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神の箱庭 〜Magic World〜  作者: 杯東響時
第七幕「神殺しを為す者達」
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「act07 内面」

 俺様の名前はキール・ダイタロース。百年前の厄災獣との戦闘においてタナトスに傷を負わせた数少ない魔法使いの一人、アプソバ・ダイタロースの孫である。なんの因果かかつてじいちゃんが共に戦い、最後にはタナトスを封印までした英雄、閃光のマキナの息子であるガイナ・クォーノスとタナトスを倒すための修行が今日から始まるらしい。


 多分こっちが孫であっちが息子ってのはおかしくないか? と思った人もいることだろうが、そもそも百年前最前線で戦っていたような人間の容姿がほとんど変わっていないらしいという時点でおかしいので多分それを考えても無駄なんだろう。


 ともかく、だ。


 今日は大事な修行の一日目。昨日は早めに寝ていたおかげかいつもよりも快適な朝を迎えることができた。朝起きると同時に転送魔法で自分の部屋にほかほかのご飯が届くのは非常に嬉しい。食事に関しては人並みにしか興味はないがそれでも一目見て「健康に気を使っているメニューだな」とわかるくらいきちんと考えられていた。まあよく考えればここは王宮、つまりこの国の王様も同じ建物で寝泊まりしているのだから健康を考えるのは当たり前と言える。


 よく考えられた良い朝食をよく噛んで食べる。大体腹八分ないくらいの満腹感。この後激しく動くのだから完全に満腹では困るのでちょうど良いくらいだ。


 隣の部屋はガイナの部屋だが物音は聞こえない。さては寝過ごしているな? 今日から修行だというのに何をしているのか。


 仕方ないから起こしに行くか、と自室を出る。そういえばガブリエラはあれから大丈夫なのだろうか。かなり落ち込んでいるように見えたが今日は行けるのだろうか。そもそも戦う気持ちはまだあるのだろうか。一ヶ月しかないのだからタナトスと相対するつもりなら早くメンタルリセットしてしまわないと居ない方がマシまである。もしかして兄心としては戦ってほしくないのが本音だからああやって厳しく当たったのだろうか。


 疑問は沢山あるがガイナの部屋へとたどり着いたキールは、


「おーい、早く行こーぜー」


 扉を勢いよく開けた時目の前には下着姿のガブリエラ嬢がいたのだ。


「すみません間違えました!」


 ドンッ! と大きく音を立てて扉を閉める。しまった、間違えてガブリエラの部屋に入ってしまったようだった、と思ったのだが……。


「一番奥の部屋がガブリエラ嬢の部屋じゃなかったけか……? その次にガイナ、そして俺様だったような気がするんだが」


 ……やはりこの部屋はガイナの部屋で間違いはないみたいだ。


 もしかしたら快適に起きれたと思い込んでいるだけで寝惚けているのかもしれない。


 もう一度だけそうっと扉を開くと今度こそパンツ一丁で服に手をかけているガイナがそこにはいた。


「な、なんだぁぁ。そうだよそうだよな! ガブリエラが下着姿でガイナの部屋にいるわけないもんな!」

「は、ははっ……。当たり前だろ? 寝惚けてるのか?」

「そうかもしれない! よぉし、先にひとっ走りしてくるから後で下で待ってるぜー!」

「お、おーう!」


 やはり寝惚けているだけだったようだ。それにしてもガイナとガブリエラを間違えるなんて寝惚けているで済む話ではない。おそらく今日から熾天使いに修行をしてもらえるとなって相当緊張しているからなのもあるかもしれない。


 確かにアプソバ・ダイタロースの孫であるが、厄災獣戦を生き延びた彼が自身の家族だけは戦いから遠ざけたいと息子と共になんてことない村でなんてことない人生を送ることとなる。そしてそこで生まれたキールは当然普通の人間として生活をしていた。つまり祖父の世代が優秀であったとしても、仮にその血を受け継いでいたとしても普通に日々を過ごしたキール自身は非凡であると同時に平凡でもあるのだ。


 ありふれた平和な生活をしていたキールの元にウリエルは突如として現れた。それが半年前のことである。最初は熾天使いを生で見られた感動と自分には才能があると伝えられた困惑が混じっていて、タナトスと戦ってほしいと言われた時はあまりにも現実味がなくて村から逃げ出そうとさえした。


 だが戦わなければ自分の過ごした村だって無くなるかもしれない。それに、守るべき人だっていた。たとえ普通の人間だったとしても自分の守りたいもののために彼は立ち上がった。


 とどのつまりはだ。


 魔法学校で最低限の勉強はしていたものの戦闘経験に関しては誇張抜きで皆無である普通の人間なのだ。緊張もするはずである。


 だからといってガイナとガブリエラを見間違えるのは自分でもわかっている通りどうかと思うが。


「絶対にこの世界を……、ってそんな大袈裟なこと言えないけどさ。少なくとも俺様の手の届く範囲の世界だけは。アイツだけは守らないといけねぇな。」


 両の頬をバチンッ! と叩くと気合を入れなおすためにすぐ下にある庭で準備運動に勤しむのであった。


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