【サイコメーカーと観測者】
とあるバーにて
芽「……見つけたぞ。全視 檜」
檜「おやおや。サイコメーカーさんが何が御用ですか?」
芽「私にもこの人と同じものをお願いします」
檜「お酒、飲めるんですか?」
芽「知らん。アルコール消失化装置を仕込んでるから関係ない」
檜「相変わらず超能力者のような無茶苦茶理論ですね」
檜「それで、稀代の天才科学者様が普通の高校の校長にどんな用事でしょうかね?」
芽「ある超能力者を探している。お前なら居場所を知っているだろうと思ってな」
檜「……ある超能力者?」
芽「顔も名前もわからない。私が幼いころ1度だけテレビで見たはずだが、痕跡がない」
芽「私の全ての科学力をもってしても見つけられない超能力者」
檜「さて? そんな隠匿能力を持った知り合いは居ませんがね……?」
芽「戯言を……。超能力を与える超能力者が居るんだろう?」
檜「どうして、そんなことを?」
芽「ただでさえ珍しい超能力者、幼馴染として3人集まるなんて奇妙だ。それだけじゃない。お前の学校には5人も超能力者が居る。偶然と考えるには出来過ぎていないか?」
檜「集めたことは事実ですが、超能力を与えるなんてことはないですよ」
芽「全員が生まれつきだと自称しているが、胎児の段階で何かしらの影響を受けたのかもしれない。全員の母親と共通接触した超能力者が疑わしいだろう」
芽「過去を見通すお前なら、出来るだろう。探すのを協力してくれないか?」
檜「残念ですが、そんな能力者は居ませんよ。彼らの能力は本当に単なる偶然です」
芽「くだらない冗談は必要ない。私はその能力者と会わなくてはならないんだ!!」
檜「どうして……?」
芽「ただ一言。感謝を伝えたい。超能力者を殺すのはもう諦めている」
芽「今まで何人もの超能力者と接触したが、どいつもこいつも反吐が出るほどのお人好しで、楽しい奴らばかりだった。どうせ殺せないんだから、諦めたくもなる」
檜「殺せない、ねぇ……。なら、あなたは何がしたいのです?」
芽「自分でもわからない。きっかけは憧れで、嫉妬に変わり、憎悪が殺意へと育まれて、結局毒気を抜かれて何を目指すべきかが分からなくなった」
檜「……私もです。見ることは出来ても、それ以外の何もしてあげられない。私は単なる観測者に過ぎない。だからこそ、こうして酒におぼれているのかもしれません」
芽「ハハハ。目標を見失った者同士、協力できないか? 直接会えなくても言葉を伝えてくれるだけでもいい。あの時の超能力者に礼を言いたいんだ。お前なら見えているんだろう?」
檜「当然見ています。ですが、私はそんな超能力者を知りません。としか答えられないですね」
芽「なぜ!?」
檜「アナタを救った超能力者なんていない。私は、それ以外の答えを持っていません」
芽「本当に食えない男だ。全視 檜……。いや、元・神と呼ぶべきか」
檜「神なんて恐れ多い。ただの子供好きのおじいちゃんですよ」
檜「支払いは私がしますから、サイコメーカーくんはお好きに飲んでください。無粋な装置を外して、楽しんでみてはいかがでしょうか?」
芽「…………」
檜「ああ、それと。私は目標を見失うことはありませんよ。見ることは得意なので」




