この国の明日の為に
「騎士団は置いて行く」
『はなみずき』の言葉に騎士団の皆は烈火のように怒りを表明した。
「姉上。あとは頼みます」悲壮な表情を浮かべる『はなみずき』に無言で頷く彼女の姉。
「無事で帰ってこい」「可能なら」
取り乱したりブチ切れたりしている姿しか見ていないからアレだが、まともになると納得の威厳の持ち主だな。『はなみずき』の姉さん。
あと美人だし。ちょっと年増なのが逆に良い。子持ちの未亡人だし。
何故騎士団を置いて行くかというと理由がある。
竜を倒すと不老不死の呪いを受けてしまうらしい。
非常にありがたい話のように見えるが、そうでもないらしく、ありとあらゆる不幸が身に襲うそうだ。
「加えて竜の持つ宝物は人間の手に余るものだからな」国が余裕で一つ二つ買える財らしい。
「竜殺しの英雄の物語は多いが、『その後』は語られた試しがないのはそういった事情だな」皮肉げにつぶやく『はなみずき』。富を求めて竜族に喧嘩をうる馬鹿者は後を絶たないらしいが、ほんものの竜に喧嘩を売る馬鹿はあまりいないそうだ。理由は言うまでもない。
「本来の『呪い』は人間の手に余る富と力という説もあるくらいだ」呪いそのものより竜の秘宝の後始末で揉めるらしい。
「『ザンマ』が届けば勝ち目もあるのですが」
アンジェラさんが言うには彼女の所有する魔剣『ザンマ』はあらゆる防御魔法や装甲を切り裂くというあり得ない能力を持っているらしい。
見た目は真っ白で、三角形に近いクソ長い刀身と大きな握りを持った斬馬刀である。
こんなデカい剣を軽々と振り回すアンジェラさんは一体どういう筋肉の持ち主なのか気になるところだが相変わらずの細腕である。
「俺の魔法だってそれなりに使えるぜ」
ささやかだが強化魔法や補助魔法を使えるというオルデール。
その真価は魔法による補助での戦いらしい。彼は剣も使える。彼の手にはワイズマン家家伝の短剣が握られている。
「私は資金や装備で貢献するよ」肩をすくめるワイズマン。命からがら逃げてきたハズが、資産のほうはこっちに移していたのが多く、ダメージが少ないとのこと。
「ワシの魔法もそれなりに」
いや、竜には流石に勝てないだろ。ソル爺さん。
そう指摘すると彼は曖昧に笑ってみせた。
「なに。昔取った杵柄じゃ。以前竜と戦ったことがある」嘘つけヒヒ爺。
「あれは300年程前だったかのう。今となっては懐かしいわい」「この嘘つきめ」
爺さんの方言に待てとつぶやく『はなみずき』。
「ソル殿。竜と戦ったことがあるといったな」「先代の竜大公とな」
その言葉を聞いて皆は大笑いした。
竜大公というのは竜の中でも神とされる実力者らしい。また平然ととんでもないホラを吹く。
「その時はどうやって戦ったのだ?! 」
ホラでもなんでもいい。彼女の表情はそう語っていた。




