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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第七幕「神殺しを為す者達」
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「act08 友情結成二十四時間未満」

「よし、二人とも来たな。今から修行内容の説明をするぞ」


 ガイナ、キールの二人は時間通りに指定された山まで来ていた。城から徒歩であれば二時間はかかるであろうところを輸送用の魔法使いさんに運んでもらうことで二十分と少しで到着することができた。魔法の便利さをつくづく思い知らされる。自分もいつかあれくらい速く飛べるようになるのだろうかと思うと胸の高鳴りが止まらない。やはり外の世界は面白いことだらけである。


「ソコ、楽しくなっているのもわかるが少しは緊張感を持てよ。そして逆にキミ、緊張しすぎだ。ある程度余裕というものを持て」


 指摘されてむっ、としたのはガイナ。おそらく妹のことを想ってやったことだったのだろうがそれでも昨日の衝撃は未だに忘れられない。


 ……そういえば昨日首が、確かに飛んだの見えたのに何でくっついてたんだろ?


 それも彼の魔法の一つなのだろうか? まあそれはいずれわかるだ。今は目の前のことに集中しよう。


「今から基礎を教えよう、という気は毛頭ない。そんな猶予もオレ達には存在せん。故にキミ達には実践、つまりはオレと戦っていく中で色々な技術を学び、掴んで欲しい」


 一ヶ月。長いように感じるが実際過ごしてしまえば一瞬で通り過ぎる程度の日数。そんな短時間で強くなるためには荒療治も辞さないというスタンスか。それとも自分達の実力を信じてくれているからこそなのかはわからないが、ガイナにとっては細かい理屈を覚えるよりは身体に叩き込んでしまった方が理解ができるので好都合。


 一方キールは普通の魔法学校を既に卒業しているので基礎は十分に身についているから今から基礎を学びなおすのは非効率。よって学校だけでは学べない実践を繰り返しながら経験を積んでいく。強引なように見えるがその実意外と合理的でもあるのだ。


「これから毎日どちらかが死ぬまで模擬戦を行う」

「どちらかが死ぬ、までですか?」

「勿論だ。大丈夫、オレはこうして」

『五分の一の力しか出さんから案ずるな』


 こうして、と言ったと同時にウリエルの隣にウリエルと瓜二つの何かが出現する。その身体は実体を持っているが時々不安定に揺らぎ、その声は二重に重なっているようにも聞こえる。これも彼の魔法なのか。


「蜃気楼。オレの五分の一ほどの力を分離させ実体を持たせた魔力分身と言ったところか」

『キミ達には毎日このオレと殺し合いを繰り広げてもらうってなわけだ。あーゆーおけい?』

「いや理解できないな。その分身はおそらく死ぬようなダメージを負っても本体には影響はないと見たけど俺達が死ぬこともあるはずだよな。ちょっと理不尽じゃあないか?」

「……昨日のガブリエラを斬った時のアレか」


 言ったのはキール。そうだ、確かガブリエラは首を落とされたが生きていた。それを使うから心配するなということか。理解できた。なるほど。


「ざっつらいっ! キミ達はこれから何回も死ぬだろうが少なくともこの一ヶ月間は死ぬことはない。……まあ死なないに越したことはないがな」

『さて、これ以上は特に説明することもない。今から五分後には開始するから準備だけでもして

「準備運動ならしてきたぜ俺様達」

「今からでも充分に動ける」


「……成程。ではオレは山の裏にいるから何かあったら呼んでくれ、と言ってもそこの蜃気楼もオレの一部。ソレを通じて様子は伝わってくるから特に来ることもないだろうが。とりあえず頑張れ。まずはそこのオレに勝てるくらいの実力を身に着けるんだ」

「「了解!」」


 それだけ言うと翼を広げてばっと山の裏まで飛んで行ってしまう。今はウリエルのことは気にするな。二人で本来の五分の一しか力を発揮できないウリエルと戦うのは少し心苦しいが、


「ばかっ、前を見ろ!」

「えっ?」


 振り向いた時には目と鼻の先に紅蓮に燃え盛る剣が迫っていた。普通の魔法使いならばここで一回死んでいたことだろうがガイナにはこの窮地を抜け出せる神秘(すべ)がある。剣をウリエルが振り切る前にそれを避けて拳をその頬に叩きつける。野生の動物相手に鍛えた筋力。残念ながらエドガーには通用しなかったがあそこまでゴリゴリの肉体を持つ奴が相手でなければ!


