もう一人の異世界転移者……じゃなくて異世界転生者!?
「あ~よく寝た!」
ケインと飲んだ次の日の朝、リサは元気に目を覚ました。
顔を洗い、キッチンで軽食を作って食べ、歯を磨いてラジオ体操をし、軽く化粧をして身支度を整える。
これがりさのモーニングルーティンだ。習慣でラジオ体操は辞められなかった。
すべての準備が終わり、階段を下りる。そこにはすでにケインの姿があった。
「おはようございますケインさん。今日は早いんですね」
「ああ、ちょっと早く向かおうと思ってね」
ケインの自宅は店から5分のところにあるらしい。
以前りさにそう話していた。
「今日もお客さんたくさん来るといいんですけど」
「そうだなあ」
そう会話していたら、ドアがやかましい音を立てて開いた。
「すみません!ここって王宮御用達の恋文屋ですよね!?」
「はぁ、そうですけど。どのようなご用事で?」
りさが答える。客は男性で中肉中背、良くも悪くも普通の顔といったところだ。
「はい、国立学園のアナベル・ローウェル嬢に手紙を出していただきたい!」
「誰ですかそれ」
「いや、まて。アナベル・ローウェルってフランツの妹のことか?」
先日酒屋でケインが話していたフランツの妹のことのようだ。
「知りません! !でも、王宮御用達だからどこでもフリーパスで入れますよね!?」
王宮御用達の看板がつくと、その権威が認められ、基本どこでも出入り自由を許可されるのだ。
そのことを知ったのは、りさが王宮に初めて招待されたしばらく後のことだった。
「一目ぼれなんです!手紙を書いて、届けてください!」
「まぁ、仕事なんでやりますけど……ご指名はございますか?」
そう聞くと、特にないというので、仕事の量が少ないりさが担当することになった。
「では彼女の情報をおしえてください」
「はい、黒曜石のような艶やかな長い髪に、深い森を思わせる翠の瞳。小さい口にすらっとした鼻筋はヴェルニカ山脈のようで……」
ものすごい褒めようだ。思わずりさは苦笑する。そんな美人、私も早く会いたい。
「わかりました。ではこちらで書いてお届けしておきます。いつまでにお届けしますか?」
「今日!今日がいいです! !一日でも早く僕の気持ちを知ってほしい!」
「急な締め切りなので、特別料金を頂きますが構いませんか?」
大丈夫です、とこくこく頷く依頼者。
(思いが届くといいね)
とりさは願う。
客を見送り、さっそくアナベル宛の手紙を書く。どのように書こうか……。
とりあえず、さっきの客は外見をべた褒めしていたので容姿をたたえよう。
そして、依頼者のほとばしる恋心を、日本で人気だったラブソングの歌詞を引用して……。
手紙が出来上がったので、りさは早速国立ヴェルニカ学園へと赴くのであった。
***
まるで城のようだ、とりさは驚いた。
学園というから、日本の学校を想像していたが、そうではなかった。
森の中に青い屋根で白い城壁の城にしか見えないその施設の入り口に書いてある
「国立 ヴェルニカ学園」と書かれているのを二度見する。
あってるな、ここで。間違いじゃないな。
確認して、門の横にいる守衛さんに、王宮が手配した王宮御用達バッジを見せ無事に学園に入ることができた。
しかし、入ったはいいがどこにアナベル嬢がいるのだ?
守衛さんに職員室を聞こうかな
と思っていたりさだが、思いがけない人物と出会う。
そこにいたのはフランツだった。なぜ彼が学園にいるのだろう?
「何してるの、フランツ」
「リサ!?ああ、こんなところで会えるなんて!運命のめぐりあわせか!」
「偶然でしょ、ただの。で、何してるの」
嬉しそうなフランツに塩対応をかますりさ。
「あぁ、母校の生徒に王国騎士団で働く魅力を伝える授業をしていたのだ」
(OB訪問のようなものか)
そう納得したりさはハッと思い出す。
「ねぇ、アナベルってフランツの妹さんだよね?」
「なぜそれを?教えたはずはないが……」
「うん、ちょっとね。で、妹さんに用事があるんだけど、どこにいるか知らない?」
そう尋ねるとフランツは自信満々に答えた。
「あぁ、ちょうど昼休憩の時間だから食堂にいるはずだ、案内しよう」
案内してもらえるのはありがたい。
りさは提案に応じた。二人は広い校内を歩いて食堂を目指した。
***
「ああ、あそこにいるのがアナベルだ。せっかくだから俺が手紙を渡してきてやろうか?」
「お願いします」
そういってアナベルのもとへ向かうフランツ。りさからだと後ろ姿しか見えない。
様子をうかがっていると、どうやら手紙を読んでもらえたようだ。
と、思ったら何やらフランツとアナベルが話し込んでいる。どうしたんだろうとりさは不安になった。手紙に何か不備があったのではないか、と。
フランツがりさを指さすと、アナベルは驚くようなスピードでりさのもとへやってきた。
「ちょっと!あなた!」
ずずいと迫りくる美少女の顔に圧倒され、りさは「はい!」と答える。
「おねーさん、異世界転生……いや、その顔は異世界転移者?」
そう、耳元で囁かれた。
なぜ、知っているの?
そしてこのアナベル嬢は、何者……?
りさの頭は混乱した。
「アタシも異世界転生者なの」
仲間が……いた!?
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