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錬金術の森~未成年孤児エルの半生~  作者: 一仙
第一章 森の迷い子
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36/97

36.ただいま

いつもお読みいただきありがとうございます。今回で第一章が終了となります。ぜひぜひ感想などを聞かせていただけると今後の励みになります。

 今日はゆっくりな出発となり、竜車が村を出る時には孤児院の子供たちが何人か見送りに来てくれてその中にはリックの姿もあった。たった一日の交流であったにも関わらず、子供たちは本当に一行に懐いてくれて「また来てね」と叫びながら大きく手を振って見送ってくれた。


 竜車は順調に進みもうすぐ森の入口へと差し掛かろうとしていた。そろそろ竜車ともお別れだ。ここでオーレルともしばらくのお別れになる。森の入り口で竜車を止め皆が準備している間にオーレルとエルは少し会話をする。


 「せっかく知り合えたのに少しの間会えなくなるのぉ。ワシの顔を忘れんでおくれよ?」

 「ほんの一か月くらいの話じゃないか!いつからオーレルはそんな寂しがり屋になったんだ?」


 寂しそうにエルと話すオーレルをレオが茶化す。それを見てエルは笑顔でオーレルに挨拶をする。


 「オーレル様。またワックルトへ行ける時には一番にご挨拶に行きますので!本当にありがとうございます。たくさん色んなお話を聞けて楽しかったです。」

 「ほほほ。ワシもじゃよ!いつか鍛冶や革の扱い方を覚えたくなったら他の鍛冶屋なんかに聞かずにワシに聞いてくれよ?」

 「もちろんです!頑張って勉強します!」

 「うむ!では、またの。」


 そう言ってエルの頭を優しく撫でる。準備の終わった一行が集まり別れの挨拶だ。ほんの一か月と思うが、そのほんのの間に何が起こるか分からないのが冒険者稼業だ。特に一行が向かうのは幻霧の森である。サームの小屋があるとは言え、冒険者ギルドのエリア危険度は1~5の判定の中で一級(最も危険)なのだ。


 「じゃあ、オーレル。すぐに水晶便を使えるようにはするから、それまでの間に情報を取りまとめを頼めるか。」

 「任せておけ。しかし、お主らだけで小屋を建てるなんて出来るのか。ワシが行った方が良いのではないか?」

 「そりゃ、オーレルがいた方が建てるのは早いし良い小屋になるだろうけどさぁ。やっぱり大工連れてくるべきだったか・・・」

 「ほらほら。それは散々話し合ったでしょ。行くよ。では、後の事は宜しく頼みます。」

 「うむ。任された。」


 オーレルが竜車に乗り来た道を帰っていく。エルは少しの寂しさを感じながら竜車を見送った。ダンの「行きましょうか」の掛け声で一行は森の中へと歩みを進める。やはりあの時と同じく森の中は薄暗くジメッとした嫌な雰囲気がある。


 「エル。ワックルトに行った時と同じように少しでも体調におかしなトコがあったら言えよ。ゆっくり休憩しながら行こう。」

 「ありがとう。今は全然大丈夫だから。」


 帰り道も行き道と同じように道々に生えている薬草や素材となる植物を採取・観察しながら進む。途中で見覚えある丘が見えてきた。その丘の上で今回もテントを張り野営となった。ジュリアとダンが夕食の準備をしてくれている間にエルは途中で採取した素材をスケッチしていた。レオは周りの警戒をしながら火の番をしてくれている。

 辺りが暗くなりはじめて一行は火の周りへ集まり話をする。話題としてはここまでにあった事も含めて今後の生活の事についてが主だった。レオ達の建てる小屋をどんな小屋にするかとか、どうせならサームの小屋も少し改築してエルの部屋を作ってはどうかとか。今まではどうしても話し合いや打ち合わせのような会話が多く、雑談のような事は本当に少なかった。


 「エルも自分の部屋、欲しくないか?」

 「僕は結構ソファも気に入ってるんだけどなぁ。」

 「まぁ、確かにエルもいつまでも居間で生活と言う訳にもいかんじゃろうなぁ。」

 「そうですよ。これから長く生活してギルド依頼を自分で達成してその報酬で本や道具を買った時に自分の部屋があると便利だよ?」

 「それに今は本を繰り返し読む方法でも十分知識は付いてくるでしょうが、今後自分で新たな可能性や調合方法・魔道具の開発等をするとなるとやはり図面や学説をまとめる為にエル様専用の机は必要になると思います。」