「ごぶっ!?」


 五メートルほど飛ばされた後即座に受け身を取ったウリエルは真っ直ぐに拳を見舞われた相手を観察する。その瞳は一瞬だけだが反転して灰色に近い色に染まっていた。


『(成程。我が妹を助けに入った時にも感じたが肉体強化や超加速なんて生易しい魔法ではないな。おそらくはカレの父親と一緒の時間操作魔法、《《その中でも初歩とされる》》時間創造か。これは思った以上の上玉だ)』

「相手はこっちにもいるんだぜ!」


 声のする方から速度の速い火の弾が飛んでくる。これも初歩の魔法だがキールの真骨頂はこんなものではない。火の弾に気を取られていたウリエルはその中から更に繰り出された電撃の槍を避ける余裕がなく右手で受け止めると、受け止めた先から今度は風が吹き荒れ身体の表面を切り裂いていく。しかしどれも敵を倒すための一撃ではなく、本命は別にあるだろう。その考えは的中したようで光り輝く球体を手に駆けるキール。おそらく光属性の中堅魔法である神秘昇天(ホーリーライトニング)、当たれば魔力の生成が少しの間だけだが困難になる非常に厄介な魔法だ。それを避けようと動こうとするが足が固定されたように動かない。


一寸先は闇(フットストップ)か。この程度すぐに破れるがそうしていてはキミの攻撃を受ける他なくなる』


 キールは魔法学校を卒業しているので魔法についての基礎は仕上がっている。そしてそんな彼の真骨頂は《《五大属性全てを並み程度には扱える》》という点にあった。


 ガブリエラでさえ三つだというのにそれを並み程度とはいえ全て扱えるというのはやはりそれだけで才能というべきものかもしれない。基礎が仕上がっているというのであればなおのことこのアドバンテージは大きくなる。応用力が通常の魔法使いと文字通り桁違いなのだ。


『やはり噂は本当であったか! そして!』


 後ろからは剣を構えるガイナ。たとえ何かの間違いでキールの攻撃を避けることができたとしても後ろから逃すことなく斬りつけられる。まさに絶対絶命!


『素晴らしい! これが友情結成二十四時間未満のコンビネーションかァ!』


 そう、並みの魔法使いならば絶対絶命といったところであったが生憎二割程度の力しかないとはいえ相手は熾天使いなのだ。


『そう簡単には取らせはせんよ、この首は!』


 轟ッ! とウリエルを中心に大爆発が起こる。身構えていなかった想定外の攻撃に二人が仰け反ると爆煙の中から炎の剣が首を取らんと顔を覗かせていた。


「っ、ぶねぇ!」


 どんっ、と突き飛ばされたガイナの元いた場所にはキールがいて命を刈り取る剣が首に斬りこまれた。


『まずはキミから退場のようだ。さようなら若き魔法使いよ』

「おあああああああああ


 ……。


 ぁぁああああああああ!?」


 叫んだ声は一瞬途絶え再び困惑の音と共に吐き出される。昨日のガブリエラと同じ現象がキールにも起きていた。


 見ていただけの昨日でも驚いていたが実際に体験してみると、確実に死を体感したのに次の瞬間には傷一つなく平然と呼吸をしているのがわかるのが信じられない。これ、心臓の弱い人だったら外傷云々はともかくショッキングすぎて死んでしまうのでは?


『初日は数分で終了、と。ここまで呆気ないと先が思いやられるぞ』

「ど、どういうカラクリで……」

『そんなことを気にしている場合かキミは。火属性使いに相対しているというのに爆発を伴う魔法を警戒しないのは殺してくださいと言っているものなのだと何故わからん? まあオレから今日言うことは以上だ。まず反省点と改善点はジブン達で考えておけよ』

「は、はい……!」

『さてと』


 ……来たか。


「来たか、我が妹よ」


 ガイナとキールが敗れた頃、山の裏にいるウリエル本体の元にガブリエラは来ていた。その表情からは昨日見えていた恐怖、懺悔、後悔、そういった負の感情は見られない。


「えぇ、来たわよお兄様」


 兄妹対決、そのリベンジマッチといこうじゃないか。


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