*運動会
今日は10月に行われる運動会について話し合う為の全校集会の日だ。
柊は特支生の為、運動会には参加しない。
他の見学者と一緒にカウンセリングルームのモニターで見学する予定になっている。
柊の他には、6月の遠足で知り合った犬飼 大和が見学組になる。
大和の持つ犬飼家由来の能力は通常よりも丈夫な体と身体能力を身につける事が出来るので、トラブルを避ける為にハンデを受けるか見学をするかを選ぶ事ができるからだ。
桜ノ宮は1学年4クラスなので、運動会はクラスごとに4色のチームに分かれる。
今日の集会で6年生の各クラスの代表が引いたくじによってどの色になるのかが決まる。
*
柊がお昼ご飯を終えて奏とカウンセリングルームでまったりしていると、保健室に繋がる扉がノックされたので、向かいのソファーに座っていた奏が対応のため扉を開けると、柊の担任の蘇芳が中に入って来た。
「全校集会の事で話があるんだ、入っても良いか?」
「おー、良いぞ」
「一緒に見学する予定の大和が、こっちで見学したいって希望しててな」
「それはカウンセリングルームで見学って意味か?それとも、柊と一緒にって意味か?」
「柊と一緒にと言う意味だ」
「ふーん、どうする?柊」
「良いよ」
「そうか、悪いな」
「もう来てんのか?」
「いや、体育館への移動の時に来る」
「はいよ」
蘇芳は運動会についてのプリントを奏に渡してから部屋を出て行った。
「ほい、プリント」
「ありがと」
「参加したかったか?」
「んー、特には」
「柊の運動能力ならかなり活躍できそうだけどな」
「注目されるの、苦手だから」
「それもそうか」
奏と柊がプリントを眺めながらのんびりしてる内に授業開始5分前のチャイムが鳴った。
「そろそろ来るかな」
「大和だっけ?柊と仲良くなりたいのかね」
「僕ってよりも、杏路?」
「何で杏路?」
「そこまで見てないから分からないけど……」
「杏路が犬飼の能力持ちだから気になってんのか?それともアレか、はとこなのが関係してんのか?」
「そうなの?」
「確か父方の従兄弟の子供っつってたか?親同士の仲は結構良いみたいだが会った事は無いって言ってたけどな」
「父親から話を聞いて興味を持った、とかなのかな」
「かもな」
奏が新しいコーヒーをマグカップに注いだ所で、部屋のドアがノックされる。
「入って良いぞー」
「……お邪魔します」
「遠慮せず座れ。で、何飲む?」
「では緑茶を」
「おー、渋いな」
そう言って奏は冷蔵庫から500mlのペットボトルのお茶を取り出し、大和の手に渡す。
「ありがとうございます」
「おう、ゆっくりしてろ。俺は個室のモニター、セットして来るから」
「はい」
扉の開いている方の個室に奏が向かうと、大和は柊の向かいのソファーに座った。
「迷惑だったか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「そうか……」
大和は下を向いてペットボトルをいじりながら、ゆっくり口を開いた。
「……その、今日はあの人は居ないのか?」
「杏路の事?」
「あぁ」
「今日の送迎は別の人だから。ごめんね」
「いや、良いんだ。俺が勝手に気にしてるだけだからな」
そう言って大和が小さく苦笑した所に奏が戻って来た。
「話の邪魔したか?セット終わったぞ」
「いえ、大丈夫です」
柊と大和は個室の中に移動する。
部屋の扉を閉めた奏は柊の分の飲み物と焼き菓子の入った籠を机の上に置いた。
机の横の壁に設置されたモニターの中には第一体育館の中の様子が映し出されている。
少しすると、ざわざわと騒がしい体育館の壇上にスーツ姿の蘇芳が映った。
柊が奏の方を軽く見ると、奏は少し笑った。
「あいつ生徒会の顧問、押し付けられてんだよ」
柊が画面の中に視線を戻すと、ちょうど蘇芳が話し始めた所だった。
『静かに、これから全校集会を始める』
壇上の中央で話す蘇芳の両脇に椅子が並べられている。
右側に並ぶ6人が生徒会役員、左に並んでいる4人が6年の各クラスの代表者の様だ。
プリントを見ながら蘇芳の簡単な説明を聞く。
蘇芳からの簡単な説明と注意事項の伝達が終われば、色分けの抽選会が始まる。
中央の机の上に白い箱が置かれ、代表の4名が机の前に並んだ。
4人の腕には赤、青、緑、白のはちまきが巻かれている。
『代表の腕に巻かれているはちまきが自分達のチームカラーになるので、覚えておく様に。各代表者は軽く自己紹介を、その後抽選を始める』
『6-1代表、相沢 誉。赤組の人は、よろしく』
『6-2代表、有馬 隼人。青だ』
『6-3代表、東雲 香苗です、緑の人はよろしくね!』
『6-4代表、八雲 真冬です。白組の方は、よろしくお願いします』
1組から順番に箱に入っているくじを引き、蘇芳が結果を読み上げて行く。
『5年、赤、2組。青、3組。緑、1組。白、4組』
『4年、赤、3組。青、4組。緑、2組。白、1組』
『3年、赤、2組。青、1組。緑、4組。白、3組』
『2年、赤、4組。青、2組。緑、3組。白、2組』
『1年、赤、1組。青、3組。緑、4組。白、2組』
くじの結果に、モニターの中が騒がしくなった。
「俺達は白組みたいだな」
「うん」
「良かったな、白は当たりだぞ」
「そうなんですか?」
「おう、有名どころの入ったクラスが一番多いからな」
画面の中の生徒は、各学年の教師によって色別に移動させられる。
これからチームごとに応援団員の選出や出場競技の話し合いを始める様だ。
運動会に出場しない柊達には関係ないので、おやつを食べながらのんびりする。
「大和は運動会、制限はあるが出れるんだろ?本当に出なくても良いのか?」
「はい。正直、ハンデがあっても勝負にならないと思うので」
「まぁ、犬飼は他の能力者とは違うからな」
奏は大和の言葉に頷くと、籠の中の焼き菓子を大和に差し出す。
「で、柊と一緒にいたいのは何でだ?」
ストレートな奏の言葉に一瞬詰まった大和は焼き菓子を受け取りながら目線を落とす。
「……どうしても杏路さんと話がしてみたかったので」
「何だ、本当に杏路が目当てなのか」
「すみません」
「柊に害が無いなら、別に良いけどな」
「ありがとうございます」
「確か杏路とはとこなんだっけか?」
「はい、父親同士が従兄弟になります」
「何で父親に頼まないんだ?話がしたいなら、その方が早いし確実だろう?」
大和は少し迷った様に言葉を探し、ペットボトルのお茶に口をつけてから口を開く。
「その、杏路さんは犬飼とは縁を切っているので……」
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