 レオ達はきっとエルの為に部屋を作ってあげたいんだろう。その気持ちはエルにも充分に伝わっていた。


 「じゃあ、勉強の成果を今後見てもらって何年かくらいの目途でその時にお師匠様からお許しがもらえるなら僕の部屋を作ってほしいかなぁ・・・」

 「そっか。確かに急いで作ってもエルもすぐに体も大きくなるだろうしな。ゆっくり考えても良いか。」

 「そうだね。一応計画だけしといていつでも建てられるようにしとけば良いね。その時にサーム様にも今の小屋で追加したい物とか直したい所とかも一緒にやる方向で。」

 「色々と段取らせてすまんのぉ。」

 「いえいえ。僕らも好きでやってますから。」

 「そういやさ、勉強の方はサム爺とジュリアで十分すぎるだろうけど、体は鍛えなくて良いのか?」

 「レオ?あなたが鍛えたいのは分かりますが、あなたがエル様に剣術を教えたりしたらエル様があなたのようにガサツになってしまいます!」

 「なんだと!ジュリアだって銀ランクの時に魔法を制御する精神力は体力を鍛える事でより強く鍛えられるって言って結構キツイ依頼とかギルドの訓練にも出てたじゃないか。」

 「っ!!それは・・・・・そんな事もありましたが・・・」

 「ジュリアさん、僕は何もかもに手を出して中途半端にはしたくないですけど、自分の身を守るくらいの強さは欲しいと思ってるんです。」


 エルはジュリアを真剣な眼差しで見つめる。


 「しかし、エル様。剣術やナイフ術は体力強化と共に学ぶ事ですから本当に大変ですよ?」

 「はい。もちろんお師匠様のお手伝いがまず最優先なのは変わりません。だから、レオやダンさんが僕に剣術やナイフ術を教えてくれている中で、僕が無理をし始めたなって見えたらジュリアさんが叱ってほしいんです。僕はよく倒れちゃうので・・・」

 「そう・・・ですね。分かりました!レオの事はしっかり私も監視します。エル様に無理がいかずサーム様の助手の務めをしっかり果たせるようにお手伝いさせていただきますね。」

 「おい!!エルは俺とダンに習うって言ったのに、なんで監視は俺だけなんだ!」

 「まぁ、こればっかりは仕方ないね。普段からの行いって事だよレオ。」

 「ちくしょ~!見てろよぉ!エルに無理させずに一端の剣士に育ててやるからな!」

 「ありがとう!レオ。ダンさん。ジュリアさん。」


 三人のおふざけにも満面の笑みで何の嫌味も無く感謝を告げるエル。三人は少し恥ずかしくなってしまう。そんな様子を嬉しそうにサームは眺める。


 「まぁ、いつも言うように長い修行期間となる。その中で座学が主の期間もあれば、体力強化を主とする期間があっても良い。エルの成長度合いで皆で判断していこう。ワックルトに行った時には冒険者ギルドで依頼も受けさせてやりたいしのぉ。だから体力を鍛えないと言う選択肢はないからの。レオ、ダン、色々と忙しいじゃろうが手が空いた時に頼めるかの?」

 「「もちろん!」です!」


 そんな幸せの会話の後、それぞれテントに戻り眠りに付く。ダンとジュリアは火の番だ。あたりは星すらも見えないほどの真っ暗闇。結界石と焚火が無ければあっという間に魔物の餌となる危険地帯が幻霧の森だ。静かな森の中、焚火のパチッと言う音が闇に響く。ダンが焚火を見つめたままジュリアに話しかける。


 「まだ無事に小屋に着けた訳じゃないが、やはり魔物の襲撃が無いな。」

 「・・・そうね。一体何が理由なのかしら。でも、エル様が授かったスキルにそんな効果があるようなモノがあったとも思えないわ。」

 「そうだな。効率化・・・だったか。」

 「生産系のスキルなのか戦闘系なのか、それすらも分からないんだからどうしようもないわね。」

 「生活の中で何かヒントがあればいいんだがな。」

 「ドゥンケル達はエル様と接触は?」

 「姫だけは接触したそうだ。」

 「えっ!?姫が?・・・反応は?」

 「・・・・・・・・」

 「・・・何?」

 「ドゥンケルが言うには姫はエル殿に会えて有難かったそうだ。俺たち以外で初めて人として見てもらえたって。・・・泣いてたらしい。」

 「一体なにがあったのかしら。」

 「彼女の中であの頑なな心を開けるだけの事だったんだろうな。」

 「姫はエル様に顔を見せたって事よね?」

 「そうだな。詳しい事は教えてもらえなかったが、姫がエル殿の事に関する依頼に積極的になってくれた事は有難いよ。」

 「そうね。どうしても人と関わり合うような依頼は受けたがらなかったから。」


 二人で苦笑いしつつ焚火を見つめる。そして、ジュリアに質問した。


 「以前にお前が言った事だが、エル殿の為に翼を抜けても構わないと言った事。」

 「・・・えぇ、言ったわね。」

 「それはなぜだ。あったばかりの元奴隷に対して感情移入するにしても相当な決断だと思ったんだが。それともそれほど翼はお前の中で重要では無くなっていると言う事か。」

 「それについてはいつかちゃんと話すわ。私の中でもちゃんと考えがまとまった訳ではないから。でも、翼は今でも私の中で一番大切な居場所よ。それだけは誤解しないでいて。」

