封印都市
「先代の竜大公を『最初の剣士』とその仲間が討ったという伝説は聞いたことがあるが、詳細は解っていない。ソル殿。その話が事実なら貴方は『最初の剣士』の関係者になるのだが」そもそも300年も生きているハズが無い。
奥に引っ込み、生き残った『はなみずき』を含む首脳陣とソル爺は真剣に話している。
竜討伐には人員を厳選しなければならない。竜の衝撃波に耐える結界はあまり大きく展開出来ないからだが。
「ワシとそなたの父上と、あと何人かいたな」
懐かしそうにつぶやくヒヒ爺だが、ホラにしては真に迫っている。
「『最初の剣士』はどんな人物だったのだ? どうやって竜と戦ったのだ?! 」
甘い薔薇茶の香りを揺らし、『はなみずき』が詰め寄ると「何か誤解しているな」とソル爺さんは返答。
「そなたの父上と我々で倒した。『最初の剣士』などは伝承だ。あえて言うならそなたの父上がそうだな」さらりと重大な事実を告げる爺に皆は固まった。
「父上が『最初の剣士』??! 」
顔を青ざめて、唇を震わせてつぶやく『はなみずき』と姉君にソル爺は首をゆっくり縦にふる。
「その通り」「しっしかしそれは300年も前の話だッ 」「ワシはもっと生きておるぞ? 」
繰り返すが、このジジイの姿は仮の姿と言ったではないかとぼやく爺。
いや、時々美男子に変身するのは間違いないが魔導による冗談だと皆思っている。
「爺さん。地味に俺より信用無いな」元コソ泥のオルデールが横から茶々を入れる。
「まぁ普段が普段じゃから」こほんと爺さんはわざとらしく咳をして皆の注目を集める。
「『夢の国』。すなわち現在の『滅びの町』は邪神封印用の都市型立体魔導陣であることは皆も存じていると思うが」
「更に北に古代魔導帝国の首都、『天空の都』の跡地があるじゃろ」
ああ。なんかめちゃデカいらしいな。
「都市魔導陣を竜大公の魔力を奪いとるために使用してあの都は滅んだのだ」マジか。
「つまり、『夢の国』の魔導陣を? 」「奴を縛るのに使う。そののち、剣にて始末をつける」
爺さんの無謀な作戦は即座に実行に移されることになる。夢を犠牲にして。
新しい夢の為に。