花ざかりの魔法使いへ
「リサ、悪いけどまたお遣い行ってきてくれる?」
朝、店にやってきた恋文屋の店主ケインはりさにお願い、と頭を下げる。
「私が一番下っ端なんだから行きますよ。どこに行けばいいですか?」
「あぁ、いつもの魔法ドコロだ」
「やった!また魔法が見れるチャンス!」
りさは小さくガッツポーズを作る。
「インクと羊皮紙が足りないから買ってきてくれ。頼んだよ」
「任せてください!」
そう言って意気揚々と店を出た。
***
それにしても……昨日は飲みすぎた。
ケインさんと夜遅くまで酒場まで飲んでたのはいいけど、ちょっと二日酔い気味で頭が痛い。
カロルに頼んで薬草調合してもらわないと、今日の仕事に支障が出るなと考えるりさ。
そんなことをズキズキする頭で考えていたら、あっという間に魔法ドコロにたどり着いた。
「おはようございまーす、恋文屋のりさでーす」
「ああ君か。そろそろ来る頃だと思ってた」
まだ少年のあどけなさが残る店主のカロルに出迎えられ、インクと羊皮紙が欲しいと頼む。
「わかった。ところでリサ、なんか疲れ気味じゃない?」
「分かる? ?お酒飲みすぎて頭痛いの」
「へぇ、そりゃ大変だね」
クククと笑うカロル。彼はのどで声を出すように笑う、ちょっと独特な笑い声だ。
「いいよ、サービスだ。その頭痛も治してあげる」
「本当?ありがとう!」
あいたたた、と頭を押さえるリサ。
「インクとかより、君のほうが優先だねこりゃ」
そう言ってりさを引き連れ、奥の魔法陣のある部屋まで連行される。
カロルは魔法陣の中央に椅子を置き、そこに座るようりさに頼む。
てっきり薬草を調合してくれるものだとばかり思っていたが、治癒魔法をかけてくれるらしい。
「じゃあいくよ。眩しいだろうから目を瞑って」
何かブツブツ唱え始めたと思えば、りさのおでこにひんやりとした感触があるのがわかる。
これはカロルの手だ。 末端冷え性なのだろうか、ちょっと心配になる冷たさだ。
最後に大きく呪文の一節を唱えたと思ったら、おでこから手が離れ
「終わったよ」
と声がかかる。
すっかり頭痛はなくなっていた。
「カロル! !ありがとう!体が楽になったよ!」
「うん、そういう魔法をかけたからね」
そう言ってちょっと照れた顔をするカロル。
あまり褒められ慣れてないらしく、居心地が悪そうだ。
「僕なんか全然だめだ。落ちこぼれだし。街で小さな魔法屋を開くので精いっぱいだ」
そう卑屈そうに笑う。
そんな彼を、なんとかして励ましたいとりさは思った。
「ねぇカロル、紙とペンとインクある?」
「あるけど……何に使うの?」
「私も何かお返ししたいと思って」
書く道具を渡され、りさは感謝の気持ちを綴った手紙を書く。
【カロルへ
いつもお世話になってます。
カロルの店がなかったら今頃うちの店は路頭に迷っています。
それほどカロルの魔法が強力だということです。
誰かと比べるよりも、過去の自分と比べたほうがきっと精神的にも楽だと思うな、なんて。
これからもよろしくね
りさ】
そう書き終え、カロルに渡す。
最初は訝しげに読んでいたカロルだが、読むにつれ段々と顔が赤くなってきた。
と思ったら、今度はカロルの周りからポポポと花びらが舞い散ったではないか。
「え!? 花びら!? 綺麗! !これもカロルの魔法?」
そう聞くと、顔を真っ赤にしてぼそぼそカロルがいう。
「…これは、特別恥ずかしい時にでるんだ。僕の体質。変わってるでしょ?」
そう言って花びらをまだ舞い散らすカロル。
手紙の内容がとっても恥ずかしかったようだ。
「そっか、そんなに喜んでくれるならよかった。花びらが落ち着いたらインクと羊皮紙もよろしくね」
「う、うん……すごい、こんなに舞うのは初めてだよ」
そう言って箒を持ってくるカロル。飛ぶのではなく花びらを片付けるためだ。
***
「ってことでちょっと遅くなっちゃいました、ごめんなさい」
「遅れるのはいいけど、その花びらどうしたの」
「えへへ、ちょっともらっちゃって。押し花にして手紙に添えるのはどうですか?」
「ああ、悪くないね。ロマンティックだ」
そう言って二人は仕事を再開し、カロルの花びらを押し花にする作業に明け暮れるのであった。
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。