 「・・・・分かった。」

 「ありがとう。」


 夜はさらに更けていく。ジュリアとレオが見張りを交代し、ジュリアはテントで仮眠する。レオは火の番くらいなら一人で大丈夫だと言うがダンは受け付けなかった。


 「休まなくて大丈夫か?移動だけとは言え、索敵させてるんだ。きちんと休みは取ってくれよ。」

 「大丈夫だよ。レオもエル殿と知り合ってから僕らにまで過保護になってるんじゃないか?以前はこれくらいの徹夜は当たり前だったじゃないか。」

 「いや・・・まぁ・・そうか。ダメだな。平和ボケしてるな。」

 「幻霧の森でこれだけ魔物に襲われないんだ。ボケても仕方ないさ。」

 「そうだな。・・注意深く気を付けてるつもりだが、やはり原因は分からないな。」

 「開路をした事でエル殿が魔力を持ったから、帰りは魔物を引き付けるかと思ってたんだけど、それもないとなるとエル殿に魔力が無かった事が原因では無かったって事だね。」

 「あのさ、・・・ちょっと馬鹿な推測なんだけど、聞いてもらって良いか?」

 「レオの直感は馬鹿に出来ないよ。なんだい?」

 「エルが今回授かった《隠蔽》のスキル。スキル恩恵以前に先天的にエルには魔物を引き寄せなくするようなスキルを持ち合わせていたとして、そのスキルが今回の隠蔽のスキルの効果でエミルさんにも読み取れなかったって可能性はないかな?」

 「・・・相変わらずレオの直感には驚かされるね。確かにその可能性はあるね。成長の声の内容を考えても今回エル殿が隠蔽を授かったのも【効率化】を隠す為なのではなく、もとよりその魔物を寄せ付けない≪何か≫を隠蔽するためのスキルだったんだとしたら。」

 「そうなんだよな。そんな気がしちゃってさ。」


 エミルが人物鑑定をした時に魔物を寄せ付けないような要因を見つけたと言う報告は無かった。とするならば隠蔽でそのスキルが隠されているか、スキルによって魔物を近づけなくしているのではないか。後者の場合は相当に原因を見つけるのは難しくなりそうだ。


 「自分たちが冒険者として成功する事に必死になってたのに、まさか幼い子供の成長を必死になって手伝ってるんだから先を争ってた他の冒険者からしたら良い笑いもんだ。」

 「何言ってるの。一番一緒に争ってたザックだって俺たちより先にワックルトの冒険者達のまとめ役を買って出て今や俺たちよりワックルトでは有名だよ。冒険者ってのはいつか後進の育成を考えなきゃいけない時期が来るのかもしれないね。」

 「俺たちもそんな時期って事か。まぁ、それがエルなら喜んで育てるけどな!」

 「あっ!レオが剣を教えて僕がナイフって話だったけど、どう言う指導をするつもりなの?ある程度、二人で方向性合わせとかないとハチャメチャな指導になっちゃうよ?」

 「そっか・・・そうだなぁ・・・俺が指導しようと思ってるのは・・・」


 男たちの喜びの声を闇は静かに飲み込んでいく。ゆっくりと夜は明けていった。



 久しぶりに小屋へ帰ってきた。たった10日程度の外出だったのだが、エルには本当に懐かしく思えた。ダンはレオと共にさっそく小屋を建てる場所を話し合っている。サームとジュリアはワックルトとレミト村で買ってきた物をポーチから出して整理している。これがこれからの日常になっていく。ワクワクしていた。エルの新しい生活が始まる。


 「エル様、何してるんですか。一緒に荷物運びましょう。」

 「エル、小屋の周りに作ってほしいもんないか?」

 「そんな事より先に切り開いてからだよ!」


 三人のいつもの雰囲気にエルは自然と笑顔になる。そんなエルの頭にポンっと優しく手が置かれる。


 「エル。・・・・おかえり。」


 あぁ、嬉しい。サームの何気ないこの一言が自分の居場所を教えてくれる。


 「はい・・・ただいま帰りました!」


 エルの人生はここから始まる。

誤字脱字ありましたらご指摘お願いします。第一章終了です。第一章と言ってもこれでやっとチュートリアルと言いますか、スタートライン手前に並んだ感じです。

長い説明口調な文章でお目汚しをしたかと思います。一話一話、書き方を悩みながらとなり統一感の無い内容となってしまったように感じています。

これからは第二章となりますので、今後もどうか温かい目でご覧いただければ幸せです。

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