へ移るぞ」


 「やった!」嬉しくて思わず叫んでいた。それを聞いたデルライラムは苦笑しながら、庭へ歩み出てくる。


「そんなに嬉しかったか? だがぁ、二段階目はさらに厳しいぜ?」


 デルライラムは、ゆっくりと庭の中央に陣取り、右手を地面へ向けた。その様子を見守りながら、心の内には一抹の不安と、弾ける様な期待感とが同居するのだった――。

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