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恋心は春風に吹かれてやってくる


王宮についた二人は王室の前の扉の前で別れた。


「帰りも送っていくから、終わったら鍛錬所に来てくれ」


と言われた。

フランツは鍛錬をほっぽり出して迎えに来てくれたらしい。


(いいのか、そんな団長で)


疑問を胸に抱きながら、りさは王室から向かって左の部屋に入っていった。


「失礼します、恋文屋のリサです」

「あぁリサ様。お待ちしていましたよ」


そう言って眼鏡をかけた賢そうな男が対応する。

彼の名前はヴィンセント。この王室を取りまとめる、若いながらに中々の切れ者の男だ。

スラリと薄い体は縦に長く、長い銀髪をひとまとめにし、鋭い目の色は深い青。


(いわゆるインテリイケメンというやつだな)


とヴィンセントの顔を見て頷く。


「リサ様?どうかされましたか?」

「ああいえなんでも。いつもの依頼書をください」


かしこまりました、と素早く書類を手渡す。結構な量だ。


「大丈夫ですか?重くはないですか?」

「ええ、大丈夫です」

「でも恋文屋までかなりの距離でしょう?」

「あぁ、フランツ団長が馬車で送ってくれるとのことでした」


そう言うと、ヴィンセントの眉が微かにピクリと動く。


「フランツ殿が、ですか」

「ええ、なんかまあ、はい」


ただよらぬ雰囲気を感じ取り、りさは部屋を後にした。


***


りさはアーディの公務室の前に立ち、こんこんとノックをして


「恋文屋のりさです」


と告げる。

アーディの執事が扉を開け、部屋に通される。

豪華な調度品に囲まれた部屋は、まさに王宮を住まいにする貴族らしい。


「リサ殿!ロザリーからの手紙かい?」

「ええ、そうですよ。ロザリーちゃん返事がないって泣きそうでした」

「あぁそれは……なんとも愛らしい……いや可哀想なことをしたな

本心が隠せないアーディに、りさは自分の青春時代を重ねる。

こんな甘酸っぱい青春時代はなかったが。

そういえば、と思い出すりさ。


「あのー、フランツ団長とヴィンセントさんって仲悪かったりします?」

「それはもう!学園時代からのゴーレムとホムンクルスの仲です!」


つまりそれは犬猿の仲ってやつかな?とりさは解釈した。


「武闘派のフランツ殿、知能派のヴィンセント殿は折り合いが悪く……また、お二人とも容姿端麗なので女子が派閥争いをすることもありまして……」

「あぁ、それは大変そうですね」


説明ありがとうございますと告げると、アーディは頬をバラ色に染めた。


「あの、手紙だが、今すぐここで読んでもよいか!?」

「もちろんです。私、もう帰りますね」


そう言ってりさはフランツのいる鍛錬場に向かった。


***


外の鍛錬場には多くの若い男たちがいた。

そんな中、一際目立つ男がいた。フランツだ。

背が大きいというのもあるが、彼は確かにオーラというか、雰囲気がある。

声をかけあぐねていると、フランツから声をかけてくれた。


「リサ!ちょうどよかった!今一通り鍛錬が終わったところだ!」

「それはそれは、お疲れ様です」


タタタと一心不乱にリサのもとに駆けるフランツは、実家で飼っていた犬を思い出させてなんだか泣ける。


「よい機会だ。皆に説明しよう。私の恋人、リサだ!」


そう言って団員たちに紹介するフランツ。りさは慌てて否定をする


「恋人じゃない!」


否定するもどこ吹く風。知らん顔で決めている。


団員達も


「おお、あの方が噂の」

「俺も手紙書いてほしいな」


などといった声が上がった。


「フランツ、私もう店に戻らないと仕事が」

「あぁ、分かった。ともに向かおう」


そう言って王宮の入り口に向かった。


***


後日、ロザリーからお礼の花束を受け取るりさ。

どうやらあの後すぐに手紙の返事がきたらしい。


「よかったね、ロザリーちゃん」

「はい!リサさんのおかげです!あの歌本当に素敵で私覚えちゃいました」


【風をだに恋ふるは羨し 風をだに来むとし待たば何か嘆かむ】


風にさえ胸ときめかして、もしやおいでかと待つというのなら、何を嘆く事がありましょう。

といったような気持ちをうたった歌だ。


「公務もひと段落して、また前のように頻繁に来てくださるそうです!」

「そう、よかったねロザリーちゃん」


それではありがとうございました、と夕陽さす町並みを歩いて帰るロザリー。

見送ったケインはため息を一つつく。


「俺もりさから手紙を貰いたいものだよ」


そう笑うケインにどきりとしたりさは思わずこう返す。


「いいですよ、ちょっと恥ずかしいですけど」


店内に戻り、藍色のペンでさらさらと書く


【加羅焚て 君を留むる 朧かな】


そう書いた紙をもじもじしながらケインに渡す。


「りさ、これは……?」

「今日は遅くまで一緒に吞みたいなってことです」

「ああ、よろこんで!いい酒屋があるんだ!」


二人はドアに鍵をかけ、やや淡い暗がりを二人並んで歩いて酒屋に向かう。

心地よい春風が二人の頬を撫でる。

影の二人は仲良くぴたりと重なっていた。


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