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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書①
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調査報告書① 名前を考えましょう

翌日、農奴頭の弟さんから、

奴隷の女の子を譲り受けることが出来た。

正確には、サテラさんが自分の奴隷として隷属契約を締結している。


主人で会った農奴頭が亡くなった為、

女の子は農奴頭と交わした隷属契約は、

無効となっているらしい。

難しい手続きを踏むことなく、

女の子を身請けすることが出来た。


驚くことに、女の子に名前は無かった。

最底辺の奴隷にはよくある事らしい。

便宜上、数字が名前として当てがわれる場合もあるのだが、

女の子にはその便宜上の名前すらなかった。

それだけこの女の子が、

農奴頭の組織ではどうでもいい立場であったという事なのだ。

「縁起か悪い」

ただそれだけの理由で売られてしまうってのは、

かなり現実的な話だったらしい。

対価として手持ちの金貨を支払おうとしたのだけれど、

農奴頭の遺体を運んでくれた礼として、

無償で譲り受けることになった。

猫の子を貰う訳ではないので、

正直それじゃあんまりだと思う。


この村に立ち寄った為、

馬を借りるべく向かっていた砦から、

だいぶ遠回りしてしまっていた。

だが、昨日の馬と荷馬車を金貨10枚で買い取ることが出来たので、

砦には向かわず、この村から聖都を目指すことになった。

まぁ、早い話が差し引きゼロって事だ。


乗馬ではなく荷馬車である為、

歩みはそれほど早くない。

だが徒歩で聖都に迎うより、

遥かに移動は楽になった。

それに、操車は女の子が出来るようなので、

道中、僕も操車の技術を教えてもらわなくてはいけない。



「とにかく名前を決めなくちゃいけないわね」


隷属契約の魔法儀式は、主人と隷属者の名前が必要である。

女の子は14才。洗礼を受けていないため、

魔素(マナ)真名(マナ)を記録してはいかった。

農奴頭と隷属契約をしていたとすれば、

借りの名前くらいあってもよさそうだが、

彼女はそれも知らないらしい。


隷属契約には「合意」と「強制」の種類があるらしい。

前者は比較的簡単な魔法なのだが、

後者は高等魔法に属しているらしく、

とても開拓村の住人が扱える魔法ではないとの事だった。

まぁ、今となってはそれがどちらかなのかは分からない。

とにかく今名前が無いと契約に支障が出てしまう。


「・・・どんな名前がいいかな?」


操車している女の子に、荷台からサテラさんが話しかけるが、

身振り手振りの動きはあるのだけれど、

さっきから一向にしゃべる気配がない。

緊張して喋れないのか、

声を出すことが出来ないのか。

時折か細い声で「え」とか「あ」とか、

リアクションはしているのだが、

どちらなのか判断が付かない。


彼女にしてみれば、突然主人が殺された翌日、

助けたとはいえ見ず知らずの僕たちに身請けされたのだ。

なにがなんだか分からないと混乱するのは無理もない訳で・・・


幾度となくサテラさんが話かけるが、

彼女は上手く言葉を発することが出来ない。

それではということで、サテラさんは、

「リリー」「アリア」「レイリー」など、

名前の候補を上げていくのであるが、

女の子はいずれにも首を縦に振ることは出来ない。

おそらく名前が嫌だというより、

聖騎士であるサテラさんから名前を付けてもらう事が、

畏れ多いと恐縮しているのかもしれない。

さすがのサテラさんも困った様子なのだが、

僕はといえば、女の子の名前など思いつく訳もない。

「それいいですね」とか「かわいい名前です」とか。

合いの手をいれるくらいしか役に立たない。

これが夜のお店で源氏名を付けろと言われれば、

100通りの名前くらいポンポンでてきそうな気がするのだが・・・



女の子の風貌は、

いかにも奴隷という様な、

粗末な麻の服をすっぽり被っている。

いわゆる貫頭衣(かんとうい)という奴隷服だ。

背丈は僕よりも頭ひとつ分くらい低い。

元の世界で僕の身長は180センチあったのだが、

このダウンサイジングされたアバターの身長は160センチくらい。

それより低いってことは140センチあるか否かってところか。


14才ならばこんなものなのかな。

ショートカットなのだが、赤毛で癖のある巻き毛。

目元はすっかり赤い髪の毛で隠されている。

目は口程に物を言うという言葉があるが、

喋らない上に目が見えないのだから、

この子とコミュニケーションをとるという事は、

なんとも難易度が高そうだった。


スレンダーなカラダなのは、

奴隷であるのだから仕方がなかろうが、

栄養状態が良かったとしても、

この子は「ちっぱい」だったに違いない。

そう僕の神に与えられしギフトが教えてくれた。(うそ)



「・・・もう考えつかないや。こうなったらボーズくん。キミが責任を取るんだよ」


「そんなサテラさん。途中で投げ出さないでくださいよ。僕は名前を付けるセンスってのが欠片もないって言われてるんですから」


「でもキミは記憶がなくなってるんでしょ。誰から言われたの?」



うっ。

勢いで言ってしまったが、

名前を付ける才能がないのは本当だった。

飼ってたネコの名前は「ぺス」だったし、

イヌの名前は「ミケ」だった。

金魚に至っては「金魚(きんとと)」だ。

それに人工知能の相棒は「エミリー」。

男の声だったら「セバスチャン」にしようと思ったくらいのベタ加減。

それが14才の多感なお年頃の女の子に、

僕が名付け親になるという事は、

なぜ魔物に襲われた時に助けてくれたのかと、

恨まれる事になるのは目に見えている。


そういえば、こっちの世界の名前って、

地球と同じようなものが多い気がする。

「サテラ」だって「マーサ」だって、

地球でも同じ名前は聞いたことがある。

聴覚の自動翻訳補正は、

名詞まで補正されることは無いはずだ。


もしかして、僕がやってきたゲートの他にも、

地球とつながっている別のゲートが存在していて、

人の行き来がなされているって可能性はあるのだろうか。

過去にそういう事があったとすれば、

文化的な遺産として残っていても不思議ではない。

調査してその答えに行きつく先に、

ゲートに繋がる道となっている可能性があるな。


「・・・じゃ、これはどうでしょう。彼女赤毛なんで「アン」ってどうですか?」


ベタだ。

ベタ過ぎる。

さすがに「赤毛のアン」はこっちの世界ではないだろうが、

「赤毛だからアンにしました」ってラーメン屋で見かける

「冷やし中華始めました」ってのと同じレベルだ。

こんなベタな名前は、この子もきっと嫌がるだろう。



ぱちぱちぱちぱち・・・・



女の子、手綱を持ちながら両手で拍手喝采している。

こうして女の子の名前は「アン」に決まった。











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