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【超能力先輩と並行世界】

葵「あれ? 小菊がいる?」

万「え、何。居ちゃ悪いの? 俺、ここの部長だよ?」

愛「なんかあったの?」


葵「いや、さっきまでちよのことさがしてただろ。ものすごく必死に」

愛「……? えっと、1時間ぐらい前に部室に来てから、万はずっとここにいたけど」

幽「トイレとかにも行ってないですしね」


万「なに、悪趣味なドッキリ?」

愛「いやいや、僕じゃないよ。何も知らないし聞いてない」

霊「……声の震えから察するに嘘じゃなさそうですね」

葵「探偵かよ」


万「ちなみに、俺はどうしてちよのこと探してたの?」

葵「いや、知らない。ただ居場所を聞かれて、演劇部に遊びに行ってるって答えた。あ、そういえば、なぜかちよのことを名字で呼んでいたような……?」


万「愛、今すぐサイコメーカーの居場所探して!! 幽見くんと梅白さんは椛と時雨くんに連絡」

葵「私も校長に聞いてくる!!」


愛「アイツ(サイコメーカー)、懲りずにまた何か企んでるのかな」

万「わかんない。けど、今回の狙いは超能力者(おれたち)じゃないみたいだね」






演劇部の部室にて……


楓「てっきり歌下手になってるかと思ったけど、全然そんなことなかったね」

ち「たまにカラオケ行ったりしてるんだよ~」


楓「あ、そろそろ時間だ。通しの練習始まっちゃうからまた今度ね」

ち「うん、こっちこそ、遊びに来ちゃってごめんね。部活頑張って~」


ち(さてと、部室行こうかな)


万「やっと、見つけた……」

ち「あ、先輩!! どうしたんですか?」


ギュッ!!

万「会いたかったよ。ずっと、ずっと!!」

ち「え、ちょっと先輩? ここ廊下ですよ。なんで急に抱き着いて……!?」


万「ごめんね。全部俺のせいだ。俺が守れなかったから」

ち「せ、先輩? 何の話ですか!?」

万「もう二度と離さない。次は必ず守ってあげるから。お願いだから俺と一緒に来てよ」


ち「先輩!! おちついてくださいよ。何かあったんですか?」

万「……ごめんね。事情を話してる時間は無いんだ。急がないと、こっちの世界の俺が気付いて邪魔をしてくるはずだから」


ち「こっちの世界? ど、どういう意味ですか」

万「いいから着いてきて。それで俺たち2人は幸せになれる。俺を信用できない?」

ち「いや、えっと、それは……」


万「小桜さん。一生に一度のお願いだから。君を守りたいだけなんだ」


ち「…………」


ち「ごめんなさい。今の先輩のことは信用できません。私の知ってる先輩は結構強引で、たまに気持ち悪いワガママを言う人ですけど、私に隠し事をしない人なんです」


万「そ、そんなことない!! 君の知ってる俺だって隠し事だって何個もあるよ。隠してることだらけだ。都合のいい言葉で君を丸め込んでるだけの男だ」

ち「私の好きな人をそんな風に言わないでください!!」


ち「先輩は、一度隠すと決めたことは必ず隠し通してくれるんです。中途半端なことを言って私を惑わせるような人じゃないんです。能力のことも、ずっと隠し続けてきましたし!!」


万「どうしてだよ。俺は君を守りたいだけなんだ!! 君がこのままじゃ危ないから、もう二度と失いたくないから、あんな気持を味わいたくないから、全部小桜さんのためなんだよ!!」


ち「じゃあ、どうして私の名前を呼んでくれないんですか?」

万「……呼んでるじゃないか。小桜さん、君を守りたいって、何度も言ってる」


ち「ちよ」

万「……?」

ち「いつも先輩は、暖かい声で優しい笑顔でぎこちない手つきで、私の名前を呼んで頭を撫でてくれるんです。こんな風に乱暴に肩を揺すって、泣きそうな顔で、強引な怒鳴り声で私の名前を呼ぶ人じゃない」


万「…………どうして? どうしてわかってくれないんだよ!! 何度やり直しても運命は変えられなかった。椛や愛、富士見と椿先輩、校長に頼っても!! 死生者と音鳴者、時空者の力を借りても、誰に何をしても君は救えなかった。だから俺は、超能力を失ってまで君に会いに来たのに!!」


万「どうして君は大人しく俺と一緒に来てくれないんだよ!!」


?「ちよの好みは引っ張ってくれる人だけど、強引な男は嫌われるだけだよ」


ち「……せ、先輩が2人?」


万?「邪魔をしに来たのか、こっちの世界の俺……」

万「邪魔なのはどっちだ。並行世界の俺」


別世界の万「はは、さすが超能力者様だ。そうやって簡単に見破っちまう」

万「どういう意味だ? まるで自分が超能力者じゃないみたいに」


別世界の万「その通りだよ。俺はもう超能力者じゃない。こっちの世界にも、頭のおかしい科学者が居るんだろう? そいつに頼んで、超能力と引き換えにこっちの世界に渡ってきた」

万「やはりサイコメーカーの仕業か」


ち「どうしてそんなことを!?」

別世界の万「言ったろ。君を守るためだって」


ち「……?」


別世界の万「俺の世界では、夏休みに小桜さんが誘拐されるという事件があった。その時俺は、あろうことか君を守り切れず、無残に殺されてしまった」

ち「……!!」

万「俺も、一歩間違えればそうなっていたってことか」


別世界の万「当然、君を救うために過去に戻った。軽く死にかけたが、君を救うためならば些末なことだ。でも結果は……」

万「ちよを救う時間軸にタイムリープできなかったわけか。能力の限界……か……?」

ち「それって能力を使えば体が冷えるってことと関係してますか?」


別世界の万「なんだ、知ってるのか。そうだ、強い超能力を使えば超能力者の体温は奪われる。完全に死ぬ前に体がストップをかけるから、君が生きている時間軸まで戻れなかった」


別世界の万「ありとあらゆる力を使って君を救うことを考えた。ただの一度も成功しなかった。君を生き返らせようとした。紛い物の人形が出来ただけだった」


別世界の万「だから、こっちの世界の小桜さんを連れて行くことを考えた。そのために、お前は邪魔なんだよ!!」


ち「拳銃!? どうしてそんなもの」

別世界の万「超能力がないからな。こんなくだらない手を頼らざるを得ないんだよ」

万「狂ってる……!!」


別世界の万「そうさ、狂いもする!! 俺は、小桜さんのあんな幸せそうな顔を見れなかった。優しい笑顔も、柔らかい唇も、サラサラした髪の毛も、すべすべの肌も、俺の名前を呼んでくれる、可愛い彼女は居なかったんだ。俺とお前は、同じ俺なのに!!」


別世界の万「俺とお前で何が違う!! 同じだ。何一つ変わらない。どうして、小桜さんはそっちを望む? 俺であることが不服か? どちらも、同じ俺だ。君だけを想い続ける、俺なんだよ」


ち「先輩、ごめんなさい。私は、アナタを選べません。私を救えなかったからとかじゃなくて、今隣に居てくれる先輩が好きなんです」

万「そういうことだから、悪いけど、ちよのことは渡せない。ちよがお前を望まないなら、同じ俺だとしても、そっちの世界には連れて行けない」


別世界の万「ふざけんな!! ふざけんなよ!! だったら俺は、何のために超能力を失った。何のためにこっちの世界に来た? どうして君は俺を選ばない!?」

ち「……それが理解できない人を、先輩とは認めたくないです。アナタと先輩は、たしかに同じ人間なのかもしれないですけど、全然、違いますよ」


別世界の万「だったら、殺してやる。こっちの世界の俺(おまえ)も同じ目に遭わせてやる!!」


バンッ!!


ち「…………ッ!!」

万「ちよ、危ない!!」


芽「フハハ、何とか間に合ったようだな」


万「さ、サイコメーカー!?」

ち「別世界の先輩が消えた……!?」


芽「まったく、別世界の私まで才能あふれるとは、いっそおぞましいよ。それでも、10分かそこらで時空間転移装置を作り上げられるのは、こちらの世界の私だけだろうがね」


ち「な、何をしたんですか? まさか、殺したんですか!?」

芽「超能力者殺しは諦めたといったろ? それに、友人と同じ顔をした人間を殺すのは寝覚めが悪いからな。元の世界に戻しただけだ」


万「この透明な膜みたいなのって?」

芽「それが時空間の歪みだ。うっかり触れるなよ、どこともいえぬ時空に転移するから」


ち「……先輩」

万「何も言わないで。きっと俺だって、ちよを失ったら同じことをするはずだから」







後日談――というか、もう一つの話


万「超能力と引き換えにちよを……か……。ハハ、なんでだろう。その気持ち、すごくわかるなぁ」


ちよ?「先輩、先輩ですよね!!」

万「ちよ? いや違う。君、誰……?」


ちよ?「私ですよ!! 先輩がサイコメーカー相手に守ってくれた、大切なか弱い女の子です」


万(姿形はちよだ。声も表情もなにもかも。でも、決定的に何かが違う)


ちよ?「先輩、先輩が死んじゃった時、すごく悲しかったんです。サイコメーカーに立ち向かった先輩はかっこよかったですけど、そのせいで死んじゃうなんて、ダメじゃないですか。私、ずっと寂しかったんです。だから必死にいい子になって、わがまま言わないようにして、苦手な数学の勉強も頑張って、先輩が超能力で生き返ったときにいっぱい褒めてもらうつもりだったんですよ? でも先輩、いつまでたっても迎えに来てくれなかったので、私から来ちゃいました。先輩、私に会いたかったですか?」


万「……そうか、サイコメーカーの一件で分岐した並行世界か」

ちよ?「アハ、難しい話はどうでもいいじゃないですか。先輩、好きです。だから、ずっと一緒に居ましょうよ」


万「君は時空のゆがみから来たんだね? でもそれはダメだ。お願いだから元の世界に帰ってほしい。並行世界とはいえ、同じちよに手荒なことはしたくない」

ちよ?「先輩は、いつも優しいですね。そのせいで、私はずっと寂しい思いをしていたのに」


万「本当にごめん。こんな謝罪じゃ何にもならないだろうけど、消えてほしい」


ちよ?「そんなこと言わないでくださいよ。ずっと一緒に居ましょう?」


万「……さよなら」


それだけ言うと、俺は華奢な少女の肩に触れて……

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